MG XパワーSV-R(5MT)【海外試乗記】
新しいスポーツカーの解釈 2004.11.06 試乗記 MG XパワーSV-R(5MT) ライトウェイトスポーツカーで有名な英国の自動車メーカーMG。投資家グループの手で再建を進める同社からリリースされた“超弩級”のスーパースポーツ「Xパワー」に、自動車ジャーナリスト笹目二朗が乗った。再起をはかるMG
MGといえば、英国を代表するスポーツカーメーカーである。ここしばらくは企業としての経営面で元気がなかったが、ホンダやBMWから救済の手を差し伸べられた時期を経て、現在はシンプルに、MGローバー社として英国製自動車の復権と再起をはかっている。
その象徴的なクルマが、「MG XPower SV」と「XPower SV-R」だ。2002年のボローニャショーにプロトタイプを出品。03年のジュネーヴショーで正式にお披露目されたクルマだが、小さく、安く、手頃で……といったMGのイメージとはかけ離れ、しかも唐突な登場であったためか、それほど注目は集めなかった。誰も本気で生産化するとさえ思っていなかったろう。
そのクルマが、2004年6月から納車がはじまったのである。すでに22台がユーザーの手に渡り、バックオーダーを20台抱えるという。月に6台しかつくれない少量生産型スーパーカーとしては、なかなか好調な滑り出しといえる。なにしろ価格も超弩級で、「SV」は65750ポンド、「SV-R」は82959ポンドもする。邦貨に単純計算しても、SV-Rで約1800万円だ。
そのXPowerに、短時間ながら公道で試乗できた。
なにもかもレースカー的
Xパワーのなりたちは、鉄骨フレーム付のフルカーボンモノコックのボディに、313psを発するフォード製4.6リッターV8DOHC32バルブを搭載した、FRの2シータースポーツである。SV-Rは、最高出力400psを発する5リッターV8を積む。いずれもギアボックスは5MTで、SV-Rは4ATも選べる。これはつまり、MGスポーツ&レーシング社がつくるハンドメイドのクルマ。いわば公道を走れるレースカーのようなものだ。
発表された性能数値は、SVの0-60mph加速が5.3秒、最高速度は165mph(約257km/h)。SV-Rはそれぞれ4.9秒と175mph(約282km/h)である。
手作りのシャシーにフォード製V8を搭載したXPowerの乗り味が、“MG製のマスタング”かといえば、そう単純ではない。なにしろカーボン製のボディは単体で65kgしかないのだ。豪華装備で最終的には約1.5トンとなるものの、全長=4480mm、全幅=1900mm(ミラーまでで2075mm)、全高=1320mmのボディは身軽で慣性が小さい。17.2のギアレシオをもつラック&ピニオンステアリングの手応えもまずまず高剛性で、クイックな反応と身軽な身振りはまさにレーシングカー並みである。
細部のチューニング領域は、まだまだ詰めの甘さもあるにはある。とはいえ、手作り生産される“この手のクルマ”のこと。いわば昔のグループBカーのように設計されたこともあり、今後の進化や改善も、その気になれば順次アップデートさせることなど朝飯前だ。
MGの親しみやすさ
公道を走れるレーシングカーとはいっても、エンジンやトランスミッションは扱いやすく、実用上なんの不都合もない。ただ速いことが通常とは異なるだけだ。特にAT仕様はフールプルーフであるだけでなく、シフトのロスを考えると下手なマニュアルシフトより速い。もちろん左足ブレーキOKで、ドイツ車のATのように電子制御が働き、エンジンが休むこともない。
1.9mもある車幅は、たしかに狭い道でのすれ違いなどで気を使うものの、長いスパンのサスペンションアームと太いタイヤを考慮するならば当然の話で、これは乗り心地のよさや直進性に大きく貢献している。
英国のカントリーロードは、適度に曲がりくねったコーナーとアップダウンが多く、一般道でも最高速度は65mph(約105km/h)が公に認められている。日本的な感覚では60km/h制限の道を100km/hプラスで走るわけだから、いわばスポーツ走行しているようなものだ。踏切の段差を渡れないほど車高の低いクルマとも違い、ロードクリアランスも確保されているから、ある程度のラフロードも走破できる。それだけサスペンションがストロークしているというわけだ。
MG XPowerは、一見、レースカー風のスポーツカーではあるが、扱いにおいて日常性をクリアしている。その上で、見た目通りにとんでもなく速く走ることを可能にしたところが、気難しい高性能車と一線を画す。この親しみやすさが、MGという自動車メーカーの伝統に則った、新しいスポーツカーの解釈なのかもしれない。
(文=笹目二朗/写真=MGローバー日本/2004年11月)

笹目 二朗
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