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【スペック】全長×全幅×全高=3395×1475×1780mm/ホイールベース=2520mm/車重=980kg/駆動方式=FF/0.66リッター直3DOHC12バルブターボ(64ps/6000rpm、10.6kgm/2600rpm)/価格=166万円(テスト車=167万5750円/ナビ装着用スペシャルパッケージ=1万5750円)

ホンダN BOXカスタム G ターボパッケージ(FF/CVT)【試乗記】

「高い」だけのことはある 2012.04.05 試乗記 下野 康史 ホンダN BOXカスタム G ターボパッケージ(FF/CVT)
……167万5750円

ホンダ期待の新型軽乗用車「N BOX」。背丈も高けりゃ値段も高い、ターボ付きのトップグレードで、その実力を試した。
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“軽”くない仕上がり

“カスタム”は「ホンダN BOX」の上級男物バージョンだ。試乗した“G ターボパッケージ”はさらにその高性能モデル。環境スペックは75%減税から50%減税に落ちるが、ギリギリまで切り詰めたエンジンルームには新開発の658cc3気筒12バルブDOHCターボが載る。

全高1.7mを超す、いわゆるスーパーハイト・クラスの軽ワゴンは、屋根も高いが値段も高い。試乗車のFFで166万円。4WDだと178万円。純正カーナビを付けたら200万超えだ。これに対して、「アルト」や「ミラ」のような屋根も価格も低いさんチームがあり、今の軽は価格的にすっかり二重構造になっている。

しかし、重厚なドアをバフンと閉めて運転席に収まると、N BOXカスタム・ターボは「これが軽!?」的豪華さにあふれている。ドア内張りなどの内装材は、フツーのN BOXよりいちいち上等だ。ダッシュボードに目立つクロムのパーツも安っぽく見えない。AT車を運転するとき、ぼくはついついシフトレバーに手をかける癖があるのだが、このクルマのインパネシフトは作動感も触感もアウディみたいに高級だ。

左右ABピラーの4本柱が縁取る大きな前方視界は、ボクシーきわまるN BOXの大きな魅力だ。これだけ天井が高くても、「空気の重さ」を感じない。無駄に屋根が高い感じはしない。前席空間がうまくデザインされているのもN BOXの美点である。

助手席側Aピラーにはボディー左サイドの視界を補助する「ピタ駐ミラー」が付く。こういう物をカッコよく作るのもホンダらしいが、肝心のミラー鏡面が暗くて残念だ。

運転席まわりの様子。ドリンクホルダーはもちろん、ティッシュボックスが収まるグローブボックスやコンビニフックなど、豊富なユーティリティーが自慢。
運転席まわりの様子。ドリンクホルダーはもちろん、ティッシュボックスが収まるグローブボックスやコンビニフックなど、豊富なユーティリティーが自慢。 拡大
「ピタ駐ミラー」。ルームミラー(写真右側)とサイドミラー前方にある補助ミラーを合わせ鏡として使い、車体左前方の視界を確保する“技ありアイテム”である。
「ピタ駐ミラー」。ルームミラー(写真右側)とサイドミラー前方にある補助ミラーを合わせ鏡として使い、車体左前方の視界を確保する“技ありアイテム”である。 拡大
2011年12月にデビューした、「N BOX」シリーズ。全高が1700mmを超える軽の“スーパーハイトワゴン”は、ホンダとしては初の試みとなる。
2011年12月にデビューした、「N BOX」シリーズ。全高が1700mmを超える軽の“スーパーハイトワゴン”は、ホンダとしては初の試みとなる。 拡大
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走りも余裕たっぷり

興味の焦点は、最高級最高性能N BOX、「カスタム G ターボ」の“走り”だろう。
43psの自然吸気モデルと比べると、64psのこちらはひとくちに「余裕のターボ」である。980kgというヘビーウェイトのせいもあり、ドッカンターボ的速さはない。そうではなく、過給を排気量の肉づけに使って、ひとクラス上のエンジンを載せたかのような余裕を感じさせるのが、カスタム G ターボの身上だ。

