トヨタ・アルファードハイブリッド“Gエディション”サイドリフトアップシート装着車(7人乗り/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アルファードハイブリッド“Gエディション”サイドリフトアップシート装着車(7人乗り/CVT) 2003.10.04 試乗記 ……505.0万円 総合評価……★★★★ トヨタいうところのミニバンの王者「アルファード」に、ハイブリッドシステム「THS-C」(TOYOTA Hybrid System-CVT)を搭載したハイブリッド版が加わった。豪華装備の“Gエディション”を、CG編集局長の阪和明がテストする。最適な選択肢の1つ
ハイブリッド技術において、世界中のメーカーから一歩抜きん出ているトヨタの手がけた新世代ハイブリッドミニバンが、「アルファードハイブリッド」である。より多くの人を快適かつ安楽に運びたいとなれば、ミニバンはどんどん肥大化するものだ。大きくなれば重量も増す。重くなれば燃費にも悪影響を及ぼすことは自明の理。というわけで、すこしでも経済的で燃費のいいミニバンを探しているあなたに、このアルファードハイブリッドは最適な選択肢の1つかもしれない。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2003年7月に追加された、トヨタのミニバン“フラッグシップ”「アルファード」のハイブリッドバージョン。「エスティマハイブリッド」で先行して採用された「THS-C」(TOYOTA Hybrid System-CVT)を搭載し、10・15モード燃費はガソリン車より10km/リッターほどよい、17.2km/リッターを実現した。電子制御ブレーキシステム「ECB」と、それに付随する車両安定システム「VSC」&「TRC」、発電機とバッテリーによる1500Wの大容量電源などが備わる。
ハイブリッド版の外装は、ボディ同色グリルやLEDリアコンビネーションランプを装着し、ガソリン車と差別化が図られた。インテリアは基本的に同じだが、ハイブリッドシステム作動状況などの車両情報を表示する「ワイドマルチAVステーション」をはじめとする、豪華装備が特徴である。
(グレード概要)
アルファード・ハイブリッドのグレードは、標準車と豪華装備の“Gエディション”の2種類。それぞれに、助手席側セカンドシートがせり出す「サイドリフトアップシート」(29.0万円高)装着車が用意される。
“Gエディション”は、電動開閉式の「デュアルパワースライドドア」、「バックドアイージークローザー」を標準装備。ほかに、テレマティクス「G-BOOK」対応DVDナビゲーションシステムや、70km/h以上の走行時にレーン逸脱を警告する「レーンモニタリングシステム」、見切りを補助するモニターカメラとソナー(音声ガイダンス付き)など、機能装備は事欠かない。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ナビ、オーディオ系のモニターやエアコンの操作パネル、さらにATセレクターと、センター部分に集中させたインストルメントパネルのデザインは、あまたある最近のミニバンと大差ない没個性的なもの。とはいえ、操作性や視認性はとやかくいうほど悪くない。インパネ全体の質感もまずまずで、トヨタ流の“うまさ”を感じるところだ。ドライバー正面のメーターナセル内の各メーターはLED光源で見やすい。
しかし、ハイブリッド車という性格を考えれば、もうすこし近未来的なデザインのほうが面白かったように思う。燃費計も備わるが、これをいちいち気にしていると精神的に辛い。あくまで“遊び”と割り切りたい。
上級“Gエディション”の装備は、とんでもないくらいの充実ぶりである。スタビリティ・コントロール、トラクション・コントロール、運転席/助手席のエアバッグ、フルオートエアコン、カーナビ等の“フツー”の装備はもちろんのこと、ディスチャージ・ヘッドライト、パワースライドドアも標準だ。
試乗車にはこのほか、ツインムーンルーフ、パワーバックドア、SRSサイドエアバッグ、SRSカーテンシールド・エアバッグ、電動カーテン(サイドとリア)、シアターサウンドシステムといった総額64万円のオプションが備わる。もう何でもアリ、だ。加えて、1500Wの容量を持つAC100V電源のアウトプットもあるので、家電製品を持ち込んで使うことも可能。好き嫌いは別にして「走る1DK」みたいなクルマである。
(前席)……★★★
ステップを踏んで運転席に“登れば”、さすがに背の高いミニバンのことはあり、着座位置が高いから視界はじつに良好だ。ファブリック地のシートの座り心地は良好だが、クッションの前後長はもうすこしあったほうが、個人的には好みだ。シートのサポートは大したことないのだが、山道をかっ飛ばさないかぎりは何の不満もない。見た目からも分かるとおり天井は高く、ヘッドクリアランスは充分以上である。
小物入れの場所と数も適切で、室内が小間物で煩雑になることもなさそうだが、ドア内側下端に設けられたポケットはドライバーからは下方に遠く、すくなくとも運転中に物の出し入れはしないほうが賢明。どうせドアポケットを設けるなら、ドアの中間あたりにほしかった。
(2列目シート)……★★★★
