三菱グランディス スポーツ-E ROAR Edtion(4AT)【試乗記】
迷えるグランディス 2004.12.22 試乗記 三菱グランディス スポーツ-E ROAR Edition(4AT) ……307万6500円 三菱のミニバン「グランディス」にスポーティグレードが追加された。専用の17インチアルミホイールを履く「スポーツE」をさらにドレスアップした特別仕様の「ROAR Edition」に、『webCG』本諏訪裕幸が乗った。「スポーティ」にクローズアップ
1983年に登場した「シャリオ」に祖を求めることができる「グランディス」は、2003年5月にデビュー。ダイムラー・クライスラーから派遣されたデザイナー、オリビエ・ブーレイ氏が手がけた、とされるスタイリッシュミニバンである。デビュー時のプレスリリースには「エモーショナルデザイン」「日本の美意識」「移ろいの美学」など、ビジュアルに関するコメントが多く、「スタイリッシュ」に力を入れたことを裏付ける。カラーとスタイルの組み合わせだけでも160種類という「カスタマーフリーチョイス」も用意し、デザインとパーソナライゼーションでライバルと差をつけようとした。発表会に参加したリポーターは、デザインについて熱く語るスタッフを何人も見かけたのを思い出す。
デビューからおよそ1年、2004年5月に追加設定されたスポーティグレード「スポーツ-E」に試乗した。グランディスには「スポーツ」と「エレガンス」と2つのグレードがあったのだが、走行性能に区別があるわけではなくデザインの違いだけだった。
追加された「スポーツ-E」は、グランディスのテーマ「スポーティ&エレガンス」から、スポーティ部分を際だたせたグレード。Eの文字はズバリ「EURO」からきている。サスペンションを欧州仕様と同一のものとし、アンチスピンデバイス「ASC」とトラクションコントロール「TCL」が設定されるなど、走行性能を高めたという。
試乗車は、さらにエアロパーツなどを装着した「ROAR Editon」。メッシュタイプのフロントグリル、大型テールゲートスポイラーを与えスポーティに演出したモデルだ。足もとには、専用の17インチアルミホイール、ローダウンサスペンション(15mmダウン)が奢られる。2WDのみで、価格は260万4000円。
「スポーティ」より「しっかり」
インテリアはこのグレード専用となるダーク系のカラーリング。質感に不満はあるが、インパネのデザインはエクステリアとマッチしていると思う。エンジンをかけ、走り出すと感じるのは車内の静粛性の高さ。街乗りレベルでは快適で、専用シートに座っての運転は、非常に居心地がいい。
気をよくして山道を走る。インフォメーションの少ないステアリングと、4500rpmぐらいからの少々耳障りなエンジン音がスポーティな気分を削ぐが、クルマの動きは非常に安定している。コーナーを抜けるときも、不安な動きを見せることは無かった。もともと走行性能が高いと感じていたグランディスだが、欧州仕様のサスペンションを得たことより、しっかり感が高まった。コーナーを早く抜けるというスポーティさではなく、少ない姿勢変化のために乗り心地が良くなったと言えよう。
車両の挙動を安定させる、ASCとTCLの性能を試すことはできなかったが、いくらスポーティグレードとはいえ、このシステムが介入するような場面はそうそうこないであろう。いざというときの、心のゆとりができるのはうれしいことだが。
名前の力
「おとうちゃん、がんばって!」の先代「シャリオグランディス」から「シャリオ」の名を取ったのも、テレビCMで根付いてしまった、「実用的」で「ファミリーユース」という味をクリアにしたかったのだ、ととらえていた。このクラスのミニバンにしてはめずらしく、明るい色をそろえた豊富なカラーラインナップ。スライドドアを使わず、凝ったプレスラインや流麗なフォルムは、デザイン優先のスタイリッシュミニバンが作りたかったことの現れだ。
ライバルと比べても、クルマとしての基本性能は劣っていない。走りに関していえばリードしている部分が多いと感じる。ただし、このクラスのミニバンユーザーが、その性能を第一と見るかは疑問が残る。タワーパーキングに入る「ホンダ・オデッセイ」、便利なスライドドアを持つ「日産プレサージュ」「トヨタ・エスティマ」などと対決するには、やはり「デザイン」を推していくべきなのではないだろうか。
グレード名というのは大切なモノだと思う。レストランで言えばメニューリストに相当するのではないだろうか。名前を見て中身を想像し、注文する。「スポーティ」ならそういう性能を期待するし、それに興味がない人は選ばない。
猫も杓子も「スポーティ」を謳うクルマ業界。初心貫徹。グランディスは迷わず、スタイリングをウリにがんばってほしい。とはいえ、「エレガント」って言うのも恥ずかしいけど。
(文=webCG 本諏訪/写真=中里慎一郎/2004年12月)

本諏訪 裕幸
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.12.6 マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。







