三菱グランディス スポーツ 7人乗りFF(4AT)【試乗記】
ずっと“わがまま” 2003.05.20 試乗記 三菱グランディス スポーツ 7人乗りFF(4AT) ……268.0万円 「ekワゴン」で風向きを変え、「コルト」で体勢を立て直した三菱自動車が、「グランディス」で勝負にでる!? “世界のわがまま”を謳う3ナンバーの3列シートミニバン。プレス試乗会に参加した『webCG』記者が心配することとは……?専用プラットフォームに新エンジン
黒いカバーをはずすと、三菱の新しいピープルムーバー「グランディス」が姿を現した。先代の角張ったデザインとはうってかわって、ニューモデルは流麗なボディスタイルをとる。「コルト」「ランサーエボリューション」のマイナーチェンジ版でお馴染みになった、ノーズに配されたスリーダイヤモンドの土台によってグリルが左右に分かたれる新しい三菱車のフェイス、いわゆる“ブーレイ顔”を採る。キャッチフレーズは「世界のわがまま」。
「グランディス」のプレス試乗会は、宮崎で行われた。試乗前夜、会場となったホテルの大広間で新車説明が行われ、最後にニューモデル披露とあいなったのだ。
「三菱で、2代続けて成功したモデルは少ないんです」。開発をとりまとめた露峯登プロジェクトマネージャーが笑いながら言う。初夏を思わせる南国の日差しのなか、ホテルのエントランスには色とりどりのグランディスが並んでいる。
「それは、ある程度の成功を見ると、次の型をキープコンセプトでまとめてしまうからなんですね」。だから新型はガラリと見かけを変えたということだ。
露峯さんは、冗談めかして説明するが、3ナンバーの3列シートミニバン、グランディスは、新生“ハートビート・モーターズ”ミツビシにまとまった利益をもたらすべく、専用プラットフォームに新開発2.4リッター直4MIVECユニットが与えられた重要モデルである。2000年に発覚した欠陥車隠蔽事件でレームダックになった同社が、ダイムラークライスラーからのさらなる資本導入を仰いだ後、再び飛翔できるかが、このクルマにかかっている。
「例のご迷惑をおかけした事件以来、三菱のブランドイメージは地に落ちました」と、露峯さんは不祥事を真摯に振り返る。「その際にユーザーアンケートを実施したんです。すると、『安くても買いたくない』ブランドとして、三菱自動車の名を挙げた方が6割近くもいらしたんです……」
ドン底のスリーダイヤモンド。しかしその後、軽自動車「ekワゴン」で薄日が差し、小型車「コルト」で「事件前の状態まであと一歩」(露峯氏)にまで回復した。マイクロ&コンパクトモデルで、販売台数を稼ぎ、満を持して投入した大型モデル、グランディスで収益をあげたい、というわけだ。日本における新車の3台に1台がミニバンという昨今、理論的に間違いではないけれど、でも、もはや少々古い“ビジネスモデル”という気もするが……。
もっとも、ニューグランディスは、北米をのぞく、アジア、ヨーロッパに輸出されるから、まだ本格的なミニバンの波に洗われていない彼の地で、意外な活路(?)を見いだすことになるかもしれない。
6人乗りと7人乗り
変化自在なシートアレンジをウリにするライバルが多いなか、新しいグランディスのそれはシンプルだ。「乗員数とラゲッジスペースのバランスを上手に取る」という考えがコンセプトになっている、と感じた。“四角”から“流麗”に変わったカタチが暗示するように、クルマをクルマとして使うことを前提に、「キャンプ場でのロッヂ」「スキー場での休憩所」がわりにしたいという過剰な要求は、やんわりお断りしている。
具体的なアレンジは、次の2点。左右分割式になったサードシートは、バックレストを前に倒してシートごと180度後ろに反転させると、キレイに床下に収納することができる。
前後にスライドできるセカンドシートは、シートクッションを座面後端を軸に跳ね上げ、バックレストとVの字になったままフロントシート後ろまで前に押しやれば、ラゲッジスペースを大幅に拡大できる。
総じて、“実際に使う”アレンジを厳選した印象を受けた。セカンドシートの座面跳ね上げ機能を活用して、通常の使用時に、乗員の好みにあわせて座面角度を3段階に調整できるようにしたのは、冴えたアイディアだ。
ニューグランディスのグレード構成は、機関的には「2.4リッター直4+4段AT」の1種類。外観は、「エレガンス」と「スポーツ」にわかれるが、これはバンパー形状と空力装備によったコスメティックな違いに過ぎない。むしろ、2列目が2人分個別に用意されるキャプテンシートの「6人乗り」、同じく3人用ベンチタイプの「7人乗り」の乗車定員が、選択の重要案件となろう。駆動方式は、FF(前輪駆動)を基本に、4WDモデルもラインナップされる。
インテリアもやはり「エレガンス」と「スポーツ」に大別され、さらにインパネ上部の色や内装基調色を選択可能。加えて、コルトでぶち上げた「カスタマー・フリー・チョイス」によって、グランディスも160種類もの「仕様」「カラー」から、ユーザーは自由に選ぶことができる、……といった建前の一方、在庫を確保して納期を短くしたい自動車メーカー側と、ひとつずつ検討するより手短に“お薦めプラン”を提案してほしいユーザーニーズが合致して(?)、ベーシックな「エレガント」「スポーツ」、装備を充実した「エレガント-X」「スポーツ-X」ほか、推奨パッケージが多数、カタログに載る。
