アルファ・ロメオ・アルファ159 2.2JTS(FF/6MT)【試乗記】
帰ってきた“おとなのアルファ” 2006.05.13 試乗記 アルファ・ロメオ・アルファ159 2.2JTS(FF/6MT) ……427.0万円 3つぶん進化したアルファのミドルサルーン「アルファ159」。新型は数字のみならず、見た目やフィール、そして走りも、かつて味わった“おとなのアルファ”が持つ息づかいが感じられるという。ジウジアーロは、知っている
20代のころ、「アルファ・ロメオ・ジュリア・クーペ」の最終進化型である「2000GTV」に乗っていたことがある。そのときのアルファは“年上のひと”のような存在だった。
ジウジアーロが描いたプロポーションはもちろん、踏めば熱いのに流せばやさしいエンジン、瞬間芸でなく奥の深さで魅了するハンドリングなど、ミラノの名門のおとなっぽいスポーツマインドに魅せられていた。
その後自分が歳を重ねていくのとは逆に、アルファは若くなっていった。きわめつけが、デザインも走りもエロカッコイイ系の「156」だ。156は世界的な人気者になったけれど、僕は受け入れることができなかった。だからこそ、159は最初に見たときから惹かれた。
そのボディに過剰な演出はない。むしろ落ち着きさえ感じる。でも伝統の盾に向けて、パネルのエッジを収束させたようなフロントマスクに、思わず視線が吸い寄せられてしまう。キャビンをグッと絞り込み、タイヤをその外側に張り出したフォルムは、獲物をねらう動物のようだ。ジウジアーロはアルファのなんたるかを熟知している、と思った。
挑発され、操る楽しさ
ボディは156と比べるとかなり大きくなったが、ニューモデルが大型化するのは昨今の常であり、最新のライバルとほぼ同じボリュームでもある。サイズアップのおかげで、キャビンは横方向とリアシートまわりに余裕が出て、このクラスのセダンなりの空間を手に入れた。インテリアのクオリティもアップしたけれど、目の前に大きなタコメーターとスピードメーターが置かれ、アルミのセンターパネルはドライバー側にチルトするなど、アルファ一流の“挑発”は忘れていない。
日本で売られる159は、「2.2JTS」と「3.2JTS V6 24V Q4」の2タイプ。といっても、3.2リッターモデルは遅れて導入されるため、2006年5月現在に乗ることができたのは直列4気筒の2.2で、左ハンドルだった。
159は、フィアットがGMと資本提携を結んでいるときに開発された。そのためエンジンは、「オペル・ベクトラ」などに積まれる2.2リッターをベースにアルファ設計のヘッドを組み合わせたユニットだ。こう書くとアルファらしさが薄れたのかと心配になるかもしれないが、実際はそうではない。
たしかに3000rpm以下ではあっけないほど静かだけれど、レスポンスやパンチはしっかり感じる。4000rpmあたりになると吹け上がりが勢いづき、5000rpmではサウンドが力強くなって、そのまま7000rpm近くから始まるレッドゾーンに飛び込んでいく。「回したくなる!」という点では伝統どおりなのだ。
ギアボックスは当面6段MTのみ。このサイズのセダンでMTというのは、むしろおしゃれだと思う。シフトタッチは軽く確実で、積極的にアップ&ダウンしたくなる。絶対的な加速がほどほどだからこそ、アタマを使って速さを引き出してやる作業が楽しい。
グローバル+アコースティック=?
159はプラットフォームもGMと共同開発だ。ボディ剛性が飛躍的にアップしたので、サスペンションがしっかりストロークするようになった。おかげで乗り心地は硬めながら、ショックは足元だけでほとんど吸収してくれる。
ステアリングはクイックだが、156のようにカクッとは切れない。むしろなめらかでしっとりした、油圧式ならではの操舵感がじっくり味わえる。路面の感触を遮断することもなく、たとえば、横断歩道のペイントの盛り上がりまで伝えてくれる。ここまで表現力ゆたかなステアリングはひさしぶりだ。
そのステアリングを切ると、ノーズがインを向き、車体がロールして、旋回を始めていく一連の動きが、これまた手に取るようにわかる。メカニカルチューニングにこだわったサスペンションは、ふところの深さが印象的だ。最終的にはフロントが限界を迎えるけれど、その状況も手のひらにしっかり伝わってくる。走り出す前は大きかったボディが、走るほどに気持ちと完全に一体になっていくのがわかる。
電子制御化が進むこの世界で、あえてアコースティックな手法で性能を煮詰めた159は、その結果として、ひととクルマが対話しながら上をめざすという、高純度のドライビングプレジャーを残してくれた。しかもGMとの共同開発による精度の高いコンポーネンツを使うことで、おとなっぽい雰囲気のなかでそれを味わえるようになったのだ。
その結果が、かつて乗っていた2000GTVに近づいたのは偶然かもしれない。けれど、自分が好きなアルファが戻ってきたのは、理屈抜きにうれしかった。
(文=森口将之/写真=峰昌宏/2006年5月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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