日産プレサージュV(4AT)【ブリーフテスト】
日産プレサージュV(4AT) 2003.09.25 試乗記 ……273.2万円 総合評価……★★★★ 両側スライドドアや流れるようなボディフォルムをもつ、2代目「日産プレサージュ」。ミドルサルーン「ティアナ」と同じ「FF-Lプラットフォーム」を使った新型ミニバンに、自動車ジャーナリストの森口将之が試乗した。
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“日産色”の表現
最近の日産車のなかでは、おとなしいデザインの新型「プレサージュ」。でもそれは、いろいろな人の要求を受け入れなければならない“ファミリーカーの宿命”だということを知った。その証拠に、インパネはセンターのメーターやコントロールスイッチで個性を演出しているし、リア用エアコンなどの細かい部分にまでデザインが行き届いている。カラーコーディネイトもシックで好ましい。
走り出せば、ペースを上げてもしっかりドライバーの意志どおりに走るところが、いかにも日産のクルマらしい。ミニバンだけに、ドライバビリティを演出する制約が多いなか、“日産色”がしっかり表現されていた。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「プレサージュ」の初代は、1998年にデビュー。2003年2代目に進化した。ボディは、リアドアがヒンジタイプからスライドタイプになったのが特徴である。エンジンは横置きで、2.5リッター直4と3.5リッターV6を用意。2.5リッターには4段ATが、3.5リッターにはCVTが組み合わされる。駆動方式は、2WD(前輪駆動)と4WDの2種類。
(グレード概要)
グレードは、2.5リッターがベーシックな「V」、豪華装備の「X」、エアロパーツなどでスポーティに飾った「ハイウェイスター」の3タイプ。3.5リッターは「X」のみとなる。すべてのグレードで2WDと4WDが選択可能だ。
試乗したのは、ベーシックグレード「V」の2WD仕様。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
センターメーターやコントロールスイッチは新鮮なだけでなく、見やすく操作しやすい。ただし、スイッチは「プリメーラ」のように扇型に配置したほうが、手の動きに合っている。シフトレバーは位置、動き方ともに絶妙。運転席と助手席の前が収納スペースになっているのは便利だ。ツートーンのカラーコーディネートは最近の日産らしく、色あいを抑えていて大人っぽい。
(前席)……★★★
フロアに対してシート高は低めで、ドライビングポジションはセダン的だ。シートのデザインはティアナに続いて“モダンリビング風”。座面は、腰まわりのサポート感はあるが、ひざに近い部分が浮いてしまうのが気になった。背もたれは対照的に、体にフィットしてくれる形状で、張りもある。
(2列目シート)……★★★
形状は平板で、サポートに不満を覚える場面もある。とはいえ、座り心地は悪くない。スペースはかなり広く、いちばん後ろにスライドすると、ひざの前に30cm近い空間が残った。左側は左右スライドも可能で、セパレートとベンチを選択できる。運転席のスイッチで、電動で左側シートの背もたれを前倒しができるのは、第三者がサードシートへ乗り降りする際に便利だろう。頭上のエアコン吹き出し口はスイッチがわかりやすく、デザインもスタイリッシュである。乗り降りのときは、ドアについた長いグリップがありがたかった。
(3列目シート)……★★
サイズが小さい。とくに背もたれは肩甲骨の下で終わってしまい、ヘッドレストを伸ばしても長さが足りなかった。座面の傾きがほとんどないことも含めて、大人用としては“非常用”と割り切ったほうがいい。スペース的には、セカンドシートをいちばん後ろにセットしてもひざの前に空間が残る。頭もルーフに触れないなど、かなり優秀なのだが……。
(荷室)……★★★★
定員乗車では、約55cmとあまり奥行きがない。床下に収納スペースがあるためか、フロアも高めだ。ただこの高さ、ミニバンでは珍しいガラスハッチを使うときに、荷物の出し入れのしやすさを助けてくれる。
シートの折り畳み方法は画期的だ。シート脇のリングを引っ張るだけで、座面が前に起き上がり、背もたれが倒れる。さらにもう一度引っ張ると、そのまま前方に納めることができる。セカンドシートが前にスライドしてあれば、座面が裏返しになってフラットな部分を長くしてくれる。これは便利だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2.5リッターの直列4気筒エンジンは、加速時には低音中心の力強いサウンドを響かせるが、クルージングに入ると静かだ。山道ではもうすこし力が欲しいと思うが、高速道路を含めた平坦路はじゅうぶん。排気量の大きな4気筒にもかかわらず、高回転までスムーズにまわることも好印象だった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
全体的に、同じ「FF-Lプラットフォーム」を使う「ティアナ」より熟成されている。前席の乗り心地はフラット。タイヤが動くゴトゴト音が気になることもあるが、直接的なショックはなく、揺れは最小限に抑えられる。ところが、条件的にいちばん恵まれているはずのセカンドシートは、ゴツゴツ感が目立ち、フラット感も思ったほどではない。意外にもサードシートのほうが快適に感じた。
ハンドリングは素直。ステアリングの感触は自然で、グラッと大きくロールすることはない。タイヤのグリップレベルも高めなので、安心してペースアップできた。
(写真=峰昌宏)
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【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2003年8月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:5500km
タイヤ:(前)215/65R16 98S(後)同じ(いずれもヨコハマ ASPEC A349)
オプション装備:キセノンヘッドランプ(6.0万円)/Gパッケージ<カーウィングス対応TV/NAVIシステム/ステアリングSW/バックビューモニター/サイドブラインドモニター/リモコンオートスライドドア(助手席側)スライドドアーオートクロージャー(両側)/インテリジェントキー/エンジンイモビライザー/ETC>(49.0万円)/フロアカーペット(5.2万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(3):山岳路(4)
テスト距離:268.3km
使用燃料:36.1リッター
参考燃費:7.4km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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