日産プレサージュ250XL(4WD/4AT)【試乗記】
明確なアイデンティティが欲しい 2006.08.29 試乗記 日産プレサージュ250XL(4WD/4AT) ……324万1350円 2006年5月29日にマイナーチェンジされた「日産プレサージュ」。「SHIFT_ brilliance」をテーマに内外装が大きく変更された新型には、ミニバンユーザーを引きつける魅力があるのか。厳しいミニバン市場に
日本のミニバンは、スタイリッシュ系とユーティリティ系の2つに大きく分かれる。2リッター以上のスタイリッシュ系には、「トヨタ・エスティマ」と「ホンダ・オデッセイ」という二大巨頭がいる。
この2台、ミニバンとしては歴史があるし、片やタマゴ形、片やローシルエットと、独自のデザイン・アイデンティティを持っている点も共通している。それだけに、ライバルにとっては厳しい戦いになる。日産プレサージュは、それをいちばん痛感している1台かもしれない。
そのプレサージュが2006年5月にマイナーチェンジされたが、新型を見る限り、日産は自分たちが得意とするインテリアデザインで勝負をかけたように見える。メーカーいわく、ダイヤモンドのブリリアントカットを思わせる造形にしたというフロントマスクを持つエクステリアデザインは、たまたま近くに置かれていた旧型と見分けがつかないぐらい似ている。少なくとも、エスティマやオデッセイのように、ひと目見てそれをわかるような特徴には乏しいといわざるを得ない。
インテリアデザインで勝負
それに対して、インテリアは大きく変わった。とくにインパネは一新され、ひとことでいえばプリメーラ風からティアナ風になった。
現行プレサージュは、ティアナと同じFF-Lプラットフォームを使う。しかしマイナーチェンジ前のインパネは、センターにメーターを置き、同じセンターの手前はテーブル状にして、そこにエアコンやカーナビのスイッチをレイアウトするという、プリメーラが確立したスタイルを踏襲していた。
プリメーラのアヴァンギャルドなデザインは、日本では残念ながら受け入れられず、販売が終了してしまった(ヨーロッパではまだ売っている)。一方、ジャパニーズモダンをキーワードにデザインされたティアナは、一時期は大ヒットと呼べる状況だった。この差がプレサージュのマイナーチェンジに反映されたような感じがしてならない。
メーターをドライバー前に戻し、センターパネルは垂直面に近づけるとともに両脇にシルバーでアクセントをつけ、全幅にわたって木目調パネルを張った新型のインパネは、ティアナそっくりだったからだ。
前衛的、独創的なデザインが好きな僕は、旧型のインパネも使いやすかったので好きだったが、ミニバンを選ぶようなユーザーのほとんどはもっと保守的な嗜好の持ち主だろうから、この変更は納得できる。
シートはいままでと同じ。前席はおおむね満足のできる座り心地。2列目はクッションは短めで、形状は平板になるが、こちらも厚みがあって快適だ。前後スライドを最後方にすると、身長170センチの自分の場合、ひざの前には20センチもの空間が残る。ただしサードシートは小さく、頭が天井に触れるから、プラス3と考えたほうがいいだろう。
それを証明するように、折り畳みは簡単に行える。リアに回って左のリングを引くだけで、シートバックが倒れると同時にクッションが跳ね上がり、裏返しになってフロアに収まる。曲芸のようなシートアレンジである。
街なかでは穏やかだけど
今回のマイナーチェンジでは、メカニズムには大きく手を加えてはいない。試乗したのは250XL 4WDで、約1.8トンのボディに対して2.5リッター直列4気筒エンジンは力不足ではないものの、4段ATが不満に思える。発進や追い越しの瞬間に、排気量なりの力強さが感じられないのだ。逆にスピードに乗ってしまえば、高回転まで回しても不快な音をたてないので、4速のデメリットは感じなかった。マイナーチェンジで実施された騒音・振動の低減が効果を発揮しているのかもしれない。
乗り心地は、街なかを流している限りでは穏やかなのだが、速度を上げるとダイレクトなショックはないものの、足元がドタバタする様子が目立つようになる。ダンパーの仕事が追いついていない感じを受けた。ただし4WDということもあって、コーナーでのグリップレベルは高め。操舵力を軽くしたというパワーステアリングは、ことさら印象には残らなかったから、適度な重さだったということができる。
とはいえ走りについては、最初に書いた二大巨頭に比べると、いろいろな面で厳しさを感じてしまったことも事実である。たしかにインテリアは、個人的には3台でいちばん好ましいと思ったが、それでどれだけのユーザーを引きつけることができるか。根強い人気を誇るユーティリティ系、エルグランドのような明確なアイデンティティが欲しいところである。
