BSAゴールドスター650(5MT)
クラシックと侮るなかれ 2026.06.02 試乗記 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。復活を遂げた英国の名門
地下駐車場に置かれたBSAゴールドスター650を見て最初に頭に浮かんだフレーズは、「古式ゆかしい(ちょっと大袈裟)」。もしwebCGのスタッフに「1950年代のバイクですよ」と紹介されたなら、浅学の自分はあっさり信じていたと思う。
ゴールドスター650は、2025年から日本での販売が始まった、BSAブランドのビッグシングルマシン。排気量652ccの水冷単気筒エンジン(45PS)を搭載し、5段のギアボックスを組み合わせる。価格は、スタンダードが127万6000円、凝った外装の「レガシーエディション」が135万3000円となる。今回の試乗車は前者だ。
BSAと聞くと、年配ライダーの方は憧れの記憶とともに懐かしく思い出されるかもしれない。BSAことBirmingham Small Arms Companyは、1861年に創業した老舗の英国ブランドで、当初は銃器メーカーとしてスタートした。最新のゴールドスターに、3丁のライフルを絡ませた叉銃(さじゅう)マークが用いられているのは、そのためだ。同社は、後に自転車、そしてモーターサイクルを手がけるようになり、1950年代に全盛期を迎える。しかし英メーカーのご多分に漏れず、次第に日本製バイクにおされ、1973年には生産を終了。2016年にインドのマヒンドラ・グループによって再興されるまで、しばし眠りについていた(参照)。
ウンチクはこのへんにして、さっそく新生ゴールドスターのシートにまたがると、シート高は780mmで足つき良好。ハンドルのグリップ位置は高く、体に近く、必然的にライダーは胸を張ったエラそうな……アップライトな乗車姿勢となる。古典的な二眼メーターは、速度、回転計とも針が2時の位置から時計回り、つまり下に向かって回る演出が施される。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ツインカム4バルブはダテじゃない
いざ走りだすと気になるのが、左右に張り出したクランクやクラッチカバーで、ペダル操作をするたびに(ライダーの)足まわりが触れたり擦れたりで、なんとなく落ち着かない。自然にタンクをホールドできる最近のスポーツバイクに慣れた身には、意識しないと太ももとタンクの間に隙間ができることにも違和感がある。ここらへんは、ライバルたる「ロイヤルエンフィールド・インターセプター650(邦名:INT650)」に試乗した際にも同じことを感じたが、だがしかし、真剣にクラシックな外観を追求したバイクにこうした難癖をつけるのは、まったく本末転倒というものである。反省。
ゴールドスターの走りは、いかにもビッグシングルらしい蹴り出しの強いものだが、なにより強烈に印象づけられるのが、その迫力ある鼓動感! マフラーによる過剰演出ではない、火元からの骨太なビートが、ライダーのココロまでを揺さぶる……てな感じにカッコつけたくなるわかりやすさで、旧車好きならずとも、思わず頰がゆるむ瞬間だ。実際、低回転域からトルクが太く、街なかではアイドリングちょいプラスの2000rpmから十分に力強く、213kgのボディーをグイグイと押し出していく。
ゆるんだ頰を引き締めて「まあ、このへんは想定内だよねぇ」と職業的なニヒルを気取るのもつかの間、驚かされたのが、低回転域からスロットルをグイッとした際のパワーユニットの滑らかさだ。回転計の針はメーターの真下、6時の位置の5000rpmをあっさり超え、7000rpmに飛び込もうとする。強めのビートを刻んでいた排気音は、回転の上昇とともに澄んだ響きに変わる。思いもよらぬ爽快なフィール。事前に「回してもすぐフンづまるだろうから、太いトルクと雰囲気を楽しもう」と勝手に決めつけていた己の不明を恥じるばかりだ。BSAが、オーストリアのBRPロータックス社と共同開発した単気筒にはツインバランサーが組み込まれ、その霊験あらたか。ツインカム4バルブのヘッドメカニズムもダテではない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
前のめりにライディングを楽しめる
意識をあらためて向き合う新世代のゴールドスターは、出足のよさを含め、街なかで侮りがたい速さを示す。試乗を始めた直後、「ブレーキがやや早利き」と頭のなかでメモを取っていたのだが、ちょっとスロットルを開けただけでこの速さなら、なるほど、納得だ。
試乗車は、クラシックなトレッドを持つフロント100/90R18、リア150/70R17の「ピレリ・ファントム スポーツコンプ」を履いていた。ハンドリングは「カミソリのようにシャープ」とまではいかないが、クラシックの名に逃げないスポーツ性がちゃんとあって、腕自慢が山道に持っていったなら、スムーズだけれどトルク変動の大きなシングルユニットの特性とあわせ、なかなかいい汗をかくんじゃないでしょうか。
「もしや空冷?」と勘違いさせるきれいなフィンを切ってまで、オリジナルを尊重したエンジン形状を採るいっぽう、現代的な性能と乗りやすさ、さらにはUSBのType-A/Cの充電ソケットまで備えた21世紀のBSAゴールドスター650。旧車にさっぱり詳しくない身でこんなことを言うのもおこがましいが、ライディングの味の濃さでは、この手のバイクのなかでも頭ひとつ抜きん出ていると思う。ゴールドスターが似合う年になったなら、「バイクも人も見かけは古いが、ヤング・アット・ハートですわ」てなことを言ってみたいもんです。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資/車両協力=ウイングフット)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2206×817×1093mm
ホイールベース:1425mm
シート高:782mm
重量:213kg
エンジン:652cc 水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ
最高出力:45HP(33.6kW)/6500rpm
最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)/4000rpm
トランスミッション:5段MT
燃費:--km/リッター
価格:127万6000円

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。 -
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る?
2026.10.14デイリーコラムこれまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。 -
第132回:軽EVのデザインを考える(前編) ―「スズキeスカイ」にみる“大衆車メーカー”スズキのスゴみ―
2026.10.14カーデザイン曼荼羅希代の凡作か? 実はすべてが計算のうちか? スズキ初の軽乗用電気自動車「eスカイ」の造形を、カーデザインの識者と考察。つかみどころのないイメージの背景にある、“大衆車メーカー”スズキの慧眼(けいがん)に思いをはせた。 -
先進のSUV「エクストレイル」という選択
2026.10.13SUVのフロントランナー 日産エクストレイルの魅力に迫る<AD>4代・四半世紀にわたって進化を重ね、SUVブームのなかでも開拓者であり続けてきた「日産エクストレイル」。その先進技術がもたらす“乗ればわかる喜び”とは? 最新世代の到達点について、詳しくリポートする。 -
自動運転はこの先10年でどこまで進化できる?
2026.10.13あの多田哲哉のクルマQ&A自動車業界において、再び話題になる機会が増えてきた「自動運転」。この先はどのように進化・普及するのか。既存の先進運転支援システムで十分ではないのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんの見解を聞いた。 -
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】
2026.10.13試乗記電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。












