スズキ・ワゴンR FM(4AT)【ブリーフテスト】
スズキ・ワゴンR FM(4AT) 2001.11.08 試乗記 ……108.0万円 総合評価……★★★★90年代の記念碑
1990年代後半の日本小型車に最も影響を与えたクルマ。いまは亡きセルボモードをベースに初代が登場したのが93年。“背が高い小型車”というコンセプトは決して目新しいモノではなかったが、既存のコンポーネンツを上手に活用しつつイチから使いやすさを追求したところが、いかにも庶民のアシを知り尽くした、そして商売上手なスズキならでは。広い車内はむろんのこと、乗降性に考慮した高めの着座位置、豊富な物入れ、街なかで使いやすいドライブトレインと、シビアな消費者はワゴンRのメリットを見逃さなかった。
98年の軽自動車企画改定に合わせ2代目がデビュー。テスト車の「FM」は、プレーンな外観に、装備を充実させた売れ筋モデル。エアコン、ラジオ付きカセットステレオ、パワーウィンドウ&ドアロック、キーレスエントリーと、“買い物グルマ”新基準車としての内容は十分。そのうえ助手席下のバケツ(助手席シートアンダーボックス)をはじめ、グローブボックス、インパネアンダートレイ、インパネボックス、カードホルダー、コンソールポケット、運転席シートアンダートレイと、“おばあちゃんの知恵“的収納スペースの多さにオドロク。後発ライバル車を引き離すための執念、を感じないでもない。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1993年にデビュー。当初5000台と控え目な目標販売台数を設定したが、たちまちトヨタ・カローラシリーズに匹敵する大ヒットになり、スズキを支える太い柱となった。98年の軽自動車規格改定で2代目に進化し、現在に至る。モデルチェンジ後も、初代同様、運転席側1枚、助手席側2枚の1+2ドア+テールゲートの非対称ボディと5ドアボディが用意されたが、2000年5月に「1+2」版の生産は終了した。現在は5ドアのみ。2000年のマイナーチェンジでは排出ガス浄化性能、衝突安全性能の向上などが行なわれた。エンジンは全車3気筒で、DOHC自然吸気、SOHCターボ、DOHCターボの3種類。ベーシックな「ワゴンR」、レトロ調「ワゴンR C2」、スポーティな「ワゴンR RR」に大きくわかれる。なお、2001年5月8日に、ワゴンRシリーズは発売開始7年8カ月で、国内累計販売台数150万台を達成した。
(グレード概要)
ワゴンRは、廉価版「FM-G」、ベーシックな「FM」、装備を奢ったシングルカムターボモデル「FM-Tリミテッド」に大別され、また、空力パーツを付けた「エアロ」が「FM」と「FM-Tリミテッド」に用意される。FMは、5MT、4AT、コラム式4AT、CVT とすべてのトランスミッションを揃えた中核グレード。駆動方式もFFと4WDがある。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
樹脂類、インパネまわりの素材感は値段相応だが、迷う余地のないスイッチ類、豊富な物入れと、機能に徹したつくりが好ましい。特にグローブボックス下のアンダートレイは、深く、大きく、使いやすい。コンビニのビニール袋をかけるためだろう、インパネフックが備わる。
(前席)……★★
コラムシフト、足踏み式パーキングブレーキの採用によって、すっきりした足もと。前席左右間の移動が楽なのがウリ。フロントシートは、フルフラット時の寝やすさに配慮したのか、ヒトが座るところが微妙に窪んだベンチ風の形態。座り心地は、形状が平板なうえクッションが薄く、いまひとつ。貧弱なヘッドレストも気になる。
(後席)……★★★
背の高さ、四角いスタイルを活かして、リアシートのスペースは実用十分。フロアが前席より一段高いため、着座位置も高く設定される。背もたれ後のロックレバーを引いてバックレストを前に倒すと、座面も連動してスライドし、ほぼフラットな荷室が出現する。しかもヘッドレストは、最大限高くするとお辞儀するので、抜き取らないですむ。凝った仕組みだ。ただし座り心地は前席同様である。
(荷室)……★★★
奥行き60cm、床面最大幅100cm、天井までの高さ105cm。ボディサイズ相応の大きさだが、日常ユースには十分だろう。後席をダブルフォールディングしたり、さらにフロント助手席側を倒すことによって(シートバックトレーになる)、ラゲッジスペースの拡大が可能だ。2本のダンパーで支えられたバックドアは、開閉しやすい。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
0.66リッター直3という「軽」スタンダードなエンジン。VVT(可変バルブタイミング)を搭載、吸気側のバルブタイミングをコントロールする実用ユニットだ。54ps/6500rpmの最高出力、6.4kgm/3500rpmの最大トルクと、街なかではじゅうぶんなアウトプットを発生する。4段ATのシフトスケジュールも妥当だが、マニュアルで操作しようとすると、コラムシフトの節度感が足りない。なお、走行ノイズの室内侵入もよく抑えられるが、さすがに100km/hに迫るとウルサクなる。80km/h巡航が気にならないヒトに。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
スタビライザーが備わらないため、ときに横方向にゆらめく。一方、垂直方向の入力、つまり路面から突き上げは上手にいなすので、継ぎ目の多い首都高速道路でもフェアな乗り心地を維持する。ステアリングのパワーアシストが強くフロントの接地感は希薄だが、それはクルマの性格からだろう。たとえば日々の買い物に便利なよう、細かい道筋で苦労しないよう、考慮されている。「軽」とはいえ、乗り心地、ハンドリングともに安っぽさ、破綻がない。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年5月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:5459km
タイヤ:(前)155/65R13 73S/(後)同じ(ファルケン Sincera SN-651)
オプション装備:−−
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:260.7km
使用燃料:23.5リッター
参考燃費:11.1km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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