ルノー・ヴェルサティス(5AT)【海外試乗記】
シューッと軽く回っていく 2002.02.06 試乗記 ルノー・ヴェルサティス(5AT)“異文化”を意味する名を持つ「ルノー・ヴェルサティス」は「サフラン」に代わる、5ドアハッチのフラッグシップ。2002年1月、フランスの首都パリで開催された国際試乗会にて、自動車ジャーナリスト笹目二朗がテストドライブ!
日産との共同作業
「ルノー・ヴェルサティス」は、「サフラン」に代わるルノーの旗艦として、2001年のジュネーブショーでデビューした。その後IAAフランクフルトショーで量産型がお目見えして、いよいよ販売体制に入ったと思われ、2002年1月にパリでプレス試乗会の運びとなった。といっても日本にやってくるのは、2003年といわれる。
ヴェルサティスは日産とのアライアンスが始まってから、最初の具体的な共同作業といえる。エンジンは「スカイライン」や「エルグランド」でお馴染み、VQ型の3.5リッターV6エンジン(245ps/6000rpm、33.6kgm/3600rpm)を搭載する。他にいすゞ製の3リッターV6ディーゼル(180ps/4400rpm、36.4kgm/1800rpm)、自社製2リッター直4ガソリン(165ps/5000rpm、26.0kgm/2000rpm)と、2.2リッターディーゼル(150ps/4000rpm、33.3kgm/1750rpm)が用意される。試乗車は、3リッターディーゼルと3.5リッターガソリンで、ギアボックスはすべて5AT(アイシン製)だった。最初からATが設定されているので、案外日本へやってくるのは早まるかもしれない。ちなみに4気筒は5MTと組み合わされるようだ。
フランスでの価格は、2万2000から4万6000ユーロ(2002年2月5日現在、約190万円〜398万円)と幅がある。ユニークな2ドアクーペ「アヴァンタイム」が、現地で約4万ユーロ(同時期、約346万円)といわれるから、ルノーで一番高価格な乗用車ということになる。
このE1(ラグジュアリーカー)セグメントには、「メルセデス・ベンツEクラス」「BMW 5シリーズ」「アウディA6」「プジョー607」などがあり、ルノーもそう簡単に空席を見つけることができるとは思っていないらしいが、2003年のヨーロッパ市場で、このクラスのシェア3%をとることが、さしあたっての目標という。
ルノー伝統のハッチバック
V6エンジンを横置きにして前輪を駆動する方式は、「エスパス」やアヴァンタイムですでに採用済みだ。ルノー独特と言えるのは駆動方式よりボディ形態で、このクラスにしてハッチバック形式を採る。全長4860mmに対して、ホイールベース2840mmと長く、全高は1577mmと異例の高さを誇り、モノスペース的な室内空間をもつパッケージデザインがユニークだ。フラッグシップにしてハッチバックにしたのは、「R16」以来の伝統と言えなくもない。
タイヤサイズは、7Jリムに225/55R17か245/45R18が用意される。大きめのホイールは、背高ノッポデザインの外観を引き締めるだけでなく、高くなる重心高に対して、ロールセンター高も高く引き上げ、操縦安定性を確保する意味も含まれる。235km/hの最高速度をもつ高性能車にとって、高速安定性の確保はなまじっかな対処では追いつかないが、すでにFFエスパスでの実績もあり、ルノーは完全に大型FF車の操縦安定性に関するノウハウをつかんだようだ。
外観からも想像されるとおり、室内は広々としている。特にルーフの高さは印象的で、乗り降りもしやすい。シートは座面が高めにセットされており、その下に前後共収納スペースをもつ。デフのないリアフロアは、特に後席において平らな床が応接間を思わせ、靴の先をシートの下に潜らせるような感覚はない。
プロップシャフトやデフ、ドライブシャフトといった回転物がなく、サスペンションも駆動系まで賄う容量を必要としないから、動きが軽やかで、そうした音や振動にまつわる役目からも解放され、FF方式の利点を生かした静粛で快適な空間が実現されている。リアシートでの恩恵が大きい。
ワインディングが得意
日産製V6エンジンは静粛にしてパワフル。1.7トンの巨体ながら、0-400mを16.5秒、0-1000mを29.0秒でこなす。パリ市内での活発さもさることながら、高速道路でのクルーズは一層静粛にして優雅な振る舞いを見せた。長いホイールベースはピッチング的な動きを排除、ゆったりとした動きのなかにも、車体は常にフラットな姿勢を崩さず、剛性高いボディはバネ下からの入力をガシッと押さえつける。どちらかと言えば、17インチタイヤの方が当たりはソフトだが、18インチ45タイヤでさえ、通常意識されるゴツゴツした突き上げとは無縁だ。この辺の乗り心地の快適さは、日頃ドイツ製大型車に馴染んだ人には、夢のように感じられるだろう。
ヴェルサティスはドライバーズカーであるから、屈折する田舎道も得意だ。ほとんどロールしないまま軽快にコーナーを駆け抜ける。ただしミラー幅で2mを超える、1860mmの車幅はちょっと広すぎて、トラックなどとのすれ違いには気をつかった。
ノーズはまったく見えないが、前方視界は良好でノーズの存在を意識させない。これも電動シートのハイトコントロールを一番上まで上げれば、なんとかボンネット稜線と路面を確認できる。ちなみに回転半径は5.65mで、サイズの割りには小回りが利くというべきだろう。ヴェルサティスがもっとも得意とするステージは、フランスの国道によくある130〜140km/hくらいでシューッと軽く回っていくワインディングロードだ。
(文=笹目二朗/写真=ルノージャポン/2002年2月)

笹目 二朗
-
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】 2026.6.3 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ編
2026.6.5webCG Movies三菱の軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」が多くの人に支持される理由は、個性的なルックスだけなのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが、人気の秘密に迫る。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.6.5試乗記「ホンダ・インサイト」が電気自動車(BEV)として復活! ……というよりは中国工場製BEVにその名が与えられて日本にやってきた。さまざまな事情により、国内で販売されるのはわずか3000台のみ。日本人は“限定”に弱いとされるが、果たしてこの場合はどうか。 -
NEW
KTM 990 RC R(6MT)
2026.6.5JAIA輸入二輪車試乗会2026今年も開催された「JAIA輸入二輪車試乗会」より、魅惑のバイクを一挙紹介! 先陣を切るのは、この4月に発売されたばかりの「KTM 990 RC R」だ。オーストリアの雄が放つ最新鋭のスーパースポーツは、意外や“速さ”以外にも見どころの多い一台だった。 -
NEW
空冷の「スポーツスター」が復活!? ハーレーダビッドソンの定番商品はどんなバイクとなるのか
2026.6.5デイリーコラムハーレーダビッドソンが、一度は廃止した空冷の「スポーツスター」の復活を発表! 伝統の一台はなぜ絶版の憂き目にあい、そしてよみがえることとなったのか? ファンに愛される定番車種を刷新する難しさと、新型に課せられた使命、そして課題を考察した。 -
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。
































