トヨタ・ハイラックスサーフ 3400ガソリン 2WD SSR-X(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ハイラックスサーフ 3400ガソリン 2WD SSR-X(4AT) 2003.02.06 試乗記 ……296.7万円 総合評価……★★★★アーバンカーボーイに
フォードのSUV、初代「エクスプローラー」試乗会での出来事だから、1990年頃だろうか。僕たちはアメリカ、アリゾナの高原地帯でこのクルマの撮影をしていた。下はほとんど砂地で、サボテンや小さな灌木が生えているだけの荒涼とした土地である。
同行のカメラマンがいう。「あそこがいいから、あの岩の向こうに行ってくれない?」。というわけで、僕はダートの道を外れて砂地を突っ切ろうとした。だって乗っているのはエクスプローラーだったから。それなのに、途中でリアが妙にスリップする。ステアリングはいうことをきかない。「変だな?」とは思ったけれど辛うじて脱出し、撮影ポイントにたどり着いた。
クルマから降りてボディ下面を覗き、驚いた。何と、フロントのドライブシャフトがなかったのである。“アメリカンカントリーの主”のごときエクスプローラーだが、そのモデルはヨンクではなく、2WDだった。
その時から僕は、“2駆のSUV”を再認識した。砂地でスタックしそうになり、「これではSUVの意味がない」と思ったのではなく、反対に「こういうクルマもいいもんだ」と考えるようになったのだ。正確な数字は忘れたが、エクスプローラーでも「シボレー・ブレイザー」でも、2WDモデルはかなりの比率で存在する。だって4WDに乗るユーザーでさえ、アメリカでは6割以上が、あの太いタイヤを舗装以外の路面で汚したことがないというほどだ。
そういった現実をふまえると、降雪地帯に住んでいる人や、アウトバック好きな人以外は、2WDモデルでもいいということになる。SUVの魅力は踏破力にあるかもしれないが、その多くは4WDでなくとも、高い地上高やタイヤの性質、アプローチアングルでカバーできる。
それ以上にSUVで大切なのは、“マッチョなイメージ”であろう。一見怖そうで押し出しのきくボディを、高い位置のドライバーシートからコントロールすることの優越感。多少何かがあってもなんとなく頑丈に思える、“心理的安心感”にあると割り切れば、振動や乗り心地、燃費、そして価格にハンディがある4駆でなくてもいいともいえる。
今回、フルモデルチェンジしたのを機に、久しぶりに「ハイラック サーフ」を都内で乗りまわした。新型サーフは都会で乗る限り、便利で快適この上ない乗り物だった。その一因が4駆ならぬ2駆ゆえだったのも、否定できない事実である。“アーバンカーボーイ”には2駆のSUVで充分、そう思った。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ハイラックス サーフ」の発端は1968年に生まれた、1トントラックの名車「ハイラックス」。むき出しの荷室に樹脂製のトップとリアシートを付けたのが84年。これがその名の通り、当時ピークを迎えたサーフィンブームに乗って大ヒット、86年に乗用車登録のワゴンになった。89年には5ドアモデルも加わり、トヨタ4×4の王座に君臨する「ランドクルーザー」に対し、若者向けのSUVとして確固たる地位を確立。アメリカでは「4ランナー」の名前で、安価なSUVとして成功を収めた。
95年に一新されて5ドアのみのラインナップとなり、現行モデルは2002年10月にフルモデルチェンジを受けた4代目。新型は“安価なランクル”「ランドクルーザープラド」の姉妹車で、セパレートフレームや前独立、リアはリジッドのサスペンション、エンジンなど、ボディ外皮以外はほとんど共通。ただし、ハイラックスは出自がトラックである関係から、後輪だけを駆動する2駆版があり、これが結構人気を呼んでいる。ホイールベースはプラドと同じ2790mmだが、外寸は4770X1875X1790mmでやや大きい。
エンジンは、2.7リッター直6(150ps)と3.4リッターV6(185ps)、3リッター4気筒のターボ付きディーゼル(170ps)の3種類。トランスミッションは、すべて4段ATだ。前述のように2WDもある関係から、フルタイム4WDのプラドに対し、サーフはパートタイム式4WDとなる。
(グレード概要)
基本グレードは「SSR-X」と、本革巻きステアリングホイールやオプティトロンメーターなどが奢られる高級版「SSR-G」の2種類。SSR-Xのガソリンエンジン車に限って、2WD仕様が用意される。4WDはトルセンデフで、前:後=40:60にトルク配分されるほか、センターデフやリアのLSD(オプション設定で3.0万円)が設定される。上級グレードのSSR-Gには、対角線上の2輪同士を高圧ガスを封入した中間ユニットで連結し、補助的なダンパー機能として作用することでロールやピッチングを制御する「X-REASサスペンション」が標準装備となる。
【車内&室内空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
