トヨタ・ソアラ【試乗記】
これは実に驚異である 2002.09.04 試乗記 トヨタ・ソアラ日本のモータージャーナリズムの草分け的存在、小林彰太郎。「ジャーナリストは生涯現役」の口ぐせ通り、今日も西へ東へと忙しい。日本に高級パーソナルカーこと“遊びグルマ”というジャンルがあることを知らしめたトヨタ・ソアラ。電動ハードトップを備えた4代目に乗る。
会員コンテンツ「Contributions」より再録。
質感の高いインテリア
新型ソアラは一見2+2クーペだが、座席に座ったまま、ワンタッチ/25秒でメタルトップをトランク内に電動格納することにより、完全なオープンに早変わりできるのが、最大の特徴であり、美点でもある。
あいにくいまにも雨の落ちそうな空のもと、東京-箱根を往復した印象を記す。
分厚いドアを開けて運転席に着く。良質な革装シートの形状と感触は、そこまで乗ってきたSタイプ・ジャガーとよく似ており、非常に快適である。ウィンドスクリーンは、最近の傾向で強く後傾しているが、ダッシュ上面がダークカラーなので、ガラスに反射するおそれはない。また、太いAピラーにもかかわらず、ドライバーが相対的に後方に位置するため、曲がる場合もまったく視界の妨げにはならない。正面に3個並んだ古典的な黒地に白文字のアナログ計器は自然で見やすい。 総じてインテリアの意匠はよく考えられており、質感も高い。
ランフラットタイアの印象
路上に出てまず印象的だったのは、無類に静粛なパワーユニット、特に4.3リッターV8エンジンだった。高速道路を含めて、実用的な速度領域ではほとんど無音・無振動である。トランスミッションは、セルシオと基本的に共通の、ジグザグ型パターンを持つ5段ATで、Sモードを選べる。4.3リッターV8は好ましいトルク特性で、43.8kgmの大トルクを3400rpmを中心とした広域で発揮する。そのため、ゼロ発進から3桁の速度まで加速度はリニアであり、かえってパンチが効かないような錯覚を覚える。
前後ともダブルウィッシュボーン/コイルによる独立懸架、245/40ZR18ワイドタイア、無類に高剛性を持つ車体の相乗効果で、高速直進安定は例外的に高い。隣に同乗された中川 泰チーフエンジニアに、「このメーターはずいぶん甘いですね」と言ったほど、初めてソアラに乗ると速度感が狂いがちである。
タイアには2種類のオプションがある。ダンロップの普通タイアと、ブリヂストンのランフラット型で、後者を選べば、もちろんスペアを携行する必要がない。メタルトップをトランクに格納しても、ゴルフバッグ1個を収納できるという。そのためにも、ランフラットは必要なのだ。
東京から箱根まで乗った車は、このランフラットを履いていた。重量が重いことのほか、NVH(ノイズ/ヴァイブレーション/ハーシュネス)の点でも普通タイアに比べて不利なのは否めない。この選択は迷うところである。
いくつかの問題
新型ソアラにも注文をつけたい点がある。乗り込んで街角をゆっくり曲がった瞬間から気が付いたが、箱根のワインディングで確信となったことがいくつかあった。ここに列挙すると、(1)ステアリングが少々ローギアードである。(2)ステアリングフィールがややデッドである。(3)ダンピングが状況によっては少々弱い。
中川CEともいろいろ議論したのだが、(1)の問題は、ラック&ピニオンをバリアブルにすれば解決がつくのではなかろうか。(2)はタイアの性質にもよるから一概には言えない。箱根からの帰途乗った車は普通タイアを履いていたが、この方が粘りがあり、キャスターアクションも多少強かった。(3)のアンダーダンピングの問題だが、なぜ速度感応式の可変ダンパーにしなかったのか、僕には不可解である。120km/hくらいを境に自動的に堅くなる可変ダンパーにして、別に任意に切り替えられるスイッチを付ければいいと思う。
![]() |
オーソドクスで手堅い
帰り道はオープンを試そうと、ダッシュのスイッチでメタルトップを格納した。8個の小さなモーターと精巧なリンク類、それを絶妙なタイミングで動かす電子制御装置は、新型ソアラでいちばんの技術的メリットだと思う。オープン状態でもボディはみしりともいわず、120程度出しても風はまったくコクピットに巻き込むことがない。これは実に驚異である。
結論をいうと、この格納メタルトップを別にすれば、この新型ソアラはきわめてオーソドクスな、手堅い設計である。だからこそ、600.0万円という、リーズナブルな価格と高いコスト/パフォーマンスが可能になったのだろう。今年推奨の1台。
(文=小林彰太郎/写真=トヨタ自動車)

小林 彰太郎
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。

































