トヨタ・ハイラックスサーフ 3000ディーゼル SSR-G(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ハイラックスサーフ 3000ディーゼル SSR-G(4AT) 2003.01.30 試乗記 ……428.2万円 総合評価……★★★
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テイストではトラッキー
ピックアップトラックにルーフを付けるかたちで始まった、トヨタ「ハイラックスサーフ」。モデルチェンジを経るたびに変身を続け、新型は「ランドクルーザー プラド」とシャシーなどを共用する、立派な(?)SUVとなった。ただ、新型は走行性能(特にオフロード)には秀でているが、エクステリアとインテリアの造形が年寄り臭くて魅力に乏しい、と思う。従来通り、トヨタが訴求したい“若者”にアピールするかどうか大いに疑問だ。
デザイン担当者は、新型サーフのデザインテーマを「テイストではトラッキー」といっていた。ちなみに「トラッキー」とは、「トラックっぽい」ことを意味するのだが、それも今となってはジレンマだろう。出自である“ピックアップトラックらしさ”を残しながら、最新のSUVにまとめあげなければならないからだ。アメリカのような“ピックアップ文化”の存在しない日本で、はたしてテイストだけのトラッキー神通力はいつまで続くのだろうか。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ランドクルーザー プラド」と、エンジンやフレームなどを共用するのが「ハイラックス サーフ」。現行モデルは、2002年10月7日にフルモデルチェンジした4代目。高級&上質指向のプラド、若者向けのサーフとキャラクターが分けられる。プラドには3ドアが設定されるが、サーフは5ドアモデルのみとなる。
メカニズムは、基本的にプラドと同じだが、高度な電制4WDシステムをもつプラドに対し、ハイラックスはコンベンショナルな「2WD-4WD」を、スイッチで切り替えるタイプとなる。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアはリジッド式だ。サーフは、右前と左後ろ、左前と右後ろのサスペンションを、高圧ガスを封入した中間ユニットで連結する「X-REAS」サスペンションを搭載。これはコーナーでのロールや段差の乗り越え時などに、中間ユニットが減衰力を増すことで、ロールやピッチングを抑えるもの。
エンジンは、2.7リッター直4DOHC16バルブ(150ps/4800rpm、24.0kgm/4000rpm)と、3.4リッターV6DOHC24バルブ(185ps/4800rpm、30.0kgm/3600rpm)のガソリンエンジンに加え、コモンレール式ディーゼルの3リッター直4DOHCターボ・インタークーラー付き(170ps/3400rpm、35.9kgm/1400〜3400rpm)の3種類が用意される。トランスミッションはすべて4段ATとなる。
(グレード概要)
「SSR-G」は、サーフのエンジン種類ごとに設定される最上級グレード。「X-REAS」サスペンションは、このグレードにのみ装着される。インテリアに、本革巻きステアリングホイールやオプティトロンメーター、石目調(!)パネルを採用。シート表皮はファブリックだが、運転席は7ウェイの電動アジャスタブル機構が付く。装備品として、盗難防止装置(イモビライザー)が標準装備。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
乗り込んで最初に驚かされるのが、インパネやドアトリムを飾る素材だ。最近のクルマだったら、ウッドやアルミが使われるところだが、なんと今度のハイラックスサーフは“石”なのだ。カタログには「石目調パネル」と書かれるが、石といってもターコイーズや大理石のような装飾用ではない。黒地にポツポツと煌めきがあって、たいへんシックで落ち着いている……、こういう石はどこかでよく見かけるゾ。そう、御影石。つまり、墓石だ。見た目が墓石の質感にそっくりなのである。クルマに乗ったら墓石がお出迎えとは、ブラックジョークとしては秀逸なのだが……。その点を試乗後に開発担当者に質すと、「やっぱり、そう見えますか!! いろんな方から同じように指摘されるんですよ」と頭を抱えていらっしゃった。
操作面では、ゲーム機の十字コントローラーをモチーフにしたという、新機軸のエアコン操作ノブを新採用。が、見た目と動きが合致しないので使いにくい。ルックス的な新鮮味も、あまり感じられなかった。
(前席)……★★★