(文=森口将之/写真=高橋信宏/2006年8月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】 2026.4.15 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。
-
モーガン・スーパースポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2026.4.14 職人の手になるスポーツカーづくりを今に伝える、英国の老舗モーガン。その最新モデルがこの「スーパースポーツ」だ。モダンながらひと目でモーガンとわかる造形に、最新のシャシーがかなえるハイレベルな走り。粋人の要望に応える英国製ロードスターを試す。
-
ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.13 1990年代のステーションワゴンブームでトップランナーであったボルボ。その伝統を受け継ぐモデルが「V60」だ。現行型の登場は2018年とベテランの域に達しようとしているが、アップデートされた最新プラグインハイブリッドモデルの印象やいかに。
-
アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF/7AT)【試乗記】 2026.4.11 アルファ・ロメオのミドルクラスSUV「トナーレ」がマイナーチェンジ。走りに装備、デザインと、多方面で進化を遂げた最新型に、箱根のワインディングロードで試乗した。“CセグメントSUV”という、最量販マーケットで戦う今どきのアルファの実力を報告する。
-
ホンダ・スーパーONE(FWD)【試乗記】 2026.4.10 ホンダの新たなコンパクト電気自動車「スーパーONE」がまもなく発売。ベースモデルのサイズを拡大しただけでなく、シャシーも徹底的に強化。遊ぶことに真剣に向き合った、実にホンダらしい一台といえるだろう。サーキットでの印象をリポートする。
-
NEW
第866回:買った後にもクルマが進化! 「スバル・レヴォーグ」に用意された2つのアップグレードサービスを試す
2026.4.17エディターから一言スバルのアップグレードサービスで「レヴォーグ」の走りが変わる? 足まわりを強化する「ダイナミックモーションパッケージ」と、静粛性を高める「コンフォートクワイエットパッケージ」の効能を、試乗を通して確かめた。 -
NEW
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】
2026.4.17試乗記アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。 -
NEW
毎日でもフェラーリに乗りたい! 「アマルフィ スパイダー」にみる新時代の“跳ね馬”オーナー像
2026.4.17デイリーコラム車庫にしまっておくなんてナンセンス! 新型車「アマルフィ スパイダー」にみる、新時代のフェラーリオーナーの要望とは? 過去のオーナーとは違う、新しい顧客層のセンスと、彼らの期待に応えるための取り組みを、フェラーリ本社&日本法人のキーマンが語る。 -
第957回:伝説のベルトーネが復活 新経営陣が目指すブランドの未来
2026.4.16マッキナ あらモーダ!イタリアを代表するカロッツェリア&デザイン開発会社だったベルトーネ。新たな資本のもとで再起を図る彼らが見据えたビジネスと、新生ベルトーネのクルマの特色とは? 温故知新で未来に臨む名門の取り組みを、イタリア在住の大矢アキオがリポートする。 -
BMW M235 xDriveグランクーペ(後編)
2026.4.16あの多田哲哉の自動車放談2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤーの“10ベストカー”にも選ばれた「BMW 2シリーズ グランクーペ」。そのステアリングを握った元トヨタの多田哲哉さんが、BMWのクルマづくりについて語る。 -
ランボルギーニが新型BEVの開発・導入を撤回 その理由と目的を探る
2026.4.16デイリーコラム第4のランボルギーニとして登場した2+2のフル電動コンセプトカー「ランザドール」。しかし純電気自動車としての販売計画は撤回され、市販モデルはエンジンを搭載してデビューするという。その判断に至った理由をヴィンケルマンCEOに聞いた。












