トヨタ・マークIIブリット 2.0iR Four(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・マークIIブリット 2.0iR Four(4AT) 2002.03.13 試乗記 ……317.2円 総合評価……★★★なかなかの実力派
ひと目でセダンから派生したことが分かるスタイリッシュじゃない外観と、個性的な顔付きは好みの分かれるところだが、適度なパワー、良好な乗り心地は評価できるもの。クルマ全体のバランスは悪くない。4WD仕様である点も含め、なんでもこなす実用的なステーションワゴンとして万人に薦めたいところだが、ボディサイズのわりには、荷室の有効スペースは思ったほど広くないのが悔やまれる。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2002年1月25日にデビューしたマークIIのワゴンバージョン。FF(前輪駆動)の「カムリ」をベースとした先代「クオリス」と異なり、マークIIセダンのプラットフォームを使う「ブリット」はFR(後輪駆動)。リアサスペンションに、自動車高調節機能が付いた「セルフレベリングショックアブソーバー」(廉価グレード“Jエディション”には搭載されず)などによる高い走行性能と、ワゴンならではの収納性を兼ね備えたのがウリだ。荷室に設けられた折り畳み式収納ボックスも、目玉の一つ。
エンジンラインナップはセダンと同様。形式はすべて直列6気筒DOHCで、2リッター、2.5リッター直噴(2WDのみ)、2.5リッター(4WDのみ)、2.5リッターターボの4種類。2リッターと2.5リッターには、FRのほかに4WDモデルも用意される。
(グレード概要)
ブリットのグレードは、排気量別に「2.0iR」「2.5iR-S」「2.5iR-V」と分けられ、名前の後ろに「Four」とつくのがヨンクモデル。4WDは、2.5リッター(直噴を除く)と2リッターのみに用意される。グレードが低くても、充実した装備を持つのがブリットの特徴のひとつ。2リッターモデルとはいえ、ステアリングホイールやシフトノブは本革巻きを装着し、ジマンのセルレベリングショックアブソーバーも標準装備。4WDシステムは、コンピューターが運転状況に応じてセンターデフと電子制御湿式多板クラッチをコントロールし、前:後=30:70から50:50まで駆動力を配分する「i-Four」である。
【車内&荷室空間】 乗ってみると
(インパネ+装備)……★★★
良くも悪くもトヨタ流のデザインだが、癖のないところが好ましい。インストゥルメントパネルの質感も悪くない。例によってスイッチ類の操作性や感触、レイアウトに関しても気になる部分はまったくない。メーターナセル内の照明は最近のフォルクスワーゲンのような青色だが、これは見た目は美しいものの、意外と目に優しくないように感じるのは単なる個人差だろうか。センターコンソールの深いボックスやATセレクター前のトレイ、ドアポケット等々、小物入れが豊富に用意されているのが嬉しい。
(前席)……★★★★
着座位置は高めで視界良好。ファブリック地のシートの座り心地も悪くない。天井と頭との隙間は横にしたコブシが2個入るほどの余裕がある。閉塞感とは無縁の世界だ。ゆったりとした気分にすぐに浸れるのは実用車にとって重要である。
(後席)……★★★
4.7mの全長と2780mmのホイールベースのクルマだから当然と言えば当然ながら、前後、左右、天地いずれにも充分な空間が確保される。ヘッドルームはゆったりとしているし、膝と前のシートとの間隔はコブシ3個は入るだけのスペースがある。ただし、シートクッションは尻の部分がやや落ち込み気味で、またシートバックがわずかに立ち気味なので、くつろぐにはシートバックにきっちり背中を押し付けるのではなく、尻を少し前にずらしてちょっとルーズな姿勢をとったほうがいい。クッションは高い位置にあり、乗り降りはとても楽だ。
(荷室)……★★
リアシートを畳めばセダンでは望み得ない広大なスペースが現れる。しかし、ステーションワゴンとしてみると、文句を言いたくなる部分がないわけではない。リアシートの畳み方は、いわゆるダブルフォールディング式ではなく、クッションを起こさずにシートバックだけを前に倒すタイプなので、床が完全にフラットにならないことが第一の不満。またタイヤハウスの張り出しが思いのほか大きく、床面積を狭めている点も残念だ。さらに床から天井までの高さがそれほどないこともマイナス要素である。ニッサンのステージアと比較すると荷室の有効スペースは狭い。最近のステーションワゴンはボディスタイル優先により荷室がそれほど広くないのが流行りのようだが、道具としてとことん使いたい人にはブリットはあまり薦められない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2リッターの「1G-FE」ユニットは、充分な力の持ち主だ。1550kgのボディに160psの最高出力と20.4mkgの最大トルクでは心もとないだろうと想像していたが、実際はそんなことはない。強烈なダッシュ力こそ期待できないけれど、街中でも高速道路でも過不足のない走りっぷりを示す。しかもこのエンジン、とても静かで、どこか遠くのほうで回っているなと思わせる程度。このあたりは輸入車がなかなか真似できない領域だろう。4段ATのエンジンとの相性もとてもよい。シフトショックも少なく、ジェントルに走れること請け合いである。セレクターの渋くもなく緩くもない節度感も評価したい部分だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ステアリングフィールに富んでいることが、このモデルの魅力的なところだ。とても素直な感触であり、思わず山道に向かう気にさせる。軽い2リッターエンジンのおかげに違いない。乗り心地もたいへんよい。無粋な振動や、突起を乗り越えたときの下からの突き上げはほとんどなく、しかもフラットだ。開発エンジニアによれば、2リッターの2WDモデルがブリットのなかでは一番ハンドリングがいいということだが、この4WD仕様もなかなかの実力派である。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:CG編集局長 阪 和明
テスト日:2002年2月18日から19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:714km
タイヤ:(前)205/55ZR16(後)同じ(いずれもYOKOHAM ADVAN A-460)
オプション装備:SRSサイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグ(8.0万円)/DVDボイスナビゲーション+TV+EMV(エレクトロマルチビジョン)(27.0万円)/インダッシュCDチェンジャー+MD一体AM/FMマルチチューナー付きラジオ+6スピーカー(4.2万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:134.8km
使用燃料:16.5リッター
参考燃費:8.2km/リッター

阪 和明
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。