発進直後のダッシュなどは、CVTがピューピュー活躍してパワーを紡ぎ出すノンターボモデルのほうがむしろ鋭く感じられた。それだけ量販モデルのノンターボが健闘しているわけだが、追い越し加速と、高速域でのパワーはやはりカスタム G ターボのひとり勝ちである。100km/h時の回転数は、3000rpmと低い。町なかでも“回さなくても走る”から、エンジンやCVTもノンターボより静かである。7段CVTとして使えるパドルシフトは専用装備だ。

さらに足まわりもひとクラス上の余裕を感じさせる。フロアパネルに薄っぺらさがないのはN BOXシリーズに共通の美点だが、このクルマはその中でも最も乗り心地がしっとりしていて高級だ。

タイヤはシリーズで唯一、15インチの165/55を履く。145/80R13のN BOXと比べると、ワインディングロードでのスタビリティーは数等上である。こういうクルマでそういうところをカッ飛ばす人もいないだろうが、もしやるならカスタム G ターボを強くお薦めする。

新開発の心臓部は、「ライフ ディーバ ターボ」に搭載された従来型ターボエンジンを最大トルクと燃費の両方で上回る。
新開発の心臓部は、「ライフ ディーバ ターボ」に搭載された従来型ターボエンジンを最大トルクと燃費の両方で上回る。 拡大
 
ホンダN BOXカスタム G ターボパッケージ(FF/CVT)【試乗記】の画像 拡大
足まわりも新設計。ロールが大きくなりがちなハイトワゴンの世界で、クラストップレベルの走りをうたう。テスト車には、シリーズ最大サイズとなる15インチアルミホイールがおごられる。
足まわりも新設計。ロールが大きくなりがちなハイトワゴンの世界で、クラストップレベルの走りをうたう。テスト車には、シリーズ最大サイズとなる15インチアルミホイールがおごられる。 拡大
荷室の容量は、50:50分割可倒式の後席を倒すことで拡大可能。開口部の床面が低いこともあり、女性でも楽にフルサイズの自転車が積めるとされる。(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
ホンダN BOXカスタム G ターボパッケージ(FF/CVT)【短評】

その名に恥じない収納力

約200kmを走り、満タン法で採った燃費は11.6km/リッターだった。別の機会に借りたN BOXの「G Lパッケージ」は13km/リッター台だったから、ハイパワーな分、燃費は落ちる。
というか、どちらも燃費で選ぶ軽ではない。なにしろ「走る空気抵抗」みたいなボディーである。燃費第一でないことは一目瞭然だ。ボディーのサイドパネルも書き割りのように平板で大きいから、横風にも弱い。スーパーハイト軽、そのへんはもちろん心して乗るべし。

そのかわり、N BOXの収容能力はクラストップである。ダイブダウンするリアシートを畳んで最大荷室にすると、27インチのロードレーサーが、立てたままかるく3台は積める。床も低いから、重くて大きいママチャリも積みやすいだろう。

軽にして、ミニバン並みの広さをうたう「N BOX」。リアシートは「フィット」などと同様、チップアップして積載スペースとすることもできる。(写真をクリックするとチップアップ時の様子が見られます)
ホンダN BOXカスタム G ターボパッケージ(FF/CVT)【短評】

一方、人が座る後席は笑っちゃうほど広い。スライド機構はないが、なくたって脚が組める。ただ、見晴らし抜群の前席と違って、リアシートは一段もぐり込んだように低い。頭上の余裕はいくらでもあるのだから、もっと座面を上げればいいのにと思うが、そうしないのはやはり重心を上げたくないからだろうか。

しかし、N BOXはホンダ渾身(こんしん)のスーパーハイト軽である。安くはないが、軽のチープさも見事にない。特にこのカスタム G ターボには、「白ナンバーをぶっとばせ」的な気迫さえ感じる。

高級感があって、運転も楽しい。さすがに高いだけのことはある。カスタムシリーズの顔は鼻をふくらませているみたいでコワイから、フツーのN BOXにもうちょっとお手頃なターボモデルをつくったらいかがでしょう。

ホンダはこの「N BOX」を皮切りに、次世代の軽ブランド「Nシリーズ」を拡大展開する予定。なお、車名の「N」には、新しい(New)、これからの(Next)、日本の(Nippon)、乗り物(Norimono)といった意味が込められているという。
ホンダN BOXカスタム G ターボパッケージ(FF/CVT)【短評】

(文=下野康史/写真=小河原認)

 

下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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