日産モコT(4AT)【試乗記】
次は渾身のモコを 2003.02.11 試乗記 日産モコT(4AT) ……125.0万円 平均3000台/月を売る日産初の軽自動車「モコ」は、ご存じスズキ「MRワゴン」のOEMモデル。ターボエンジンを積むトップグレード「MOCO T」に、自動車ジャーナリストの金子浩久が試乗した。水道水のよう
ちょっと前の統計数字だが、日産「モコ」の02年10月の届け出台数が3364台。同年9月が3806台で、10月までの10ヶ月分の累計届け出台数が3万603台となっている。
モコは、スズキ「MRワゴン」のOEM車である。本家スズキの累計届け出台数は、48万2207台。軽自動車トップメーカーのスズキと、1車種、それもスズキから供給されるモコだけを販売する日産を比較しても始まらないが、10ヶ月で3万台、1ヶ月に約3000台と、安定的にモコが売れていることには意味があると思う。
モコ(MRワゴン)は、当たり前だが軽自動車である。日産は軽自動車を生産しないから、「軽」をつくるにあたり、“プラットフォームの共用化”なんて気の利いたことはできない。そのうえ、コストに超シビア&ブランドの違いなんか、あまり気にしないユーザーを相手にする軽自動車だから、車両価格の高騰と引き替えに、コストをかけて「日産色」を出すこともできない。だからオリジナルと違えたくても、エンブレムぐらいしか変えられない。したがって、モコの外観はベタなくらいMRワゴンにそっくりである。とはいえ、街で擦れ違うモコに悪い印象を覚えない。ベースとなったMRワゴンの美点ともいえるのだが、一部の軽自動車にある、背伸びした「モノ欲しさ」というか、小学生が厚化粧しているような醜さがないからだ。
中身はもちろん、見た目も「モコ≒MRワゴン」だが、乗るとそんなことはどうでもよくなる。ペナペナで軽い走りっぷりは軽自動車そのもの。ステアリングやブレーキなど、操作系は誰でも使えるくらい軽い。高い位置の運転ポジションが、ハイトワゴンであることを意識させる。走りっぷりに、これといって不備や不満は感じなかったけど、同時に何の印象も残らない。サイズや性能、運転に要する“コツ”など、あらゆる面が“ミニマム”だからだろうか。この原稿を書いている現在、自分がちょっと前に日産モコという軽自動車を運転したという記憶すら定かではないのだ。軽自動車って、こんなものだったっけ?
記憶に残らないというのは、ある意味スゴいことなのだ。たとえば、毎日使う水道水(地域によって状況は違うが)を飲んだ感想を、述べるのが難しいのと同じようなモノである。毎日つかうアシとしての役割が大きい軽自動車だから、水のごときでいいともいえる。
マーチより高いのに
モコの値付けは100.3万円から136.2万円。一方、同じ日産の小型車「マーチ」は、95.3万円から150.0万円。なんと、最廉価版のモコの方がマーチのそれよりも高いのである。さらに値段表をよく見ると、モコで一番高いターボの4輪駆動版よりも、1.4リッターエンジンを積むマーチ5ドアの「14e」グレードの方が、4.2万円も安い。
モコとマーチを較べると、クルマの内容的にはどう考えたってマーチの方が安い。マーチは普通車だから5人乗車することができるが、モコは軽自動車ゆえ4人乗りが限界。さらに、マーチは国内外でこれから長い期間に渡り大量に売らなければならない、日産の基礎となるクルマ。対するモコは、ゴーン態勢になってなりふり構わず“いっちょ噛み”した軽自動車(それもスズキからのOEM供給)である。走行性能や質感において、マーチに優位性があることは否めないだろう。
でも、毎月3000台がスズキじゃなくて、コンスタントに日産のディーラーで売れているという事実に嘘はない。だから日産は、モコを買ってくれるお客さんを大事にするべきだと思う。だってそうでしょう? 日産の工場で造っていないクルマを、日産製の小型車よりも安くなく買ってくれるのだから。こんなにいいお客なんていませんよ。
ゴーン社長以下、日産の方がそうお考えになるのなら、次のモコは日産独自の渾身の1台を期待したい。“こんな軽自動車もできるんだ”と、みんながアッと驚くような軽自動車じゃなければ意味がない、と思う。今回のモコは、日産ブランド車の販売台数を上のせする、という当面の使命を果たしたし、なにより日産の「軽」を待ち望むユーザー層が存在することを証明した。2代目モコは、簡単なOEM車なんてあり得ない、ですよね?
(文=金子浩久/写真=清水健太/2002年12月)

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