ホンダ・ストリーム アブソルート2.0(CVT)【ブリーフテスト】
ホンダ・ストリーム アブソルート2.0(CVT) 2004.01.10 試乗記 ……256.0万円 総合評価……★★★★ 「ホンダ・ストリーム」のカンフル剤として投入された「アブソルート」に、2リッターモデルが追加された。自動車ジャーナリスト、森口将之が、直噴エンジンを積む新型をインプレッション。
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一切の手抜きナシ
ボディサイズが「ホンダ・ストリーム」とまったく同じライバル車が、国内ナンバー1メーカーから登場して約1年になる。それが理由かどうかはわからないが、一時は驚異的に売れていたホンダの5ナンバー7シーターに、かつての勢いが感じられなくなった。
そこでホンダが送り込んだカンフル剤が「アブソルート」。旧型オデッセイに追加されると同時にヒットし、いまやミニバン・ユーザーの羨望の的になった感のあるスポーティブランドを、こちらにも投入した。しかも2リッター版には、新開発のガソリン直噴エンジンを搭載するという力の入れようだ。
最近のミニバンはスポーティグレードばやりで、ほとんどのモデルにこの種のグレードがラインナップされている。でもその多くは、エアロパーツを与え、足まわりをローダウンした程度。エンジンまで専用にしているのは、ストリームとオデッセイのアブソルートだけだ。シャシーも、ただサスペンションを硬めるだけでなく、ボディに補強を入れるなど、手抜きは一切ない。
ミニバン相手にここまでやってしまう。ホンダはやっぱりスポーティなクルマが好きなんだと痛感した。百戦錬磨のライバルも、ここまで走りにこだわったミニバンを作ることはないだろう。
しかもこのストリーム・アブソルート、乗り味に尖ったところがまったくない。加速もハンドリングもスポーティなのに、快適性はかなりのレベルにある。カタログデータを信じれば、燃費もいい。あらゆる性能がこれだけまとまっていて、運転する楽しさもちゃんと備え、価格は222.0万円。もし自分がフツーの(?)生活を送っていて、子供が2人ぐらいいたりしたら、買っちゃうかもしれないなぁ……と思った。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ストリームがデビューしたのは2000年10月。5ナンバーボディに3列シート7人乗りのキャビンを備えつつ、スタイリッシュなフォルムとスポーティな走りも備えるという、オデッセイの弟分的存在だった。シビックとともに登場した「グローバル・コンパクトプラットフォーム」を採用。低重心・低床パッケージングで、ミニバンの常識を超えた走りをウリにする。
エンジンは、1.7リッターと2リッターの直列4気筒VTECで、2リッターDOHCは連続可変バルブタイミング・コントロール機構を盛り込み、「i-VTEC」と名づけられた。駆動方式は2WD(前輪駆動)と4WDを用意。トランスミッションは全車ATで、2リッターの2WDには「Sマチック」と呼ばれるマニュアルモード付き5段が用意された。その後、ほぼ1年ごとにマイナーチェンジを実施している。
(グレード概要)
オデッセイで好評を博したスポーティグレード「アブソルート」が、ストリームに設定されたのは、2003年9月のマイナーチェンジでのこと。当初は1.7リッターのみで、エクステリアやインテリアをスポーティに装っただけでなく、専用高剛性ボディ、専用サスペンションを与えた、本格的なスポーティグレードである。12月には、ここで紹介する2リッターのアブソルートを追加。こちらのエンジンは専用で、直噴方式を採用した新開発の「i-VTEC I」を搭載。トランスミッションも他のストリームとは異なり、7段マニュアルモード付きのCVTが組み合わせられた。なおアブソルートの駆動方式は、どちらも2WDのみとなる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ストリームのスポーティ版には、上級「Sグレード」をベースにスポーティな装備を追加した「Sパッケージ」があった。アブソルートのインパネや装備は、そのSパッケージとほとんど同じ。針も目盛りも赤いメーター、ダーククロームのセンターパネルなどで、精悍な雰囲気を手に入れている。ストリームの最上級グレードでもあるので、標準装備品に不足はない。
(前席)……★★★★
中央部をブラックとグレーのチェック模様、サイドをブラックとしたファブリックはスポーティ。シートの形状は他のストリームと同じだが、座面はもものあたりのサポート感が信頼できるし、背もたれはサイドの張り出しで、上半身をカッチリとホールドしてくれる。座り心地も快適だった。セダンやワゴンに近いドライビングポジションは、それらのクルマから乗り換えたユーザーにとってありがたいだろう。
(2列目シート)……★★★★
前後スライドとリクライニングが可能。身長170cmの人間が前後に座った場合、スライドをいちばん後ろにセットすると、ひざの前には25cmもの空間が残り、頭上も10cm近い余裕がある。着座位置は前席よりも高めで、足を下におろした疲れにくい姿勢がとれる。座面は前席より少し短く、座り心地は固めだが、不快なほどではない。ミニバンとしてはサポート性能もある。ただ5:5分割なので、2人がけと考えたほうが無難だ。それとリアタイヤに近い位置に座るので、乗り心地やロードノイズは前席並みとはいかない。
(3列目シート)……★★★
2列目にウォークイン機構が備わるので、乗り降りは大変ではないが、シートそのものは補助席風。足元は、2列目のスライドを真ん中より前にしてもらわないと足が入らず、頭上は髪の毛が触れてしまう。座面や背もたれは平板で薄い。でもそのぶん、フラットに折り畳める。どっちつかずのシートより、こういう割り切ったつくりのほうが好感が持てる。
(荷室)……★★★
3列目を立てたときのスペースは必要最小限だが、それを畳めば、フロアはやや高いものの、同クラスのワゴンに近い奥行きと幅が手に入る。こうしたところを見ても、基本は4人乗りのクルマだということがわかる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
新開発のガソリン直噴エンジン「I-VTEC I」は、僕たちが“直噴”という言葉から受けるイメージを、いい意味でくつがえしてくれる。アクセルを踏んだ瞬間の反応の鈍さがなく、リニアにふけあがり、加速していくのだ。音もイイ。なかでも5000rpm以上のスポーティなサウンドは、聞きほれてしまうほどだ。
ストリームではこのグレードだけに採用されるCVTは、このメカニズムを作り慣れているホンダだけあって、発進停止時を含めてスムーズそのもの。レスポンスも満足できる。そして7段マニュアルモードが、スポーティな雰囲気をさらに高めてくれる。高回転をキープしながらの走りは、ミニバンであることを忘れてしまうほど爽快だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
アブソルートというグレード名から、硬めの乗り心地を想像したが、実際は硬めながら不快ではない。フレームの閉断面化、接合部の強化など、ボディにいろいろな補強が施されているおかげで、足がしなやかに動き、ショックをうまく吸収してくれる。ファミリーカーとして使っても、なんの問題もない。
ハンドリングはとにかく素直。かなりペースを上げても、ステアリングを切ったとおりに曲がる。4本の足がしっとりと路面に接地してくれるので、フロントはもちろん、リアのグリップも安定していて、急にグリップを失うことはない。ミニバンの域を超えたポテンシャルの持ち主だ。
(写真=市健治)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2003年12月11日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2456km
タイヤ:(前)205/50R16 87V/(後)同じ(いずれもヨコハマ ADVAN A-460)
オプション装備:Uパッケージ(2.0万円)/リアカメラ付・音声認識Honda・HDDナビゲーションシステム(32.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:358.9km
使用燃料:44.0リッター
参考燃費:8.2km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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