フォルクスワーゲン・ルポGTI(6MT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ルポGTI(6MT) 2003.05.03 試乗記 ……216.0万円 総合評価……★★★★
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犬派
日本における「ルポGTIカップ」開催を記念して(?)リリースされたルポの「1.6リッター+6MT」モデル。ワンメイクレース用カップカーのベース車、というか公道版だ(ロールケージを入れてもレースには出られない)。
テイルのデュアルエグゾーストパイプを後続車に見せつけるのを楽しみに赤いGTIに乗り込むと、各部にむき出しの赤い鉄板、赤いステッチ、うれしはずかしの赤いシートベルト、そしてサポートのしっかりしたバケット調シート。レーシィな演出いっぱい。
ちょっと遠めのシフトレバーに興が削がれるが、それはともかく、クラッチをミートして走りはじめれば弾けんばかりの出足。ワーゲンらしく、低回転域からグイグイ走る。
峠では、舵角通りキッチリ“曲がり”をこなし、思い通りのラインを描き、溜飲下がる。ホットハッチの面目躍如。ただタイヤ、少々がんばり過ぎちゃったかな。
お転婆なフレンチハッチと比較すると、グッと正当派。トリッキーな挙動でドライバーをからかうようなところがない。犬派か猫派かといえば、犬派だ。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年にデビューした、フォルクスワーゲンのボトムレンジを担う3ドアハッチ。翌99年に登場した、1.2リッター3気筒ディーゼル搭載のいわゆる「3リッターカー」(100kmを3リッターの燃料で走る)は大いに話題になった。
日本での販売開始は、2001年7月10日から。「1.4リッター直4+4AT」というコンベンショナルなモデルが輸入され、装備によってベーシックな「ルポ」と上級版「ルポ コンフォート」がある。
テスト車の「GTI」は、2003年5月10日から、当面500台を目標に売られるスペシャルモデル。
(グレード概要)
GTIは、1.6リッター(125ps、15.5kgm)に6段MTを組み合わせたホットモデル。さらに、ボンネット、ドア、フェンダーをアルミ化して軽量化を図った本格派だ。フロントハニカムメッシュグリル、ルーフスポイラー、デュアルエグゾーストパイプが、外観上の特徴。「ブラック」「トルネードレッド」「リフレックスシルバーメタリック」の3色が用意される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
一目でフォルクスワーゲンとわかる、キッチリしたインパネまわり。全体に黒基調で素っ気ないが、樹脂、ゴム、ファブリックといった異なる素材間でも上手に色調を合わせ、パーツ間の組み合わせも精緻でスキがない。質感高し。ただし、メーターナセルの先端がツヤありプラスチックになっているのはいかがなものか。日本市場では、ナビゲーションシステムがそぐわない、という問題があるかも。細いリムの革巻きステアリングホイールには、赤いステッチが入れられる。
(前席)……★★★★
これまた、ひと座りでフォルクスワーゲンとわかる、無愛想に硬めのシート。スポーティグレードらしく、座面、背面とも、サイドサポートは十分。ガッシリつくられており、コーナリング時にしっかりドライバーの上体をホールドする。グレーの、ドイツっぽいシート地には、やはり赤いステッチが入り、スペシャルモデルを主張する。運転席、助手席とも、座面サイドのレバーを上下することで、シート全体の角度を調整することが可能だ。
(後席)……★★★
ルポの乗車定員は4名、つまり、ふたり用のリアシート。ボクシィなボディスタイルが奏効して、車両寸法からは意外なほど、実用的なスペースをもつ。フロントより高めの着座位置、立ち気味のシートバックで、乗員に“よい姿勢”を取らせ、膝前スペースも確保する。もちろん、3点式シートベルトを装備。前席背もたれ横のレバーを上にあげれば、前席がシートごと前へ跳ねるので、乗降性もほどほど。
(荷室)……★★
明らかに荷物より(後席)乗員を重視したスペース配分ゆえ、ルポのラゲッジルームはミニマムだ。床面最大幅は108cmだが、ストラットに手前左右を削られて、実質の荷室幅は95cm。奥行き50cm。パーセルシェルフまでの高さ50cm。荷車として使いたい場合は、分割可倒式のリアシートを倒すしかない。リアシートのヘッドレストを外せば、座面を前に折り、シートバックを前に倒すダブルフォールディングが可能。1m前後のモノまで、収納できそうだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
3000rpm以下でも実用じゅうぶん、もりもりトルキーな直4ツインカムユニット。街なかでも、1.6とは思わせない、力強い走りを披露する。速いゾ! そのぶん(?)、タコメーターの針が右半分に入ると、つまり4000rpm以上になると、回転フィールは苦しげに。スペック上のピークパワー発生回転数は6500rpmなれど、5000rpmより先は回してもあまり甲斐がない。
ジマンの6段MTは、無機質、無抵抗に、ギアレバーがゲイトに入る。シフトトラベルが短いのはいいのだが、レバーそのものがステアリングホイールから遠いのが残念。シフト操作のたびに、ちょっと間が抜ける感じ。ギアはクロースしていて、ロウで60km/h、セカンドで90km/h、サードで130km/h、またトップギアでの100km/h巡航は、約3000rpmだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
15インチの“ヨンゴー”タイヤなれど、不快なハーシュはよく抑えられ、キリッとしまった乗り心地。当たり前だが、普通に街乗りに使える。ただし、ハイスピードクルージングに移ると、ショートホイールベースの限界か、路面によっては前後にヒョコヒョコ揺れるピッチングが顔を出す。
ハンドリングは痛快、軽快。ステアリングホイールの操作通り小柄なボディがヴィヴィッドに反応し、容易に、素直に、スポーツドライブが楽しめる。とはいえ、挙動があくまで安定サイドに振られるのが、いかにもフォルクスワーゲンのハッチバックだ。
(写真=峰 昌宏)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年4月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:6299km
タイヤ:(前)205/45R15 81V(後)同じ(いずれもDUNLOP SP SPORT2000E)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:372.6km
使用燃料:40.7リッター
参考燃費:9.2km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。