日産マーチ カップカー(5MT)【試乗記】
上達が早い? 2003.08.26 試乗記 日産マーチ カップカー(5MT) ……159.0万円(参考) 今年2003年から始まった「K12」こと3代目マーチによるワンメイクレース。第3戦までが終わった夏の日、筑波の「コース1000」で、カップカーのプレス向け試乗会が開かれた。『webCG』記者による報告。データロガー標準装備
「MARCH CUP」と書かれたドアを開けると、アルミのフロアが目にまぶしい。2003年8月22日、茨城県筑波サーキットで、マーチのワンメイク用レース車両のプレス向け試乗会が開催された。ようやく夏らしい日差しを取り戻した青空の下、3レイヤーのレーシングスーツがうらめしい。運転する前から、すでに汗だく。
バケットシートにはまりこみ、4点式シートベルトで縛られる。イグニッションキーを回してエンジンをかけ、バックビューミラーを直す。サイドミラーとサイドウィンドウには、電動調整機能が残っている。
目の前、メーターナセルのなかには四角いデジタルメーター、というか、データロガー用の「マルチファンクションディスプレイ」が備わる。エントリークラスのレース車両ながら、マーチ カップカーには、「車速」「エンジン回転数」「加速G」「旋回G」「ブレーキ圧力」「スロットル開度」などの走行データを収集する装置が標準で装備される。ドライバーのスキルアップと、セッティングの判断材料を得るために。本格的だ!
スロットルペダルを軽く踏んでブリッピングすると、1.2リッター直4が軽く応える。丁寧に組まれたレース用エンジンならではの、風に吹かれる髪の毛のようなレスポンスのよさ。デジタルメーターのなかで、エンジン回転数を表す右肩上がりのグラフが駆け上がる。
これまた軽いステアリングを切って、ハンドリングコースたる「コース1000」へ向かう。マーチ カップカー、見た目はカワイイが、レース用マフラーに変更されているため、排気音が勇ましい。
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マーチカップへの参加
マーチによるワンメイクレースは1984年にはじまった。同一車名を冠したシリーズとして、現存レースのなかでもっとも長いものだろう。市販されるマーチの代替わりにともなってレースカーのベース車両も移り変わり、今年2003年から3代目たる現行「K12」型に切り替わった。「東日本」と「西日本」の2シリーズが設定され、いずれも年5戦が開催される。さらに、東西を合わせた「チャンピオンカップ」も、最終戦として用意される。
ナンバー付き車両によるレースが話題になるなか、マーチカップは従来通り競技専用車を使用。もちろん、より本格的なレースを楽しめるのがウリで、さらにデーターロガー標準搭載で、名実ともに差別化を図る。本年度のマーチカップは、これまでレースごとに平均31台がグリッドに並んだというから、まずまず順調なスタートを切ったわけだ。
シリーズ開始に先立って「NISMO」から販売されたコンプリートカー(完成されたレースカー)は、159.0万円。これからクルマをつくろうというヒトは、新車もしくは中古で手に入れたマーチに、レース用パーツを組み込んでいくことになる(部品・工賃込みで約95万円)。
具体的には、競技用の「サスペンション」「マフラー」「強化クラッチ」「LSD」「バケットシート」「アルミホイール」、そして「消火器」「牽引フック」「サーキットブレーカー」などの安全装備である。自分でキットを購入して市販車から改造するほか、「MARCH Cup ASSOCIATION」に相談すれば、制作を依頼できるガレージを紹介してもらうことも可能だ。
また、参加者のスキルアップの一助に、マーチ カップカーを教習車にした「ニッサン・レーシングスクール」が、年6回もたれる。「サーキット初心者」と、レース経験者の「エクスパート」にわけられ、NISMO契約ドライバーほかプロフェッショナルドライバーによるレッスンを受けられる。参加費は、1万3650円から。
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微妙なところに
「乗りやすいクルマですね。ことレース車両というと、“(足まわりが)ガチガチ”“(エンジンが)ピーキー”“(すぐに)スピン”というイメージをもつヒトもいますが、マーチ カップカーはそんなことがない。初心者の方でも上達が早いんじゃないでしょうか」と話してくれたのは、この日、講師(?)として参加していた柳田真孝選手。現在、全日本GT選手権に、「日産フェアレディZ」(GT300)で出場している。
実際、絶対的な速度が高くならないハンドリングコースで、手軽なパワーのマーチを走らせるのは、抜群に楽しい。軽いボディはスロットルのオン、オフに素直に応じ、一方で、強力なフロントLSDの恩恵で、タイトコーナーでもアクセルを入れるとグイグイ曲がっていく。2、3周もするとヘルメットから汗がしたたったが、気にならない。バックスキンのステアリングホイールを握ってカーブの出口を睨み、ときにカップカーとステップを踏む。エクサイティング! ……でも、こういう運転だと、いいタイムは望めないんだよね。
「本当に攻め込んでいくと、アンダー(ステア)が強い傾向があります」と、柳田選手は、マーチ カップカーのハンドリングについて教えてくれた。「でも、限界を狙わないと速く走れない。その微妙なところに」オモシロサがあるという。いうまでもなく、脳天気にダンスを踊っているだけじゃあ、しょうがない。
試乗終了後、自分の“走り”のデータログが渡された。
「あのときの第1コーナーと、ヘアピンの入りかた、それから○週目の最終コーナーを合わせれば、ずっといいタイムになったはず……」なんて思っちゃうところが、素人の浅はかさ。でも、ついつい欲が出るのが、また、モータースポーツの醍醐味でもあります。
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏/2003年8月)
「マーチカップアソシエーション」:
Tel.03-3767-1553
eメール:marchcup@nismo.co.jp

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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