豪華志向のプラドとは違い、サーフは“若者向け”。だからといって、ダッシュボードの造形はスポーティでも機能最優先でもなく、最近のトヨタ室内の悪い例で、全体的にデザインテーマがあいまいだ。黒いフェイシアにアルミ風のトリムがアクセントになるが、空調スイッチ類はゲーム器のコントローラー感覚。テスト車は、センターコンソール中央にトヨタ汎用の「DVDナビゲーション付きワイドマルチAVステーション」を装着し、カーナビ、オーディオ関係がまとめられる。デザインはともかく、ロジックがわかればそれなりに機能は充実する。ただし廉価版ゆえ、「2WD-4WD」切り替えスイッチをはじめとする、いくつかのコントロール類が痕跡でしか存在していないのが寂しい。なおギアをリバースに入れると、後端のCCDカメラが撮った後部映像をカーナビ画面に映し出す、「バックガイドモニター」がAVステーションとセットで装着される。もっとも、斜めも含めて後方の視界はかなりいいから、これは歳とって肩がまわりにくくなった人向けだ。
(前席)……★★★
ちょっと小ぶりに見えるが、ファブリックのシートはかなりしっかりしている。クッションも厚く、ドライバーをサポートするような形状で、なかなか快適である。オフロードでもうまく対応できそうだ。シート高さが大きな範囲で調整できるのもいい。ファブリックの表皮も機能的な造形で、このクルマの性格にあっている。
(後席)……★★★
3列シートがメインのプラドとは異なり、サーフはあくまでも2列シートとして造形されている。それゆえ、当然リアのルームは広い。前後スペースがたっぷりあるのに加え、1.9m近くある全幅により、室内の有効幅もかなりある。前席同様、シートクッションなどもきちんとできている。
(荷室)……★★
リアシートはそれほど力を入れなくても、フルフラットに畳み込むことが可能。フォールディングすると直方体の大きな荷室が出現するが、SUVゆえフロアは高めだから荷物の出し入れがしやすいわけではない。さらに、ホイールアーチの張り出しがかなり大きい。テールゲートが一体式のため、後方に余裕がないと開けない。ダンパーがついているとはいえ、巨大ドアの上げ下げは女性には重いだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
基本的に先代からのキャリーオーバーである3.4リッターV6だが、力は充分。特に低速トルクが効いていて、かなり元気に走る。2WDゆえフロントのドライブシャフトやデフギアを省くことができ、車重が4WDよりも100kg以上軽い約1.7トンだからだ。ただし、一部トヨタの悪弊で、スロットルペダルに遊びがないというか、ちょっとしたストロークで結構激しく応答する。狭いところへゆっくりバックしていくときなどは、アクセルペダルの操作に気を遣う。
同じ理由から、スタンディングスタートは体感的に相当速い。ということは、高い視線による見晴らしのよさと相まって、街中で乱暴に振る舞いそうになる。やはりこういうクルマに乗るには、人間ができていないといけないと実感させられた。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
都内の道に乗り出したとき、最初は「何とソフトで気持ちがいいのだろう」と感じた。考えてみればバネ下に対してバネ上が重いから、相対的にバネ下重量が軽くなり、結果として乗り心地は有利になる。加えて、2WDであるがゆえの軽さもあり、振動や騒音も減るのだ。都内で乗る限り、4WDよりも乗り心地はずっとこちらの方がいい。
ところが、100km/hを超えたらその性格が急変した。特に前軸を中心に後ろがピッチングを繰り返し、同時に直進性が悪くなる。もともと大雑把なステアリングの感覚は、さらに悪化する。それが速度を緩めた瞬間、また素晴らしい乗り味に戻るのだ。
サーフの2WDに限っていえば、あくまでも都会にしか生息できないカーボーイのためのクルマなのである。でもそういう人には、とてもいいクルマだと思う。
(写真=峰 昌宏)
【テストデータ】
報告者:webCG大川悠
テスト日:2002年11月29日から12月2日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:668km
タイヤ:(前)265/70R16(後)同じ
オプション装備:ハイラックス サーフ ライブサウンドシステム=28.7万円(DVDナビゲーション付ワイドマルチAVステーション(6.5型ワイドディスプレイ+AM/FMマルチ電子チューナー付ラジオ+TV+MD+CDプレーヤー+6スピーカー+バックガイドモニター+TVダイバシティアンテナ)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:124.7km
使用燃料:25.9リッター
参考燃費:4.8km/リッター

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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