マツダ・ロードスターSレザーパッケージVセレクション(FR/6MT)/ロードスターS(FR/6MT)/ロードスターRF RS(FR/6MT)
もはや敵なし 2024.02.03 試乗記 爽快感が大幅アップ!? 「マツダ・ロードスター」に施された“過去最大の改良”は、実際の走りにどのような変化をもたらしたのか。ライバル不在の軽量オープンスポーツの進化を、ワインディングロードで実感した。ここにきて販売好調!
2015年の登場より、今年(2024年)で9年目を迎えるND型ロードスター。調べてみると細かな仕様変更は既に5回ほど加えられているが、その多くはグレード追加や装備強化などが主だった。銘柄全体の走りのクオリティーに影響するような中身の刷新は、今回が初めてといえるかもしれない。
過去の世代で最も長寿となったのはNC型で10年だが、今回加えられた改良にまつわる投資とその回収を鑑みるに、このND型が最も長いモデルライフとなるのは確実だろう。そしてこの投資が可能となったのは、ND型が日米欧の主力市場で販売が衰えないどころか、仕向け地によっては2023年に過去最高を記録するなど、イレギュラーな実績を上げているからだ。
今回、ロードスターがビッグマイナーチェンジを受ける主因となったのは、国連のサイバーセキュリティー対策指針を受けて自動車基準調和世界フォーラム(WP29)が策定した型式認証要件「UN-R155/UN-R156」に対応するためだ。2024年以降は継続生産車にも適用されるこの規則に対応するためには、OTA(Over The Air=無線通信によるソフトウエアのアップデート)に備えた通信機能の搭載も含め、電子アーキテクチャーを全面的に刷新する必要がある。国際商品であるロードスターにとって、これは無視できない課題だ。
本来ならこのタイミングでフルモデルチェンジという手段も考えられたのかもしれないが、パワートレインの選択も含めて、そこに踏み切るにはちょっと早いという判断がマツダの側にはあっただろう。いっぽう、ND型の鮮度が衰えていないことは前述の販売動向が示していた。かくしてND型は存続の道を歩めることになったわけだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ソフトとハードの両面で走りを磨く
マツダの開発陣の巧みなところは、法規対応で刷新する電子アーキテクチャーを、走りの品質にも生かせないかと考えたことだ。たとえば1.5リッターエンジンの制御マップの最適化。従来型では欧米のオクタン価である95ronに合わせた1スペックだったところに加えて、国内で流通するオクタン価100ronに対応したマップが搭載された。これにより最高出力は4PS向上、額面には表れないが中間トルクも厚みを増しているという。当然ながら、このECUは既販車にレトロフィットすることはできない。
また電子アーキテクチャーの刷新によってADAS系も大きな進化を遂げ、灯火類はすべてLED化されるなど、今日的な装備を備えるに至った。いっぽうで、重量は全グレードで10~20kg増加している。象徴的だった1t切りの「S」グレードも、電気まわりの改変やモニター&カメラの搭載に加え、サイドエアバッグの標準化などもあって、諸元に見る車重は1010kgとなった。ただしこれは四捨五入的な表記であって、現実には20kg以下の重量増ではあるという。「その差はお前が減量しろ」と言われれば拙的にはそのとおりと頭を垂れるしかないが、痩せ代のないマニア筋には果たしてどう映るだろうか。でも大台は超えたとはいえ、相変わらず奇跡的な軽さであることに違いはない。
ハードウエアの側で走りの質感を違えることになりそうなのは、S以外のグレードに搭載される「アシンメトリックLSD」だ。これはデフギアの差動を調整するカムの形状を非対称化することで、加速時の差動制限力は従来のままとするいっぽうで、減速側のそれを高めてヨー減衰モーメントを積極的に付与しようというものだ。旧型のスーパーLSD同様、GKNとの共同開発となる。効能としては、軽量なFR車の動的性質である減速姿勢が不安定になりやすいというクセを、駆動の側でカバーしようというのが狙いで、これに「キネマティックポスチャーコントロール」(KPC)が加わることで、減速→旋回とテール側の据わりがよくなったというのが開発陣の主張だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
乗れば確かに違いがわかる
まずは新旧の乗り比べを……と促され、旧型ロードスターが置かれた場所に新型で向かう。その走り始めから進化の程が伝わってきたのがステアリングフィールだ。決して悪くはなかった今までにも増して、精度感や清涼感が高まっている。中間ブッシュを排するなどの物理的改変だけでなく、制御プログラムを内製に移してより緻密化するなど、ここでも電子プラットフォームの刷新が関わる改変が、少なからず影響している。
短い時間ながら新旧を乗り比べてみると、手を加えたというポイントの変化ははっきりと感じられた。1.5リッターエンジンはパワーアップを感じとることはできなくとも、同じ坂道を同じ2000~4000rpmの中間域で登ってみれば、変速操作の有無に表れるほどトルクの厚みが変わっている。中~高回転域の吹け上がりをよりスムーズに感じるのは、変更されたインダクションサウンドエンハンサーの音に引っ張られているのかもしれないが、低~中回転域のザラみが減った点や、シフトアップ時の回転落ちが速くなっている点など、旧型オーナーであれば進化の跡は確実に感じられるだろう。
操舵感の精度向上と並んで、コーナリングそのものの精度も高まった。アクセルオンでの旋回速度の向上などはないにしても、アクセルオフでの無駄な動きが減り、より安心して気持ちよくワインディングロードに臨めるようになったという進化の中身を見れば、これは結果的に速さにもつながるのかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
GT感が増した「RF」のキャラクター
ホロ屋根のグレードに対して「RF」は、よりGT的な性格が強められたように思う。大げさに言えば操舵感もズンと重く、真っすぐ走ってもビタッと据わりがよく、旋回性もドシッと安定している。もちろん2リッターエンジンの力強さは1.5リッターとは段違いゆえ、フィーリングもマッシブにはなるだろうが、購入を検討されるなら、スタイリング以上にキャラクターの違いを乗り比べて確認したほうがいいだろう。
現状でも満足してるし、新しくする必要もないと思っていても、比べるとやっぱり見やすくてきれいだし……と、じわじわ高精細にならされていく。前型に乗っている方にとって、新しいロードスターの進化の度合いは、電気屋で目にするテレビやスマホの画面と同じような誘引感がある。いっぽうで、こんなによくなりすぎては愛せないではないか? というこじれた向きには、“なしなし”のSという回答がある。価格も重量もちょっぴり上がってしまったが、その比類のなさは相変わらずだ。いやはや盤石。もはやロードスターの天敵といえば(いろんな意味で)フルモデルチェンジしか思い浮かばない。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
マツダ・ロードスターSレザーパッケージVセレクション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース:2310mm