座り心地は可もなく、不可もなく。それより、テスト車に装着されていた、オプションの本革シートが26.0万円もするのに驚かされた。“サーフは若者向けのクルマ”と公言するわりに、値段がアダルト向きではないか。若者がアウトドアスポーツにガンガン使うのに便利なように、汚れても雑巾で拭き取れる、撥水加工されたビニール地のシートなどがある方が、気が利いていると思う。
(後席)……★★★
意外、といっては失礼だが、後席の乗り心地を含めた居住性に難はなかった。シートは、座面を引き起こしてから背面を倒す“ダブルフォールディングタイプ”なので、“シングルフォールディングタイプ”のように、必要以上に座面を薄くすることがなく、クッション性も保たれる。
ただ、シートベルトの巻き取り機構が敏感すぎて、オフロードを走るとどんどん締め付けられていくのがちょっと気なった。もちろん、安全には換えられないが。
(荷室)……★★★
前述したように、リアシートがダブルフォールディングタイプなので、荷室をフラットに拡大できて使いやすい。また、テールゲートを閉めたままでもガラス窓をスイッチで上下できる機能は、リモコンキーからも操作が可能だ。
しかし、抜かりないトヨタにしては珍しいファウルも見付けた。左後輪のフェンダー内部が蓋付きの収納ボックスになっているのだが、その上に脱着式ケースに入れた三角表示板を釣り下げると蓋が開かなくなるのだ。この点も、開発担当者に訊ねると、「やっぱり、わかりましたかぁ」と正直なお答え。
真相は、オプショナル装備のJBLスピーカーに、三角表示板の収納スペースを取られてしまい、付け焼き刃的にケースに入れて左フェンダー上に設置したからだという。JBLをつけなければ、問題ないことにはなるが。ちなみにJBLオーディオは、DVDナビゲーションシステムとセットで38.7万円と、これまたアダルト価格だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
最新の「1KD-FTV」3リッター“コモンレール式”ディーゼルエンジンは静かで、振動もとても小さい。富士スバルラインのような上り勾配が続くところでは、固有のエンジン音が耳に付いたが、所有して長く乗るようになれば慣れるだろう。スタッガードゲート式トランスミッションは操作しやすく、変速自体のショックも、小さくて滑らかだ。
ちなみに、ディーゼル車は、「自動車NOx・PM法」の規制対象となる。よって、東京、神奈川、大阪などの8都府県では、2002年10月1日から新車登録ができなくなったことを、付け加えておく。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
オフロードでの乗り心地が秀逸。路面の凹凸や石、岩を乗り越えても、衝撃を巧みに吸収する。わざと荒々しく凹凸を乗り越えてみたが、衝撃の角が丸められて乗員に伝わってくる。新開発のラダーフレームをもつだけのことはある。シャシーをはじめとする多くの部分を、ランドクルーザー・プラドと共用するので、あたりまえだが、乗り心地はとても似ていた。
さらに、トラクション性能が素晴らしい。傾斜角度20度くらいの湿った泥道を上り下りしても、スリップすることがなかった。センターデフもロックせず、エクストラローギアを選択していない、つまり「4WD-Hi」のままだったので、基本的な踏破力に驚かされた。
時速50〜60キロでダートを周回すると、アクセルでもステアリングでも修正が容易に効き、コントロール性は高い。
(写真=高橋信宏)
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【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2002年11月29日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)265/65R17 112S(後)同じ(いずれもミシュラン CROSS TERRAIN)
オプション装備:リアLSD(3.0万円)/チルト&スライド電動ムーンルーフ(9.0万円)/前席SRSサイドエアバッグ&前後席SRSカーテンシールドエアバッグ(8.0万円)/7ウェイアジャスタブル機構付本革パワーシート(26.5万円)/JBL SYNTHESIS プレミアムサウンドシステム+DVDナビゲーション付ワイドマルチAVステーション(6.5型ワイドディスプレイ+AM/FMマルチ電子チューナー付ラジオ+TV+MD+CDプレーヤー+10スピーカー)+TVダイバシティアンテナ(38.7万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(2):山岳路(3):ダート(3)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

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