日産スカイライン350GT-8(CVT)【試乗記】
ギリギリのスポーティサルーン 2002.03.23 試乗記 日産スカイライン350GT-8(CVT) ……366.0万円 スカイラインのトップグレード「350GT-8」は、3.5リッターV6DOHCに、ギアを8段に切ったトロイダルCVTを組み合わせ、パドルシフトできるのがウリ。2002年2月18日、静岡県は熱海で開かれた試乗会で、webCG記者が試乗した。ビックリするほど速い
2002年1月31日、日産スカイラインに「350GT-8」が追加された。“350”という数字が示すように、エンジンは3.5リッターV6DOHC「VQ35DE」(272ps/6000rpm、36.0kgm/4800rpm)を搭載、トランスミッションに日産が誇るトロイダル式無断変速機「エクストロイドCVT」を採用する。スカイラインの最上級モデルである。
350GT-8のウリの一つは、CVTに8段のギアを切り、ステアリングホイール裏のパドルでシフトできるようにしたこと。羽を広げたコウモリみたいな、黒いパドルがハンドルの隙間から見える。一般走行では、ハンドルを切ったままシフトすることが希なため、ステアリングコラムから左右にはえる、ハンドルと一緒に動かない固定式パドルを採用。しかし「通常の運転における、90%のシチュエーションで手が届く」サイズに設計されたパドルは、幅が広く、結構大きい。
ギアを、通常のオートマチックモードたる「Dレンジ」に入れてアクセルペダルを踏み込むと、クルマは滑らかに速度をあげる。3.5リッターエンジンは低回転からトルクに溢れて使いやすく、かつ高回転までスムーズ。シフトレバーを左に倒せば、マニュアルモードに切り替わる。パドルのほか、もちろんシフターを前後することで、シーケンシャルにギアを変えることができる。
8段CVTは、伊豆スカイラインの公道を使った試乗では、その効果を味わい切れなかった。確かに、シフトはハンドルから手を離さずパドルを指で弾くだけ。わずか0.2秒のギアチェンジはビックリするほど速い。
普通のヒトが、通常のMTを繰ってギアチェンジすると、約0.8秒かかる。0.2秒とは、プロのレーシングドライバーが目を三角にしてタイムアタックする時のタイミングだというから、スカイラインGT-8に乗ったヒトは、誰でもミハエル・シューマッハになれるというわけだ。少なくとも、シフトに関しては。
吸い付くような
このクルマのもう一つのウリは、ノーマルよりスポーティな「ユーロチューンドサスペンション」。ダンパー、コイル、ブッシュなど全体を見直し、専用タイヤのダンピング性能を考慮してセッティングされた。「全体的にいうと、今までより3割ほど硬め」とは、車両評価・実験部車両運動性能実験グループ、加藤博義専門主任の言葉。R32〜R34「GT-R」などの足まわりを設定したテストドライバーで、350GT-8のサスペンションチューニングを行った人である。
足まわりは素晴らしい。コーナリングは安定しており、一方直線、特に高速域では路面に吸い付くようなフラットライド。荒れた路面などでのショックはノーマルよりも強めだが、丸みがある突き上げで、サルーンとしての高級感を損なうものではない。ちなみに8速で100km/h巡航の場合、エンジンは1700rpm程度と静かで、快適なクルージングを提供する。これなら長距離を走っても、ドライバーの疲労は少なくてすむだろう。
大いに感銘を受けてテストドライブから戻ると、さきの加藤氏に聞いてみた。
「このアシがノーマルでもいいんじゃないでしょうか?」
すると日産テストドライバーのトップガンは、苦笑いしながら「お客様のなかには、コレでも硬い、とおっしゃる方がいるんです。オーナー層の年齢も上がりましたし、ファミリーセダンとして後席に子供が乗ったりもしますので……」と答えてくださった。
なるほど。試乗に先立つ事前説明で、先代R34から現行V35にモデルチェンジして、20代の購入者は15%から6%に激減、逆に60代は3%から16%に増加したと言っていたからなぁ……。もしかしたら、GT350-8は、“サンゴー”スカイラインとしてはギリギリのスポーティサルーンなのかもしれない。
(文=大澤俊博/写真=河野敦樹/2002年3月)

大澤 俊博
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