新しいデザインアプローチ
グランディスのドライブフィールは、不思議と記憶に残らない。「ステアリングがちょっと軽すぎるかなァ」と、淡い感想を抱く程度。1983年に初代「シャリオ」が登場したころはあくまで傍流、ちょっと特殊な車種だったミニバンが、名実ともにセダンと肩をならべる普通のクルマになったということだろう。
それにしても、「クライスラー・タウン&カントリー」(ダッヂ・ボイジャー)「ルノー・エスパス」「日産プレーリー」と並んで、ミニバンという車型の嚆矢だった“シャリオ”の名を捨てたのはもったいない。三菱自動車は、続々と市場に投入される各社ニューモデル群のなか、自社の車名を埋もれさせないため、わざわざ「コルト」の名を“お蔵”のなかからひっぱり出してきたはずなのに……。
試乗会の最後に乗ったのは、「スポーツ」の7人乗りFFモデル。「自然が織りなす風情をテーマに開発」(広報資料)されたという多彩なボディカラーは、なるほど、微妙なイイ色が多い。なかでも、「ライトイエローパール」というテスト車のカラーが「ステキだ」と思っていたら、これは「有料色」なんだそう。
インパネまわりは、コルトで一皮剥けたか、グランディスのそれも、なかなか洒落ている。左右が尖った楕円を上下に重ねたセンターコンソールは、なんというか“騙し絵”のようで、初見では操作に戸惑うが、まぁ、新しいデザインアプローチとはいえる。
拡大
|
拡大
|
結局は体力勝負に……
エンジンは、2.4リッター直4“MIVEC”ユニット。三菱ジマンの「GDI」が、排ガス規制対応の関係でコスト高になるため、にわかに(三菱社内で)脚光を浴びた可変バルブタイミング機構付きエンジンである。リポーターの頭には、「ミラージュ」で使われたスポーツユニットといった古い記憶があるが、それはともかく、ホンダのVTEC同様、いまではコントロール幅の広さを買われて、「高性能」より「排ガス」「燃費」に焦点があてられるパワーソースだ。最高出力165ps/6000rpm、最大トルク22.1kgm/4000rpm。
シングルカムの堅実なつくりで、3500rpmを境に吸気側カムが高回転用に切り替わるが、運転していてそれを感じることは、まずないだろう。ミニバンにふさわしい実用エンジンである。
海岸沿いの道を走りながら、「GDIが思いのほか実力を発揮できなかったのがツライところだなぁ」と考える。生産規模でのライバル「マツダ」が、観音開きのボディをもったロータリースポーツを出したばかりだから、よけいそう感じたのかもしれない。スリーダイヤモンドの行く末について、ぼんやり思う。
グランディスは、(いまのところ)新鮮で、目につく欠点はなく、“男36歳独身甲斐性なし”の身にはいまひとつ実感として迫ってこないけれど、家族サービスの面でもなかなか“やり手”に違いない。
でもねぇ……。今後、日産「プレサージュ」が、ホンダ「オデッセイ」が登場し、そしてわずかなパイの食べ残しも逃さないトヨタが新型ミニバンを濫造するとなると、結局、体力勝負になるんじゃないでしょうか。消費者は、自動車メーカーの思惑を越えて、はるかに“わがまま”だから。「三菱ミラージュセダン」(2代目)で自動車ライフを始めた者としては、とりあえず「ガンバレ! ハートビートモーターズ!!」としか言えませんけど。
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏/2002年5月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】 2026.3.5 スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
NEW
その魅力はパリサロンを超えた? 大矢アキオの「レトロモビル2026」
2026.3.7画像・写真フランスで催されるヒストリックカーの祭典「レトロモビル」を大矢アキオが写真でリポート! 欧州の自動車史を飾る歴代の名車や、めったに見られない往年のコンセプトモデル、併催されたスーパーカーショーのきらびやかなラグジュアリーカーを一挙紹介する。 -
NEW
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】
2026.3.7試乗記ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。 -
NEW
実力検証! SUV向けプレミアムタイヤ「ブリヂストンALENZA LX200」を試す
2026.3.62026 Spring webCGタイヤセレクション<AD>目指したのは、人気車種となっているSUVとのベストマッチ。ブリヂストンが開発した新プレミアムタイヤ「ALENZA(アレンザ)LX200」は、どんな乗り味をもたらすのか? モータージャーナリスト石井昌道が試乗を通して確かめた。 -
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。






