スズキMRワゴン Xナビパッケージ (2WD/4AT)/ターボT(2WD/4AT)【試乗記】
「見てヨシ、乗ってヨシ」の一台 2001.12.18 試乗記 スズキMRワゴン Xナビパッケージ (FF/4AT)/ターボT(FF/4AT)……130.4万円/127.9万円 2001年11月16日デビューの「MRワゴン」は、モノフォルムデザインを持つスズキの新型軽自動車。2001年12月11日から13日に行われた試乗会にて、ナビゲーション搭載の「X ナビパッケージ」と、中低速トルクに重点をおいた「Nターボ」エンジン搭載の「ターボT(2WD)」に、自動車ジャーナリスト河村康彦が試乗した。「ワゴンR」の骨格ベース
「スズキ・MRワゴン」の“MR”とは「ひょっとしてミドシップのこと!?」と、そんな連想をしてしまったアナタは聡明だ。今から2年前、1999年の東京モーターショーに今回デビューのモデルとほとんど変わらない姿で参考出品をされていた元祖「MRワゴン」は、確かにミドシップレイアウトを採用していた。
けれども、今回市販されたモデルは、ごくごくオーソドックスなFFレイアウトを採用(ヨンクもある)。それもそのはず、多くのライバル軽自動車同様、可能な限り低価格での販売を第一としたMRワゴンは、同社のスーパーヒット作「ワゴンR」の骨格をベースに誕生したからである。
“名前だけがミドシップ”のMRワゴンは、剥きたてのゆでたまごのような、ツルンとしたワンモーションのフォルムが特徴だ。強くスラントした極端に短いボンネットは、ほとんどそのままのラインをAピラーとフロントガラスに受け継がせながら、ルーフ最上部へとスムーズに繋がって行く。ミニバンのようなフロントドアの形状とAピラー基部の三角窓は、こうしたMRワゴンならではのプロポーションを実現にするために出現したもの。ちなみに、フロントシートとステアリングホイール/ペダル類の位置関係は、「ワゴンRのそれからまったく変わっていない」という。ただし、後席レッグスペースはワゴンRより広い。しかも、ワゴンRでは実現できなかった後席スライド機構で最後端の位置を選択すれば、そこでは2リッター級セダンも真っ青なほど、余裕に溢れたレッグスペースが出現する。
しなやかで上質な乗り味
NAエンジン搭載モデルの加速感は、率直なところ物足りなさが残る。耐衝突を考えてボディ骨格が強化され、800kgを越える昨今の軽自動車には、0.66リッターの自然吸気エンジンはどうにも排気量不足である。
一方、ターボ付きモデルは、さすがにグンと力強く走ってくれる。こちらであれば、先頃合法的に認められた高速道路での100km/hクルージングも、まったく問題ないという印象だ。ただしこちらの場合、ひとたびスタートをしてしまえば「常にターボブーストのお世話になりながら走り続ける」という感が強い。カタログデータ上はともかく、このクルマでは「ホンダ・フィット」や「トヨタ・ヴィッツ」など、低燃費が売り物の小型車の実用燃費を凌ぐことは、かなり難しいだろう。
予想以上に好印象だったのは乗り心地だ。メカニズム的にはワゴンRのそれがベースという足回りを採用したというが、時には「しなやか」というフレーズすら使いたくなる“良く動くサスペンション”によって、走りだした瞬間からコツコツと不快なフィットなどより、はるかに上質な乗り味を提供してくれる。
というわけで、三菱「eKワゴン」やダイハツ「MAX」など、ニューモデルひしめく激戦区に投入されたブランニューモデル、MRワゴンは、「見てヨシ、乗ってヨシ」の一台。唯一最大の欠点は、前方に太く存在するAピラーが、実用車としては大き過ぎる死角を生み出してしまうこと。
(文=河村康彦/写真=難波ケンジ/2001年12月)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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