車重:1030kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:136PS(100kW)/7000rpm
最大トルク:152N・m(15.5kgf・m)/4500rpm
タイヤ:(前)195/50R16 84V/(後)195/50R16 84V(ヨコハマ・アドバンスポーツV105)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:355万3000円/テスト車=363万3025円
オプション装備:ボディーカラー<ソウルレッドクリスタルメタリック>(6万6000円) ※以下、販売店オプション インダクションサウンドエンハンサー(1万4025円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1967km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
マツダ・ロードスターS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース:2310mm
車重:1010kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:136PS(100kW)/7000rpm
最大トルク:152N・m(15.5kgf・m)/4500rpm
タイヤ:(前)195/50R16 84V/(後)195/50R16 84V(ヨコハマ・アドバンスポーツV105)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:289万8500円/テスト車=289万8500円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1994km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
マツダ・ロードスターRF RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915×1735×1245mm
ホイールベース:2310mm
車重:1110kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:184PS(135kW)/7000rpm
最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/4000rpm
タイヤ:(前)205/45R17 84W/(後)205/45R17 84W(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:15.8km/リッター(WLTCモード)
価格:430万8700円/テスト車=430万8700円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2030km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆「マツダ・ロードスター」に間もなく国内初の2リッターモデル登場
◆幅広いファンの期待に応えます! マツダが改良型「ロードスター」で求めた走り
◆マツダが「ロードスター」を大幅改良 装備を強化し爽快な走りも追求

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.23 マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。
-
フェラーリ12チリンドリ マヌアーレ(FR/8AT)【海外試乗記】 2026.10.21 MT車が長らく不在となっていたフェラーリ。そこに突如として現れファンを驚かせたのが、MT車と同じ変速動作で運転できる「12チリンドリ マヌアーレ」だった。果たして、その乗り味は? 名コースで試乗した西川 淳の第一報。
-
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】 2026.10.19 トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。
-
NEW
第879回:メルセデスがうたう「想像以上」は本当か? フル電動の新型「メルセデス・ベンツCLA」に1000km乗ってわかったこと
2026.10.27エディターから一言フルモデルチェンジした「メルセデス・ベンツCLA」の中でも本命とされるのが「CLA with EQテクノロジー」。新世代EVをアピールするメーカーのうたい文句は本当なのか、北海道で1000km乗って確かめた。 -
NEW
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】
2026.10.27試乗記ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。 -
NEW
「乗り物酔いしやすいクルマ」と「酔いにくいクルマ」の違いは?
2026.10.27あの多田哲哉のクルマQ&A乗り物酔いしやすい同乗者がいると、ドライバーは運転に気を使う。では、クルマの側にはその要因はないのだろうか? 「酔いやすいクルマ」を見極めるポイントを、車両開発者の多田哲哉さんに聞いた。 -
2026-2027 Winter webCGタイヤセレクション
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2026-2027のウインターシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけたスタッドレスタイヤか。各社自慢の最新モデルの実力を検証する。 -
新山千春 ダンロップのWINTER MAXX ICE ProとSYNCHRO WEATHERを試す
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>俳優/タレントとして活躍し、クルマ好きとしても知られる新山千春さんが、ダンロップの最新スタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」とオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を乗り比べ。キャラクターの異なる2つのタイヤは、それぞれどんな人におススメか? -
試して分かったブリヂストンのSUV向け冬用タイヤ「ブリザック アイスピーク」の実力
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>ブリヂストンからSUV向けとなるスタッドレスタイヤの新製品「ブリザック アイスピーク」が登場。氷上・雪上性能を高め、摩耗ライフも大幅に向上させたというその実力を、モータージャーナリストの斎藤 聡さんと自動車ライターの伊藤 梓さんがチェックした。





















































