マツダ・ロードスターRS(6MT)【試乗記】
結局、惚れている 2005.10.21 試乗記 マツダ・ロードスターRS(6MT) ……261万5500円 日本のライトウェイトスポーツを代表する「マツダ・ロードスター」。初代ロードスターオーナーでもある島下泰久は、特別な目で新型を観察した。速すぎるんじゃないか
新しいロードスターへの気持ちは、個人的には実はいまだに揺れ動いている。
たとえばそのスタイリング。アイデンティティの継承だと考えると、これはこれでアリだとは思う一方で、正直やっぱり納得できない。特にその顔。NA型を意識して、でもNA型のようなエバーグリーンな魅力を持ち得ないのならば、いっそまったく違うデザインを考えてもよかったんじゃないかとすら思う。
走りだってそうだ。相変わらずショートストロークのギアを入れ、足応えの無いクラッチを適当に繋いだ途端に感じる、背中からグッと前に押し出される感覚。後輪駆動で、駆動系の剛性が高くて、しかもボディが軽くなければ味わえないこの感覚は、思わず「ああ、コレコレ!」と声に出てしまうほどにロードスターである。
けれど、本当にその走りは昔のままかといえば、実はやっぱり変わっているんじゃないかと、冷静になった最近感じている。簡単にいえば、新型はロードスターとしては、ちょっとばかり速すぎるんじゃないだろうか。
NVHの処理に優れる
そのシャシーは格段にガッチリとし、サスペンションは洗練され、タイヤは今や205サイズの17インチを履く。最初のなんて185/60R14だったのに。そこだけ見ても、速くなっていないわけがない。そうはいっても、依然テールハッピー気味なハンドリングはなまじ限界が上がっているだけに、粘ったあげくズルッと滑らせてしまうより、いっそ最初から軽く滑らせるつもりで走ったほうがリズムに乗りやすい。
……のだけれど、そんなこと書いて、ノービスドライバーに本当にそんなこと勧められるのかという思いも、もたげてくるのだ。
ならば、もっと限界が低ければいいのか? いや、一概にそう思うわけでもない。むしろ問題はNVH、要するにノイズ・バイブレーション・ハーシュネスの処理ではないだろうか。
新型の走りが洗練を感じさせるのは、このNVHの処理がかつてより断然優れているからでもある。それを犠牲にしてまでパフォーマンスに振るのは、市井のチューナーの仕事だという談話も聞いたから、やはりここにはそれなりに力が入れられたのだろう。けれど、もしかすると新型ロードスターは、ちょっとやり過ぎたかもしれない。
初代ロードスターの走りは、よくおもちゃっぽいなんていわれた。それは要するに、人間とクルマの路面のそれぞれの間のNVHを処理するためのフィルターが新型より全然少なくて、すべてが安っぽく、けれどすべてがダイレクトだったからだ。静かで振動少なく快適にしようとするほど、そのフィルターは厚くなる。けれど忘れちゃいけないのは、質の低い音だろうが振動だろうがクルマとの対話に大切な情報である部分も絶対に含んでいるということだ。初代ロードスターはおもちゃっぽく、つまりは沢山の振動や騒音が入ってきたおかげで、新型よりはるかにすべてが手に取るように感じられた気がするのである。
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生まれ変わりに感謝したい
そこで思ったのは、1.6リッターあたりのエンジンも設定してくれないだろうかということだ。それも内装などを簡略化して軽く、そしてNVH対策を甘くしたやつがほしい。まあどうせチープになるなら、内装は外してしまったほうが潔い。1.6リッターでパワーは130psくらいの6段MT。車重は今より30kgほど軽くしてタイヤは15インチなんてどうだろう。
ロードスターに乗っていると、ついついこんな風にずーっとロードスターのことばかり考えてしまう。その途中でコーナーがくれば軽いファイティングポーズで挑み、クリアしたあとには一喜一憂。前のクルマが詰まればヒール&トゥでシフトダウンして、前が開ければまた頭の中にはここだどうだあそこがどうだと浮かんでくる。結局こんな風に、あれこれ不満をいい、希望が募り、好きになり、好きになれないのは、要するに大きな意味で惚れているからだ、ロードスターに。
そんな対象となる今や数少ない1台が、この時代に新型に生まれ変わり、またその歴史を継承していってくれるということに、心から感謝したいと思うのである。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2005年10月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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