日産MOCO&MOCOターボ(4AT)【試乗記】
市場1.5倍の皮算用 2002.05.02 試乗記 日産MOCO&MOCOターボ(4AT) ……116.0万円&125.0万円 日産初の軽自動車「MOCO」は、スズキ「MRワゴン」のOEMモデル。なぜ今になって日産が、軽自動車を売ることになったのか? 神奈川県は横浜アリーナで開かれた試乗会で、webCG記者が理由を聞いた。モコモコっと拡大
2002年4月10日にデビューした日産の初軽自動車「MOCO」。「モコモコ」っとした可愛いスタイルから名付けられたというこのクルマは、いわずとしれたスズキ「MRワゴン」のOEMモデルである。全国に3000店舗を持つ日産ディーラーが軽自動車を売ることになり、日本最大級の軽ディーラーが誕生したわけだが、軽自動車を“無視”してきた日産が、なぜ今になって軽市場に参入したのか?
日本で普通車登録されるクルマの数は、年間約400万台。軽自動車の登録は、その半分の約200万台ある。だから軽市場に参入すれば、日産が対象とする市場規模が、単純計算で1.5倍になるのだ。さらに、約650万人いるという日産ユーザーのうち、約22%が軽自動車を同時に所有しているという。今まではもちろん他社モデルしか選択肢が無く、「なぜ日産には軽自動車がないのか?」という声が、少なからずあったそうだ。
しかし、日産には世界に誇るコンパクトカー「マーチ」がある。値段も排気量もあまりかわらないMOCOとマーチが、市場の“共食い”をすることにはならないのだろうか?
日産自動車マーケティング本部CMMグループ、井出秦男マーケティングマネージャーによれば、リッターカーと軽自動車の共食いは、「おこらないだろう」という。軽を買おうと決めたお客さんは、約60%が「このクルマを買う!」という指名買い、約30%は軽自動車同士を比較検討しての購入で、リッターカーを視野にいれる人は10%程度しかいない。さらに、軽自動車に乗る人のうち、約70%が軽自動車を乗り継ぐ。軽からリッターカー、もしくは逆に乗り換える人は、少ないというのがその理由である。
ただでさえ利益率の低い軽自動車を、OEM供給してもらってまで売っても、「ほとんど儲かりませんよね?」との質問には、「収益は低いですが、新しいお客様とのつき合いができます。長期的に見ると、それが日産の“財産”になりますから」というお答え。「それは長い目で見守って、リッターカー以上に買い換えてもらうということですか?」とうかがうと、「そのへんも期待しています」と笑顔で返された。でも、軽からリッターカーにステップアップ(?)するヒトは、少ないんじゃ……。と、それはともかく、日産の市場をモコモコっと拡大、そのうちクルマのサイズもモコモコっと大きくしてもらう、というのが、日産の皮算用である。
ブランドイメージの定着
MOCOのラインナップは、オーディオなどが省かれた廉価版の「B」、NA標準モデルの「Q」と、ターボモデルの「T」の3種類。全車にFF(前輪駆動)のほか、4WDが用意される。エンジンは、NAが可変バルブタイミング機構(VVT)付き0.66リッター直3DOHC(54ps/6500rpm、6.4kgm/3500rpm)、ターボ(60ps/6000rpm、8.5kgm/3000rpm)はVVTがつかない。トランスミッションは、両方ともコラムシフトの4段ATが組み合わされる。
「ハードウェア的には全く同じ」なMOCOとMRワゴンだけに、乗ってみてMRワゴンと違うところはない。見晴らしが良くて運転しやすい、軽ミニバンの雰囲気そのまま。電動パワーステアリングの感触が、フワフワしてたよりないところまで同じだ。
中身は同じだが、内外装には差別化が図られた。特にフロントマスクは、ボンネットとバンパーの形状を変更。プリメーラやマーチと同じ、エンブレムの下にヒゲのような「ウインググリル」を形成し、一目で日産のクルマとわかる顔になった。
「金属部品(ボンネットのこと)の形状を変更するケースは、OEMではめずらしいと思います」と、デザインを統括した、デザイン本部第1プロダクトデザイン部の秋山芳久プロダクトチーフデザイナーは語る。スチール製ボンネットの形を変えるということは、専用の金型を作成しなければならず、コストがかかる。あえてそうした理由は、「日産のブランドイメージを定着させるため」だという。
加えて、リアコンビネーションランプに、白色がかったクリアテールランプを採用。ホイールカバーとアルミホイールの意匠も、オリジナルに変更された。
インテリアはベージュを基調に、シート生地に明るいブラウンの「タン」か、グリーンがかった水色「ターコイズ」の2種類。「軽で初採用」が謳われた盤面発光メーターは、MRワゴンのブルーからグリーンに改められた。
装備面でも、若干の違いがある。MRワゴンにはオプション設定のABSと、セットで装着されるブレーキアシストが、MOCOには標準装備される。また、2WDのNAモデルが本家に先駆けて「平成12年基準排出ガス75%低減レベル」(MRワゴンは2002年4月25日に対応)を達成したこともニュースだ。価格は、ABSが標準装備となるターボモデル以外は、MRワゴンより2.5万円高く設定された。値段を上げてまでABSを付けた理由は、「日産として当然」だから。日産ブランドをかなり意識しているようである。
マーチと同じウィンググリルのフロントマスク、標準装備のABSなど、随所に「日産のブランドイメージ」が注入されたMOCO。発売から2週間余りで月販目標の4000台を超える5000台の受注を受け、とりあえず好調なスタートを切った。
(文=webCGオオサワ/写真=日産自動車/2002年4月)

大澤 俊博
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