トヨタ・ウィッシュZ(CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ウィッシュZ(CVT) 2003.06.18 試乗記 ……268.7万円 総合評価……★★★ 一時は“日本で一番売れるクルマ”になったトヨタのミニバン「ウィッシュ」。1.8リッターモデルに続き、本命(?)2リッターモデルが追加された。CVTを組み合わせ、特別な足まわりをもつ“スポーティ”ウィッシュはいかに? 『webCG』記者が乗った。敵はわれにあり
わが国のいかなるカテゴリーにおいても劣勢を許さない大トヨタ。「ウィッシュ」1.8リッターモデルで“スポーティなルックスの5ナンバー3列シートミニバン”のマーケット、つまりは「ストリーム」の市場を奪い、2リッターモデルの追加でダメ押しをする。
1.8リッターより遅れること3ヶ月。“本命モデル”たる2リッター車が登場したが、すでに先行モデルがライバルを圧倒。残るは掃討戦?
市場投入が遅れたのは、とりあえず“小物”から敵に当てる“大物”の余裕から……ではなく、「2リッター+CVT」ほか、足まわりのセッティングをより詰めたかったから。同じ2リッターモデルでも、ベーシックな「G」と、スポーティな「Z」とでは、外観のみならず、「エンジン+CVT」「サスペンション」といった中身まで異なる。コストに厳しいトヨタとしては、異例なことに。ミニバンにおけるスポーティを“本格的”もしくは“実験的”に追求。すでに「敵はわれにあり」か。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ウィッシュは2003年1月20日にデビュー。中型セダン「プレミオ/アリオン」のプラットフォームに“スタイリッシュ”を謳うモノフォルムのボディを被せた、3列シート7人乗りのピープルムーバーである。2003年4月25日に2リッターエンジン搭載車が追加された。
グレードは、132psと17.3kgm(4WDは125psと16.4kgm)を発する、1.8リッター直4DOHC(1ZZ-FE)を積む「1.8X」(2WD/4WD)。これに、廉価版「Eパッケージ」(FFのみ)と、豪華版「Sパッケージ」(FF/4WD)が用意される。後に追加された2.0リッターモデルには、直4DOHC直噴(1AZ-FSE)が積まれ、155psと19.6kgmを発生。ベーシック装備の「G」(FF/7人乗り)、スポーティな「Z」(FF/6人乗り)に分けられる。
(グレード概要)
スポーティグレードの「Z」は、2列目がキャプテンシートの6人乗りとなる。前後オーバーフェンダー、スポーツマフラー、大径マフラーカッターや、エアロパーツなどが装着される。トランスミッションは「6速スポーツシーケンシャルシフトマチック」機能付きのCVT。車両安定性制御システム「VSC(ビークルスタビリティコントロール)」や「TRC(トラクションコントロールシステム)」を標準で装備。タイヤは、他モデルより大径な「215/50R17」を履く。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
上級グレードとして、カーボン調パネルが奢られたインストゥルメントパネル。高い位置に置かれたディスプレイ、わかりやすく大きなボタン類、豊富な小物入れと、機能面に不備はない。“先進”および“趣味性”は薄いが、最大公約数的多数の幸せ(?)に配慮された結果であろう。
ウィッシュのスポーティグレード「Z」の証、シーケンシャルシフトは、ステアリングホイールの近くで垂直に上下させるため、実際の操作にあたっては窮屈な感あり。「スポーツ走行時の電光石火の変速」のためでなく、「たとえば上り坂でギアを落としたいときに使う」ことを考えて採用された、というのが開発陣の主張だ。
なお、センターコンソール下部に設置された、通常の電化製品で使えるコンセント(アクセサリーコネクター:オプション)は便利。キャンプ場での発電機がわりにクルマのエンジンを回す、といったアウトドアでの使用ほか、走行中にパソコンのバッテリーをチャージするといった使い方も可。バッテリー残量がわかると、停車時にも心配しないで使えていいのだが……。
(前席)……★★★
運転席にはレバー式のハイトコントロールあり。立体的な裁断、固めのクッションで、座り心地はまずまず。左右両席とも肘かけを備える。
