トヨタ・アリオン A18 Gパッケージ(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アリオン A18 Gパッケージ(4AT) 2002.04.02 試乗記 ……221.4万円 総合評価……★★★志は立派
トヨタの新型5ナンバーセダン「アリオン」は、「カリーナ」の後継モデルである。小さすぎず大きすぎず、適度なサイズの3ボックスセダンという位置付けは、“旧姓”であるカリーナと同じであり、全体の完成度はまずまず高い。動力性能、操縦性、居住性のそれぞれが平均点のクルマといえるだろう。かなり真面目に作られているだけでなく、新しい時代に相応しい“提案型のセダン”だとトヨタは主張しているように見える。見かけは3ボックスセダンであるにしても、シートのアレンジによってミニバンのような室内空間を作りだせるのがウリだ。もちろん、新しい試みは大歓迎である。ただ、実用的なセダンとしての本質的な機能が充実して、はじめて新しい試みが生きてくるのは確かであり、このアリオンは同じトヨタの「ビスタ」に比較すると、基本機能において劣っている部分がなくもない。志は立派だが、やや力及ばず。中途半端な印象が拭い切れないのも確かだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
プレミオ/アリオンは、2001年12月25日から販売が開始されたトヨタのミディアムセダン。プレミオはコロナ、アリオンはカリーナの後継モデルとなる。グリル上下やドアハンドル、細いモールなどにメッキ調の“光りモノ”を使用したのがプレミオ。アリオンはボディ同色となる。5ナンバー枠内のサイズながら、長いホイールベースによる広いキャビンと豊富なシートアレンジを実現。特にリアシートは、荷室との隔壁をなくすことで、背もたれを大きく後にリクライニングできるようになった。エンジンは、いずれも1.5、1.8、2リッターの3種類。FFのほか、1.8リッターモデルには4WDも用意される。
(グレード概要)
アリオンは排気量によって小さい順に「A15」「A18」「A20」と分けられる。「A18」にのみ設定される“Gパッケージ”は、オプティトロンメーター(発光メーター)や、「ラグジュアリー」ファブリックのシート表皮などを標準装備する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
きちんと作られている感じである。インパネのシボの入れ方ひとつとっても安っぽい印象はない。オプション設定であるがDVDカーナビのディスプレイの収まりもよく、インストルメントパネルのデザインは総じて悪くない。メーターの視認性も高く、またトヨタ車の例にもれずスイッチ、レバー類の操作性も問題なし。
(前席)……★★
アイポイントはやや高めで前方視界は良好である。ヘッドクリアランスも充分以上であり、開放感はなかなかのものだ。前席唯一の不満はシートクッションが小ぶりなこと。アリオンはフロントシートのシートバックを寝かすことにより“フルフラット”状態(その昔いすゞのフローリアンがそうだった)になるのだが、それを実現するためにシートクッションの前後長が削られているように思う。
また、ドライバーズシートからの斜め後方視界にも不満が残る。リアクォーターピラーまわりのデザインを優先している弊害だろう。テスト車に備わっているオプション装備の天井ビルトイン式空気清浄器「エアピュリファイヤー」は、せっかくの解放感を損なっている。換気の面だけを考えると、チルト式スライディングルーフを選ぶほうが賢いだろう。
(後席)……★★
2700mmという長いホイールベースのおかげで、後席の足元は広々している。膝とフロントシート背もたれの間には横にしたコブシが3個入るだけの余裕があり、全長4550mmのセダンとしては文句のない空間を実現している。けれど天井と頭の隙間はミニマム。髪の毛が天井に触れる人がいるかもしれない。リアシートのシートバックも後ろに倒すことができ、上述のフルフラットシートとの組み合わせで、さぞかし快適だろうと思われるだろうが、実際にリクライニングさせたリアシートに座ってみると、それほど心地よくない。シートバックを寝かせても、傾かずに残った部分が肩に干渉してしまい、くつろげないのが辛い。少なくとも大人の男性には幅が充分確保されていないのだ。
(荷室)……★★★
容量は充分、トランクリッドもバンパーレベルから開くので使い勝手はよい。トランクスルータイプであることも利点で、長尺物や少々嵩のある荷物でも飲み込んでしまうスペースがある。リアのシートバックも6:4分割式に畳めるので、「3人+荷物」という使い方もできるのが嬉しい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1.8リッターの4気筒ユニットはリミットの6400rpmまでスムーズに吹け上がり、かつ低中速トルクもそこそこ豊かで、街中でも高速道路でも不足のない動力性能を有している。この4気筒、なにより嬉しいのは静粛なことだ。たとえばDレンジでエンジン回転数がたかだか2400rpmの100km/h巡航はじつに静かであり、4000rpmあたりまで回してもうるさいと思うことはない。電子制御4段AT(Super ETC)との相性もよく、変速はとても滑らかだ。発進時のクルマの動き出しも鋭い。
(乗り心地+ハンドリンング)……★★
街中では少々硬めの乗り心地だが、けっして不快には感じない。しかし、東京の首都高速を走ってみると、ピッチングが発生し乗り心地はフラットではなくなるのが残念だ。サスペンションは中速以上のコーナーで落ち着きがなく、ステアリングも中立付近があいまいな感覚だから、正直なところ長距離を走りたいとは思わない。ボディのサイズは違うが、同じ1.8リッターのセダンであるフォード「フォーカス」と乗り比べてみると、接地感やステアリングのしっかり感といった点で、アリオンはまだまだと感じる。街中だけで乗れば、静かでいいクルマなんだが……。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:阪和明(CG編集局長)
テスト日:2002年2月4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)185/70/R14 88S(後)同じ(いずれもTOYO J43)
オプション装備:マルチリフレクターヘッドランプ(ディスチャージ)4.5万円/DVDボイスナビ付きワイドマルチAVステーション&バックガイドモニター(29.9万円)/音声案内クリアランスソナー(4.0万円)/エアピュリファイヤー(空気清浄機)(2.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:--
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

阪 和明
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。