フォルクスワーゲン ルポ コンフォートパッケージ(4AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ルポ コンフォートパッケージ(4AT) 2002.07.03 試乗記 ……159.9万円 総合評価……★★★★価格を思い出させない
フォルクスワーゲンブランドの底辺を支えるルポは、小さなボディに(日本では)「1.4リッターエンジン+4段AT」を組み込み、クルマとして必要な機能と装備は十分に備える。パッケージングに優れ、室内空間は広くて使いやすい。価格を思い出させない、しっかりしたつくりだ。ただ、トランスミッションが4段ATのみ。という車種設定には疑問が残る。ヨーロッパで売られる、スポーツ版「GTI」と、そうではない普通のモデルのマニュアル車の設定を強く望む。そうすれば、ルポの魅力は倍加するだろう。販売台数はともかく。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年にデビューした、フォルクスワーゲンのボトムレンジを担う3ドアハッチ。2001年7月10日から日本に輸入されるのは、「1.4リッター直4+4AT」というコンベンショナルなモデルである。
トヨタ「ヴィッツ」よりひとまわり小さいボディに、1.4リッターのオールアルミツインカム16バルブエンジン(75ps/5000rpm、12.8kgm/3800rpm)を載せる。もちろんガソリンユニット。ロックアップ機構をもつ4段ATを介して前輪を駆動する。
(グレード概要)
ベーシックな「ルポ」が149.9万円。パワーウィンドウ、センターロック、スピーカー付きの、AM/FM MDデッキを備えた「ルポ コンフォートパッケージ」が10万円高の159.9万円。戦略的なプライスタグが付けられた。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
プレーンで機能的なデザインのインパネとダッシュボードは魅力的だ。使いやすいうえに、大人の男が乗っても気恥ずかしくならない。妙にファンシーな造形に流れがちな日本車には、大いに見ならってもらいたい。各部の操作感覚なども確実で、価格を思い出させない。
(前席)……★★★★★
前席のパッケージングは秀逸。Aピラーを寝かせず、メーターナセルを無意味に大きくせず、物理的にも心理的にもドライバー周辺の空間を拡大することに成功している。また、シートが分不相応なほど(?)立派なのも頼もしい。自然と正しいポジションがとれるので、長距離走行での疲労も少ないだろう。
(後席)……★★★★
前席同様、リアシートも手抜きのない立派なもの。いちおう大人5人乗りだが、サイズ的に4人がちょうどだろう。前席と同じヘッドレストが3人分備わる。ルポはひとり、ないしふたり乗車のシティユースがベストの使い方だろうが、いざ5人乗っての長旅にも応えられることを、あらゆる部分でアピールしている。こういうクルマは頼もしい。
(荷室)……★★★★
ボディサイズを考えれば必要最小限のスペースしかないが、リアゲートとリアシート背面が寝ていないので、縦方向いっぱいに大きなものを収納できる。また、背面をすこし倒しておけば、車外から荷室内をちょうど隠せるので便利だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
コンパクトカーとしてほぼ完璧の仕上がりに見えるルポ最大の弱点が、エンジンとトランスミッションだ。1.4リッター直列4気筒エンジンは吹け上がり、回転落ちともスムーズさに欠ける。4段ATも変速ショックが少なくスムーズなのだが、アクセルペダルを踏んでもエンジンパワーが一瞬途切れたように感じられることがあった。ある特定のギア、回転数、速度などと関連していると思われる。燃調プログラムの問題か? テスト中に特定することはできなかったが、数回その症状に見舞われた。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ボディが小さく軽い分、ハンドリングは軽快。しかも、速度を上げても不安感はなく、安定している。乗り心地も適度に落ち着きがあり、日本車にありがちな軽薄さは感じられない。ただ、路面の凹凸を乗り越えたあとの上下動が一発で収まらず、ピョコピョコすることがあった。タイヤとダンパーに、日本の道路事情に合わせた改良の余地がある。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2002年5月17日〜20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:2134km
タイヤ:(前)185/55 R14(後)同じ
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(2):山岳路(2)
テスト距離:199.6km
使用燃料:20.4リッター
参考燃費:9.8km/リッター