スズキ・ワゴンR RR-DI(FF/4AT)【短評(後編)】
異端が異端でなくなるジレンマ(後編) 2004.01.02 試乗記 スズキ・ワゴンR RR-DI(FF/4AT) ……140.0万円 久々に軽のステアリングホイールを握った、別冊編集部の道田宣和。最近の軽のでき具合や、リアの居住性に瞠目する一方、走りに軽ならではの限界に……。「これでいいじゃないか!」の居住性
「軽よオマエもか!」と思わず声を発したのは、ヘビースモーカーの筆者が、あるはずのない灰皿を捜してダッシュボードをまさぐった挙げ句、結局は徒労に終わったときのこと。けれども、それは軽オーナーの皆様に対して失礼というもの。クルマを単なる道具と割り切って、普通車のオーナー以上に覚めた目で見る彼らだからこそ、時代感覚には人一倍鋭いはずなのだ。灰皿がオプションになる代わりに、カップホルダーが最初からダッシュボード下端の好位置にふたつ付き、しかもコラムシフトであるのを利用して、反対側に出るときには巧妙に畳まれるので、乗り降りに際して実に具合がいい。
それはともかく、クルマ全体も“今日的感覚”に仕上がっているのは間違いない。タイヤをことさらボディの四隅に追い込まなかったせいで、いまや2360mmのホイールベースは必ずしも軽一番というわけではないが、上屋の余裕が効いてか、室内は幅を含めて意外なほど狭苦しさが感じられない。
それどころか、左右独立してスライドやリクラインができるリアシートは、かつて圧倒的なレッグルームの広さで名を売ったアウディのミドルサルーンや、「フォルクスワーゲン・パサート」並みなのには驚いた。落ち着いた黒のファブリックシートも、どことなくドイツ車を想わせ、プラスチックの表情にも安っぽさがない。ドアは開閉音が重厚で、そのくせ軽さが災いしていくぶん締まりが悪いところは、ある種の演出か? と疑われたほどだ。乗り降りはこれ以上ないと思わせる楽チンさ。ドアを開けて、腰を下ろしたところにクッションがある。
限られたスペースを最大限に利用した小物入れの多さも、まさに日本的な知恵とワザそのものだ。トップモデルとあって、装備は上級車顔負け。オートエアコン、電動格納ドアミラー、MD/CDプレーヤー、キーレスエントリー+セキュリティアラームシステム等々がそれだ。さらに、比較的コストが高い直噴ターボを積むため、車両価格は140.0万円と高価である。エアコンやキーレスエントリーそのものは、中位以下の「FX」(2WD/5MT=88万円から)でも付いているのだから、安さを軽自動車の魅力と考えるなら、もうすこしグレードを落とした方がバリュー感は大きいだろう。
果たしてオーナーは……?
とまあ、久しぶりに乗った軽自動車の充実ぶりに、すっかり感心の体だった筆者。ではあるが、いざ走り始めてからの印象には、残念ながら依然として“軽”なるがゆえの制約や、限界を感じざるをえなかった。
エンジンはいい。ブレーキは、むしろ普通車の水準を以てしても秀逸なくらい。860kgの軽い車重に64psのパワー、というより10.5kgmのトルクは充分以上で、低めのギアリングも奏功する。いまや堂々と100km/hで走れるようになった、高速道路の巡航速度にも軽々と到達できる俊敏さだ。ブレーキはオーバーサーボ気味に感じられるほどよく効くうえに、あえてパニックストップを試みても一切の乱れがなく、ABSの不快な振動さえミニマムに抑えられている。昔の軽とは確実に一線を画する点だ。おそらく、タイヤ(165/55R14)がまともになったからである。
ではなにが気に入なるかと言えば、“足まわりのキャパシティー不足”に尽きる。コーナリングにイマイチ自信が持てないのもそのためだが、たとえ直進状態でも、パワー相応のペースを維持するのはいささかツライところ。そもそも、軽いが3.7回転もするステアリングはレシオは、もうすこし“速くて”いい。のみならず、ロック付近になると不自然に重くなったり、ジオメトリーの関係からか、コーナー出口で一瞬切れっぱなしになる悪癖も垣間見られた。
足まわりの適度にファームな硬さ自体は問題ないとしても、アーム類のロケーションやバネ/ダンパーの前後バランスが適切でないとみえ、コーナーで剛性感に欠けたり、リアアクスルを軸としたフロントの上下動が目立ったりする。行き届いた遮音もあってか、低速では望外とも言える静かさだが、Dレンジで4000rpm、3速では5500rpmに相当するメーター読みの100km/hは、やはりウルサイ。“四角い箱”は横風に弱く、そんなときのウィンドノイズも相当なものだ。
なんだか、非常に惜しい気がしてきた。ボディはいいのに足はイマイチ。となると、やはり同じ140.0万円を投じるなら、「トヨタ・ヴィッツ」や「日産・マーチ」「ホンダ・フィット」「三菱・コルト」「マツダ・デミオ」といった、世界的にも水準の高いモデルがひしめく小型普通車の存在が頭を過ぎったとしても、不思議はないだろう。
(文=道田宣和/写真=清水健太/2003年12月)
・スズキ・ワゴンR RR-DI(FF/4AT)【短評(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000014526.html

道田 宣和
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