ホンダ・ストリーム 1.8X HDDナビパッケージ(FF/5AT)/2.0RST(FF/CVT)【試乗速報】
3列か? 2列か? 2009.07.13 試乗記 ホンダ・ストリーム 1.8X HDDナビパッケージ(FF/5AT)/2.0RST(FF/CVT)……211万4000円/277万1000円
「ホンダ・ストリーム」が新しくなった。軽量、スポーティを謳う、ミニバンの飛び道具「2列シート仕様」の出来ばえは?
フルチェンVSマイチェン
5ナンバーサイズの低ルーフミニバンとして、「トヨタ・ウィッシュ」と人気を二分するのが、この「ホンダ・ストリーム」だ。トヨタVSホンダのハイブリッド戦争が勃発する以前から、因縁のライバル関係にあるこの2台、2009年4月、ウィッシュが2代目にフルモデルチェンジすると、2カ月後にはストリームがマイナーチェンジし、両車のバトルは新たなステージを迎えた。
ストリームの“十八番”を奪わんとばかりに、スポーティさをアピールする新型ウィッシュに対して、ストリームがどう反撃するのか、なかなか興味深いが、なにしろストリームはマイナーチェンジだから、そう大胆には変われない。
そこで、持ち前の低ルーフフォルムで、FFモデルなら大抵の立体駐車場に入庫可能という強みはそのままに、ミニバンらしからぬ走行性能に熟成を加えたというのが作戦その1。たしかに、デビュー直後に試乗したときは、スポーティなハンドリングに魅力を感じながらも、「もう少し乗り心地が快適ならなぁ」と残念がった記憶が蘇る。そして、作戦その2は、2列シート仕様の「RST」グレードを新たにラインアップに加えたことだ。果たして、その出来映えは? まずは3列シート仕様の「X」から試してみることにしよう。
洗練された足まわり
さっそく運転席に座ると、相変わらず広々とした視界に気分が良くなる。さしてアイポイントは高くないが、Aピラーを支えるサブピラーがないのとダッシュボードそのものが低い位置にあるのが功を奏しているのだろう。マイナーチェンジなので、インストゥルメントパネルのデザインは基本的に変わらないが、センターコンソールボックスを大型化するなど、細かい部分で使い勝手の向上が図られているのも見逃せない。
ベーシックモデルのXは、1.8リッター専用グレード。最高出力140ps、最大トルク17.7kgmのSOHC16バルブエンジンは5段オートマチックと組み合わされるが、これがなかなか活発で、ナビ付きで1370kgに達するボディを軽快に走らせるのが印象的である。
カンジンの乗り心地は、マイナーチェンジ前に比べて格段に快適になった。205/65R15タイヤを履いた足は、低いスピードからマイルドな乗り心地を示し、それでいて落ち着きある動きを見せる。最初からこうなら、文句なかったのに……。
スポーティな味付けの「RSZ」を試すチャンスもあったが、205/55R17タイヤと専用チューンのサスペンションを採用するだけに、Xよりは硬めのしっかりとした乗り心地。しかし不快さとは無縁で、ファミリーカーとしても十分合格点がつけられる。
X、RSZともに、コーナーを飛ばす機会はなかったが、どちらもミニバンらしからぬスポーティさが感じられて、乗り心地とスポーティさのバランスも絶妙。なにしろ、ミニバンでありながら、軽快感に溢れてるのがいい。
ミニバン発のスポーツワゴン
さすがにこのスタイルだと、サードシートに余裕はないものの、大人を乗せてもそう窮屈ではないし、使わないときにはすっきり畳めて、広い荷室が手にできる。だから、ふだんは2列、たまに3列という使い方には、まさにぴったりのミニバンということが確認できた。
しかし、ストリームを買おうと考える人の中には、端からサードシートには興味がなく、手頃なサイズのステーションワゴンとして見ている人も少なくない。とくにホンダの場合は、2リッタークラスのステーションワゴンがこれしかないので、ストリームを買ったところでサードシートを1度も使わないというユーザーは珍しくないようだ。だったら、そのぶん広く、軽いクルマがほしい……という人のために、追加されたのが2列シート仕様のRSTというわけだ。
テールゲートを開けて中を覗くと、たしかにサードシートは取り外され、代わりに床下収納ボックスとラゲッジフックが付いたフロアが目に飛び込んできた。サードシートを倒したときと奥行きそのものに変わりはないが、奥にいくにしたがい、多少フロアが低くなるRSTのほうが荷室容量は多くなる。また、サードシートを取り除いたぶん、20kg強のダイエットにも成功したという。
荷室以外では、派手なリアスポイラーやリアディフューザー、専用デザインの17インチアルミホイールを装着するなどして、スポーティな印象を強めている。
さらに好バランス
RSTは、1.8と2リッターの2タイプが用意され、1.8リッターには5AT、そして、2リッターにはCVTが組み合わされる。いずれも駆動方式はFFである。今回試乗したのは2リッター版のRSTだ。
インテリアの雰囲気はRSZに似ているが、シートが合皮とメッシュ素材のコンビシートになり、ステッチ類やメーターのイルミネーションなどにレッドのアクセントを与えるなどして、他のグレードとは明らかに異なる雰囲気だ。
走り出すと、RSZにも増して軽快なことに、気をよくした。車両重量が20kg以上軽いから、というよりは、専用のアルミホイールによるところが大きいのかもしれない。4本で5kgほど軽いというだけあって、バネ下の動きが抑えられていて、そのぶん乗り心地にも良い影響を与えているのだろう。
高速に入ると、リアのエアロパーツが効いてくるのか、RSZよりも高い安定性を見せる。ただ、残念なのは静粛性で、RSZともども、試乗車にはヨコハマの低騒音タイヤ「DNA dB」が装着されていたにもかかわらず、ロードノイズが目立っていた。
2リッターエンジンは、1.8リッターよりもひとまわり余裕はあるものの、1.8リッターで十分という印象である。
それはともかく、スポーティなキャラクターにもかかわらず、RSZ以上にバランスのいいRST。買うなら3列シートと思っている私としては少し悔しいが、そんな人のために、RSZには、RSTのエアロパーツやアルミホイールがおごられる「Sパッケージ」が用意されていた。2列シート派、3列シート派のいずれも満足できるのが新しいストリームである。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。




