スペースと開放感だけで判断するなら、シートを2脚横に並べただけの2列目がこのクルマの特等席かもしれない。足元は広く、オットマンまで備わるので、ゆったりとした気分になること請け合いだ。スライディングルーフを装着しているのに、ヘッドルームは前席同様たっぷりある。惜しいのはシートのクッションが小ぶりなことだ。
助手席の後ろ、つまり左側には、オプションのサイドリフトアップ・シートが付いていた。いわゆる介助装置のひとつで、車外にまでせり出してくるシートに座れば、あとは電動で正規の位置に人間を運んでくれるありがたい仕掛けである。身体障害者や老人には歓迎されるに違いない。ただし、この特殊な動きをするシートのクッションは、構造上薄めである。
(3列目シート)……★★★
一般的にミニバンのサードシートは、子供用か非常用的な意味合いの強いものが多い。しかしアルファードのそれは、大人でもきちんと座れるだけの空間と快適さが確保されている。狭い場所に押し込められた印象はない。ボディ全長が4840mmもあれば当たり前だろうと言われればそれまでだが、大きなサイズのミニバンなら3列目シートも辛くないということである。
もっとも、脚を前に投げ出せるほどシートを後ろにスライドさせてしまうと、後頭部がテールゲートのガラスに接近してしまい、大型トラックが背後に迫ってきたときなど恐怖感を味わうことになる。適度な位置にシートを動かせばいいのだが、そうすると今度はシートベルトが頸に触れて気分が悪い。
(荷室)……★★★
大きなクルマだから、荷室も合格点である。ハイブリッド車にとって嵩張るバッテリーをどう納めるかがスペースユーティリティ上ポイントになるが、アルファードの場合、前席の下にニッケル水素バッテリーを置いたことで、ガソリンエンジン版モデルと変わらぬ広さの荷室を実現している。したがって、3列目のシートを畳めば、小旅行を楽にこなせるだけの荷物スペースが現れる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
なにしろ車重が2トンを超えるクルマである。フル装備、オプション多数の試乗車はじつに2120kg(!)にも達するのだ。搭載する2.4リッター4気筒エンジンのパワーは131psだから、これに前後のモーター(13kW+18kW)が力を貸すにしても、動力性能にはそれほど期待していなかったし、むしろ鈍重ではないかと疑っていた。
ところが、実際に走らせてみると、それはまったくの杞憂だった。エスティマハイブリッドよりずっと俊敏なのだ。エスティマよりローギアードなこともあるが、リアモーターが積極的に介在する設定に変化しているなどで、加速性能はけっこういい。もちろん街なかで動きの鈍さに舌打ちすることもなければ、山坂を上るような状況でも痛痒を感じることはなかった。エンジンそれにCVTからのうなり音が気にならないでもないが、それでもエスティマ・ハイブリッドより静かである。
肝心の燃費はどうだったのか。東京と伊豆の往復、約260kmを走って9.5km/リッター(満タン法)を記録した。乗員はオトナ3人。当然ながら燃費を心がけた運転ではなく、いつもガソリン車でそうしているように、加速すべきときは加速し、高速道路でも流れにのって走った。山道では、“サンデードライバー”よりペースを上げて走った結果がこの燃費である。車重2トン、排気量3リッタークラスのミニバンなら7〜8km/リッター程度のはずだから、大したもの。ハイブリッドの底時力を知ることとなった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
市街地での低速域、そして高速域でも乗り心地は常にソフトだ。低速で上屋の揺れが気になる場合もなくはないが、総じてフラットな乗り心地を示す。まあ、ミニバンの標準的なレベルといっていいだろう。最も乗り心地がいいのは前席、つづいて2列目、最後列のサードシートはやはり突き上げと細かな振動が辛い。
ハンドリングも、ミニバンとしては容認できる範囲に収まっている。ワインディングロードでもきちんと曲がるといえよう。けれど、運転していてけっしてワクワクするクルマではない。あたりまえだが、山道を飛ばすなら別のクルマを選ぶべきだ。
(写真=荒川正幸)
|
【テストデータ】
報告者:阪和明CG編集局長
テスト日:2003年9月2日〜3日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1792km
タイヤ:(前)205/65R16 95H/(後)同じ(いずれもグッドイヤー イーグルLE)
オプション装備:ツインムーンルーフ(10.5万円)/パワーパックドア(5.5万円)/レーダークルーズコントロール(8.0万円)/SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ(8.5万円)/電動カーテン=(7.5万円)/シアターサウンドシステム=(24.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:273.8km
使用燃料:28.8リッター
参考燃費:9.5km/リッター

阪 和明
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】
2025.12.6試乗記マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。






