さて、クルマの本質とは関係ないことだが、ウィッシュ2リッターモデルには、「スマートドアロックシステム」が標準で装備される。スマートキーをもっているだけで、運転席側ドアハンドル周囲70cm付近なら、ドアハンドルのロックボタンを押すだけで施錠でき、一方、解錠はバータイプのドアハンドルを引くだけ、というもの。雨の日など、買い物袋をもって車内に駆け込むときにありがたい。でも、車外に出るとき、せっかくボタンを押して施錠しても、つい習慣でドアハンドルを引いてロックを確認してしまう。と、実は解錠されているのに、本人は「鍵がかかっていることを確認」したつもりでクルマを離れちゃう……、なんてことが起こりがち。ボタンを押しただけでクルマを離れればいいのだけれど、世のユーザーがみな、すっきりスマートなわけでなし。困ったことに、同様の事象は、キーホルダーのリモコンで鍵をかけた場合にも、起こる。
(2列目)……★★★
「Z」のセカンドシートのみは、スポーツ走行時の横Gに配慮してセパレートタイプとなる……というのは冗談だが、前席とほぼ同様のシートが得られるのは、ちょっと贅沢な気分。個人的には、室内高を活かして、もう少し座面を高くした方が「姿勢がよくなっていい」と感じた。また、無理を承知で注文すると、ウォークスルーを諦めて2列目シートの左右間隔を詰め、(サードシートは立てたまま)リアのホイールハウスに干渉されることなくスライド量を増やす、といったトライをすると、“特等席”度が増すと思います。
(3列目)……★★
バックレストとシートクッションが連動して、前に畳むとキレイに荷室フロアを延長できるサードシート。人間が座るシートとしても、実用ギリギリのレベルを確保。ちゃんと締められる3点式シートベルト、しっかりしたヘッドレストが用意されるのは立派。座面の低さ、膝前空間は、乗員に我慢を強いるものだが、ヘッドクリアランスはほどほどある。少年(少女)野球チームやサッカーチームの人員運搬には使える。バスケットチームだと、ちょうどいい。
(荷室)……★★★
「パンク」という言葉にカビが生えている現在、予備タイヤはつり下げ式にして車外へ追い出し、広く使いやすい床下収納を実現した。床面最大幅は135cm、奥行き40cm。サードシートのバックレスト背面のベルトを引くだけで、簡単に背もたれが前に倒れ、フラットなフロアのまま荷室を広げられる。110cmから2m前後までの長尺モノを積むことが可能だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
基本的に「オーパ」と同じコンポーネンツを使いつつ、「プレミオ/アリオン」よりは積極的にエンジンを回し、「オーパ」よりは速度と回転数の乖離が小さい“フィール重視”のチューニングが施された2リッターウィッシュ。ベーシックモデル「G」は、1.8リッターモデルと同等のカタログ燃費「リッター14.4km」を実現。一方、テスト車の「Z」は、もうすこしアグレッシブな味付け(リッター13.2km)。せっかちなドライバー(リポーター)による街なかドライブだと、速度より先に回転数が上がりがち。「Z」のジマン、無段階変速を敢えて6段に切った「シーケンシャルシフト」を繰ると、セカンドでも90km/hに達しない低いギアで“加速のよさ”が演出される。もっとも「ミニバンに乗っている」という根本的なことを考えると、頑張って“スポーティ”を目指して走らなくても……。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
「ダブルウィッシュボーン」の後ろ足をもつライバルに対抗、わざわざ4WDモデルと同じ「ダブルウィッシュボーン」式を採るスペシャルなFFウィッシュ。「セッティングの幅を求めた」というのが、担当エンジニア氏の弁。実際、トヨタ車らしからぬ(?)締まった乗り心地。一方、フロントはソフトにして回頭性に配慮、一般的な速度域でのハンドリングは良好だ。ただ独り乗車だと、ちょっとリアが突っ張る感がある。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年5月30日〜6月2日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1527km
タイヤ:(前)215/50R17 91V/(後)同じ(いずれもDunlop SP Sport9000M)
オプション装備:DVDボイスナビゲーションシステム+ガラスアンテナ+バックガイドモニター&ブラインドコーナーモニター+ステアリングスイッチ(33.1万円)/後席テレビ(15.8万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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