メルセデス・ベンツCLK63 AMG(FR/7AT)/ML63 AMG(4WD/7AT)【海外試乗記(後編)】
未来のAMGを磨く新型ユニット(後編) 2006.05.11 試乗記 メルセデス・ベンツCLK63 AMG(FR/7AT)/ML63 AMG(4WD/7AT) 「100%AMG製」の新型6.2リッターV8ユニット。500ps前後を発生する大物を搭載する「CLK63 AMG」と「ML63 AMG」は、パワートレインのフィールはもちろん、クルマ全体の印象からも、今後のAMGの姿を垣間見せてくれたという。まさに“巨大な高回転型”
(前回からの続き)というわけで、そんな新しい心臓を搭載した「CLK」と「ML」を、スペインまで飛んで食してきた。
すでに紹介のように6.2リッターと大きな排気量のV型8気筒ブロックに4バルブDOHCヘッドを組み合わせた基本的なエンジンデザインは、当然ながら両モデル用で共通。11.3と高めの圧縮比も両車用で同一だが、吸排気系の取り回し等が異なるためか、最高出力はCLK用が481ps、ML用510psと差が付けられている。ちなみに、発生回転数は同じ6800rpmだ。最大トルクは双方64.3kgm(630Nm)でこれが車名に含まれる数字の由来とも考えられるが、その発生回転数はCLK用が5000rpm、ML用が5200rpmとこちらにも微妙な差が与えられている。
いずれにしても、気筒当たり排気量が780ccに迫るというエンジンとしては「世界随一の高回転・高出力型」というAMGの謳い文句は、なるほどこうしたスペック上からもすでに納得がいくものだ。
果たしてそんな心臓は、類稀なるパワーと最新エンジンらしい洗練ぶりをタップリと味わわせてくれる、文字通りの“原動力”となっていた。
珠玉の仕上がり
まずは「CLK63 AMG」のクーペでスタート。と、それは走り出した瞬間に「CLKってこんなにピュアなスポーツカーだっけ?」と、クルマ全体の印象から感じさせてくれる走りのテイストの持ち主だった。0-100km/h加速タイムがわずかに4.6秒の超強力な絶対加速力もさることながら、迫力の重低音を強調したサウンドや、その排気量を忘れさせるほどに軽快でシャープなアクセルレスポンスなど、様々なフィーリング面に長けているのも見逃せないポイントだ。
「どうせトルコンATだから……」と高をくくっていたトランスミッションも、“M”モードを選択して縦長デザインで操作性に優れたパドルで操ると、BMWのSMGやフェラーリの“F1シフト”もかくやという素早さで、ダイレクト感溢れるシフト動作を行うことに感心した。しかも、際立って高い剛性感を放つボディは、強化された足まわりが拾う様々な振動をいずれも瞬時に減衰させてしまうので快適性も期待以上である。
すなわち、いざ蓋を開けてみれば飛び切りの動力性能と自在なハンドリングを備えながら、日常ユースにおける実用性も望外のレベルという、珠玉のような仕上がりぶりを味わわせてくれたのがこのモデルだったのだ。
一方、オーバー500psにまでチューニングされた心臓を積み込んだ「ML63 AMG」も、SUVの常識を覆すほどに運動性能に長けた1台ではあった。もっとも、CLKをドライブした後では絶対加速力にやや霞みがかかる印象はさけられないし、コーナリング時のロール感の大きさや路面との接地感の薄さから、スポーツカー的なピュアな走りの醍醐味は随分と後退するわけだが。
それにしても、新しいV8エンジン+7段トルコンATというコンビネーションが生み出す動力性能は、出力的にもフィーリング的にもひと際鮮烈で、新鮮な感動を味わわせてくれた。「すべてAMG製」を標榜する最新のパワーパックが今後のAMG車の魅力に磨きを掛けていくのは、もはや確実だ。
(文=河村康彦/写真=ダイムラー・クライスラー日本/2006年5月)
・メルセデス・ベンツCLK63 AMG(FR/7AT)/ML63 AMG(4WD/7AT)【海外試乗記(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018129.html

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
NEW
電気自動車の人工的な走行音はどうあるべきか?
2026.7.21あの多田哲哉のクルマQ&AEVの走行時に車内で聞こえてくる人工的な“音”は、本来、どうあるべきなのか? やはり、疑似エンジン音が最適なのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんの考えを聞いてみた。 -
NEW
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】
2026.7.21試乗記アストンマーティンの擁するFRスポーツ「ヴァンテージ」が、より高性能な「ヴァンテージS」に進化。よりたくましいエンジンを獲得し、卓越したコーナリング性能に磨きをかけつつ、“優しさ”も身につけた最新モデルの走りを報告する。 -
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。


