トヨタ・カローラ ラグゼール ナビエディション(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・カローラ ラグゼールナビエディション(4AT) 2000.12.08 試乗記 ……207.0万円 総合評価……★★★中途半端
ボディの全高を高くし、乗り降りのしやすさを狙った点は、高齢化社会を迎える時代に大いに評価できる。カローラユーザーの平均年齢が高いという事情もあるのだろうが……。
ラグゼールは、1.8リッター「豪華版」エンジン搭載モデル。パワーもトルクも余裕たっぷり。ただし、唐突な出足、バタつく足まわりで、「ありがたみ」はない。
どうもこのクルマからは、「トヨタは最善の小型車をこう考える」といったメッセージが聞こえてこない。予想通り、新カローラは、プリウスやビスタなどの「背の高い新しいセダンのプロポーション」で現われた。
しかし、乗ってみると、Aピラーとフロントガラスの傾斜がキツく、背の高さを生かし切れていない。強く寝たAピラーとフロントガラスは、1980年代にトヨタが大きく儲けたカリーナED兄弟での手法である。カローラの背を高くしたのは一大決断だったが、Aピラーとフロントガラスを寝かせて保険を掛けたように見える。
プリウスやビスタのように思い切り良くやってもらいたかった。中途半端。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年8月28日に発表された9代目カローラ。ボディは、4ドアセダンと「フィールダー」と名づけられたワゴンの2種類。エンジンラインナップは、1.3リッター(88ps)、1.5リッター(110ps)、1.8リッター(136ps/ワゴンには190psも)のガソリンユニットと、2.2リッターディーゼル(79ps)。4AT、5MTが用意される。FFのほか、4WDもある。
(グレード概要)
セダンは、ベーシックの「X」標準仕様の「G」豪華仕様の「Luxel(ラグゼール)」が基本グレード。ラグゼールは、別カタログがつくられるほどのスペシャルバージョン。ドライブトレインは、1.8リッター+4ATの組み合わせのみ。ただし、FFと4WDあり。装備面では、ステアリングホイールが合皮になり、センターコンソールに木目調パネルが貼られ、シフトゲートまわりはメッキ調となる。「ナビ エディション」とは、5.8インチディスプレイを備えたナビゲーションシステム搭載仕様のこと。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
インパネまわりを含めて、インテリア全体のデザインは見やすく、機能的。造形や色彩感覚も、セルシオやマークIIなどの最近のトヨタ車流で、パッと初めて乗っても馴染みやすく、違和感が少ない。反面、半畳を入れるわけではないが、「トヨタの考えるベストの小型車とは?」という主張もない。
(前席)……★★★
運転ポジションがなかなか決まらない。着座位置が高く設定されているが、座面をダイヤルで下げると後が低く、座面前端が腿の裏側を圧迫する。抵抗となって運転しにくい。Aピラーとフロントガラスの角度が寝すぎて圧迫感があるのも減点ポイント。
(後席)……★★★
前席シートを半分よりも前に出していれば、後席の膝まわりの空間は十分に確保される。シートは固め。バックレストは、6:4の分割可倒式である。
(荷室)……★★★
開口部が大きく、使いやすい。「最大幅約1495mm、高さ約510mm、容量は約437リッター(VDA法)」(カタログ値)の「ビッグサイズ」と謳われるラゲッジルーム。トランク上面が高い「ハイデッキスタイル」が、積載量の増加につながった。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
1.3と1.5リッターエンジンが中心モデルとなるカローラでは、1.8リッターは豪華版となる。パワーもトルクも余裕たっぷりだから、発進も素早い。アクセルペダルをちょっと踏んだだけで、グワッと出る。その出方が、ちょっと敏感すぎる。かえって、ギクシャクして不快に感じる時もあった。ジワーッと加速が長続きするようなセッティングを、エンジンとトランスミッションに施した方が、大人っぽくなるし、「豪華版に乗っているありがたみ」も感じさせるはずだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
1.3、1.5モデルより、足まわりがドタバタしている。タイヤの太さが、175から185と広くなったせいか(径は同じ14インチ)、路面の凹凸や段差を乗り越えるとショックが大きい。それをうまくサスペンションで吸収できれば構わないのだが……。
ハンドリングは過敏すぎず、鈍感すぎず、中庸。誰にでも運転しやすい性格のものだ。試乗車に装着されていたタイヤ(Toyo NP01)が、直進とハンドルを切った時とのノイズの量の差が大きいのが気になった。角を曲がるたびに音が耳につく。
(写真=小河原 認)
【テストデータ】
報告者: 金子浩久
テスト日: 2000年11月21日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式: 2000年型
テスト車の走行距離: 4841km
タイヤ:(前)185/70R14 88S/(後)同じ(いずれもToyo NP01)
オプション装備:ボディカラー(ホワイトパールマイカ=3.0万円)/VSC(9.0万円)/アルミホイール(5.0万円)/リアスポイラー(3.2万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態: 市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離: 196.6km
使用燃料: 14.2リッター
参考燃費: 13.8km/リッター

-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。