コーナリング性能を高めるホンダの新技術
2012.12.13 自動車ニュースコーナリング性能を高めるホンダの新技術
ホンダが考えるクルマの未来にいち早く触れることができる「ホンダミーティング」。今年は近い将来、市場に投入される予定の3種類のハイブリッドシステムの他に、超小型モビリティーのプロトタイプや、後輪のトー角を左右独立して制御する4WSの発展技術も試すこともできた。(ホンダミーティング2012の関連記事はこちら)
■超小型EV「マイクロコミュータープロトタイプ」に試乗
「これはゴードン・マーレイさんの作品でしょ!」 希代の天才デザイナー、ゴードン・マーレイが考案したマイクロコミューターについて何度か取材したことのある筆者は、即座にそう思った。鋼管パイプを用いたシャシー、着せ替え可能なプラスチックボディー、そしてトドメは「マクラーレンF1」と同じセンターステアリングの3座席構成と、なにから何までマーレイが考える次世代コミューター「T27」とうりふたつ。しかし、会場にいたホンダの技術者に聞くと、「いえ、これはホンダの技術で作ったものです」ときっぱり否定された。
現在、国交省を中心に超小型モビリティーの規格が検討されていることは皆さんもご存じだろう。その実証実験が2013年から始まるのを見据えてホンダが試作したのが、この超小型EV「マイクロコミュータープロトタイプ」である。
このプロトタイプ、後輪を駆動する2基のモーターには、ホンダのハイブリッド「IMA」用のものが使われているというから、マーレイの作品とは他人のそら似、筆者の勝手な思い込みだったようだ。ちなみにサイズは全長2500×全幅1250×全高1445mm、最高速度は80km/h以上で、航続距離は60km程度、充電時間は3時間未満を想定しているという。
このプロトタイプカーに試乗したが、デザインの美しさとは裏腹で、ドライバビリティー、乗り心地、ハンドリングなどはまだ改良の余地があると思われた。もっとも、そもそも法規制が整備されていないのだから、開発はこれからというのもやむを得ない話だ。
■旋回性能を高める「プレシジョン・オール・ホイール・ステア」
これとは対照的に、2013年に北米で発売される「アキュラRLX」に搭載されることが決まっているのが、「プレシジョン・オール・ホイール・ステア」である。これは、後輪も操舵(そうだ)する4WSの発展形と考えればわかりやすいが、従来のものとは異なり、リアのトーを左右独立して電子制御している点が目新しい。
メカニズム的には、後輪のセンターよりやや前方に置かれたトーコントロールリンクと呼ばれるサスペンションアームに電動アクチュエーターと磁気式ポジションセンサーを内蔵させ、このアームを伸縮させることによってトーを制御する。トーの変化量は最大でプラスマイナス2度だが、ドライバーに違和感を与えないでトーを調整させるには精密なコントロールが必要で、現状では1/4mm単位でアームを伸縮させているという。このため、ポジションセンサーには分解能10μmという高精度なものが用いられている。
これは「インスパイア」に装着された試作車に試乗したが、3モーターハイブリッドの「SH-AWD」とは異なり、極めて自然な味付けとされている点が興味深かった。
なるほど、左右の駆動力をアクティブに制御するSH-AWDに比べて、ハンドリングに与える影響が限定的なのは当然だろう。しかし、ややハードなコーナリングを試しても、前輪駆動車にありがちなフロントタイヤをいじめているという印象が弱く、リアタイヤを含めて4輪均等に仕事をさせている感触が強く伝わってきた。おそらく、同じタイヤを履いていても、プレシジョン・オール・ホイール・ステア装着車のほうがコーナリング性能は高いはず。今後が楽しみなテクノロジーだ。
■自動緊急ブレーキ「AEB」を数年内に商品化
今回のホンダミーティングでは安全技術に関するプレゼンテーションもあった。そのなかでは、レーダーとカメラを組み合わせることで、最高50km/hでも歩行者を検出して自動的に急制動をかける「AEB(Autonomous Emergency Brake)」が今後2〜3年程度で商品化される技術として注目された。
その先には、高速道路を走る周囲のクルマの状況から急な割り込みが起きると予想してドライバーに注意を促す「i-ACC(割り込み予測機能付きACC)」があり、そのさらに先の、およそ10年後には車車間通信や路車間通信を実現させ、見通しの悪い交差点での出合い頭事故防止や赤信号にひっかからないスムーズな運転を支援する技術などが研究されているという。
リーマンショック、東日本大震災、そしてタイの洪水と、ここのところ苦難続きだったホンダ。しかし、そうした苦しい時期を乗り越え、積極的に技術開発を行う本来の姿勢を取り戻しつつあることが、今回のホンダミーティングに参加してよくわかった。ホンダファンにとっては、反撃の時きたる、といったところだろう。
(文=大谷達也/写真=本田技研工業)
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