スバル・レガシィB4 2.0GT DIT(4WD/CVT)【試乗記】
旅に誘うクルマ 2012.05.24 試乗記 スバル・レガシィB4 2.0GT DIT(4WD/CVT)……407万4000円
スバルの基幹車種「レガシィ」シリーズがマイナーチェンジ。注目の新ターボエンジンを搭載するハイパフォーマンスモデル「2.0GT DIT」の走りを試した。
新ボクサーストーリー始まる
今、スバルのエンジンラインナップは、かなりにぎやかなことになっている。一口に水平対向4気筒といっても、ロングストローク型のFBユニットがあり、「BRZ」に載って登場したばかりのスクエア型FAユニットがあり、さらにはおなじみオーバースクエア(ショートストローク)型のEJユニットも残っていて、次世代への過渡期ともいうべき状況だ。
その中でも、おそらくは“スバリスト”たちの注目を一身に集めているのが、2012年5月に「レガシィB4」および「レガシィ ツーリングワゴン」に新設された「2.0GT DIT」グレード、その心臓部たるFA20のターボユニットだろう。
BRZなどに搭載されるFA20自然吸気ユニットには、トヨタの技術であるD-4S(筒内直接噴射とポート噴射を併用)が用いられている。しかし、レガシィ・シリーズ用では、スバル独自の直噴システム(筒内直接噴射のみ)に改められており、これを新設計のツインスクロールターボで“ドーピング”して、300psと40.8kgmという「WRX STI」に迫るピークパワーをさく裂させるのである。
さあ、いよいよ本格的に新しい“ボクサー4ストーリー”が始まった、と胸を躍らせているファンも多いだろう。しかし、胸を躍らせれば踊らせるほど、あるコトがだんだん気になってくるはずである。あるコトとは、このスーパー・レガシィにはリニアトロニックと呼ばれるCVTしか設定されないことだ。
どこまでも走りたくなる
試乗の舞台は東名高速、セダンの「レガシィB4 2.0GT DIT」で西を目指す。リニアトロニックのセレクターを「D」にして、走行モード制御のSI-DRIVEは「I」(インテリジェントモード:燃費に配慮した設定)にする。つまり、このクルマが最も“従順な”状態である。タコメーターは100km/h時に1700rpmを示し、エンジン音の室内への透過は極めて少ない。ロードノイズもよく抑えこまれている。4WDシステムは矢のような直進性を示し、グランドツアラーとして模範的な走りを見せる。
前のクルマに追いついてしまったので、さっと追い越し車線に出て、スマートにパスしようとする。しかし、果たせるかな、「I」モードのままだと、スロットルレスポンスに満足ができない。CVTに付きものの“キックダウン”のもたつきが顔を出し、ダッシュがワンテンポ遅れてしまうからだ。
そこで「S」(スポーツ)、さらにはメーカー自身が「レスポンス重視のモード」をうたう「S#」(スポーツシャープ)に切り替えて、もう一度、スロットルペダルを踏み込んでみる。すると、CVTらしさはだいぶ薄らいだ、威勢のいい“キックダウン”を示し、自然吸気のFBやFAには望めない加速を猛然と開始する。その速さは、筆者の期待どおりであった。
ピークで40.8kgm(400Nm)に達する強力なターボトルクによって、ボディーはぐわっと前方へ引っ張られ(いや、4WDのスバルの場合は「タイヤが路面を蹴飛ばし」が雰囲気だろう)、あれよあれよという間に、速度は危険な領域へと達しそうになる。しかも、さっきからの直進性は、もっとはっきりと良くなってくるように思え、一方で縮み側はしなやかに、伸び側はしっかりとしつらえられたサスペンションは、フラットな姿勢を一向に崩そうとはしない。どこまでも走って行きたくなるような日本車というのはそうないが、このクルマは例外。グランドツーリングに誘う日本車のナンバーワンである。
シャシーこそが主役
ところで、スバルというと、話はエンジンが主役になりがちだが、筆者はしなやかでシャープなシャシーがあってこそ、スバルらしさは完結すると思っている。その点においても、レガシィB4 2.0GT DITは期待どおりの出来だった。
14.5という適度に速いギア比が与えられたステアリングは、握り拳を一つぶん切り増すぐらいの少ない動きでも、すっと気持ちよく反応する。ゲイン重視でスパッとターンインに向かうような種類のハンドリングではなく、足まわりは適度なしなやかさを伴いつつ、ノーズがピッとコーナーの内側を向く、その一連の挙動がリニアで好ましい。現行型にモデルチェンジしてパワーステアリングが電動に改められたころ、ファンの間で操舵(そうだ)の違和感が話題になることもあったが、それも昔話になりつつあるように感じる。今やかなりの完成度に達している。
さらにレガシィB4 2.0GT DITは、ブレーキの素晴らしさにうならされる。この動力性能に対し、絶対的な制動力が十分であることは言うに及ばず、ブレーキペダルをわずかに緩め、踏み増す、その微妙なコントロールを明確に反映し、操作する楽しさがあるのだ。ストロークではなく踏力でコントロールするブレーキとでも言おうか。“単なるセダン”で、ここまで奥深いブレーキを持っている日本車は少ない。
本音を言えば、リニアトロニックではない、例えばMTの2.0GT DITにも乗ってみたい気はする。しかし、新しいボクサー4の歴史は始まったばかり。まずは高性能GT的なバランスを楽しむモデルとして2.0GT DITを捉えれば、いろいろなつじつまが合ってくるはずだ。と同時に、今後とんでもないモデルが背後に控えているような気がしてならない。
(文=竹下元太郎/写真=峰昌宏)

竹下 元太郎
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