「ラインナップを下に拡大」ジャガーの新戦略
2013.03.29 自動車ニュースラインナップを下方に拡大――ジャガーの戦略をエイドリアン・ホールマーク氏に訊く
新型スポーツカーの「Fタイプ」が話題になっているジャガー。映画や音楽、あるいはフェイスブックなどのコミュニケーションツールを使って、若い層へのアピールにも余念がない。同社のグローバルブランドディレクターであるエイドリアン・ホールマーク氏にその戦略を訊いた。
■ジャガーに乗ったことのない若い層にもアピールしたい
――現在のジャガーにとって課題は何ですか?
いい商品を造ることに尽きます。われわれは現行のラインナップに満足しているわけではなく、4、5年後には、たくさんの新車を用意していますから、期待していてください。
――どんなクルマになりますか?
ラインナップを下方に拡大していく予定です。そうすることによって、これまでジャガーに乗ったことのない人にもジャガーの顧客となる機会を増やすことができます。
――ブランドを成長させるには、どうすればいいのでしょうか?
ふたつの方法があります。ひとつは、新しい技術を積極的に採用すること。もうひとつは、良き伝統を訴求すること。両方とも必要です。
――ジャガーにとっての“ブリティッシュネス”(イギリスらしさ)とは何でしょうか?
イギリスでは、ブリティッシュネスは大きな価値にはなっていません。ドイツでもポジティブではありませんね。なぜならば、ドイツ人は彼らの国の製品が優れていて、競争力があると信じているからです。反対に、中国やインドでは大変に喜ばれています。中国には、「XJ」に「ロンドン」という特別限定仕様車があるほどです。
――国や地域による違いが大きいということですね。
ええ。必ずしも効果が得られるわけではありませんから、自ら必要以上に強調することは考えていません。コミュニケーションにはマーケットごとの戦略が必要となってきます。
――モータースポーツのプランについて教えてください。
ノープランです(笑)。夢は持っています。しかし、(2000年から2004年まで参戦していた)F1はコストがとても高いし、ルマンシリーズも同じぐらい高いのです。GTシリーズはレギュレーションが不安定な上に、国や地域によってバラバラです。ただ次の2年でGTシリーズのレギュレーションが変わる予定なので、注意深く意識を払いながら取り組んでいく考えです。
――もうじきデリバリーが始まる「Fタイプ」の広告プランはどのようなものですか?
4月から納車が始まりますが、まずは古典的な広告から始めていく予定です。新聞、テレビ、雑誌、空港やビル屋上のビルボードなどです。その前には、トップクオリティーのフィルムを作りました。15分のもので、監督は『ブレードランナー』や『グラディエーター』を作ったリドリー・スコット、主演はダミアン・ルイスが務めています。広告ではなく、映画の水準に仕上がっています。ラナ・デル・レイの音楽ビデオも作りました。
――狙いはどこにあるのでしょうか?
ウェブサイトやフェイスブック、ツイッターなどのデジタルツールを用いて、100万人単位の新しい人、若くて今までジャガーのことなど考えたことのない人たちにリーチすることができます。ラナは400万人、ダミアンは300万人ものフェイスブックのフォロワーを抱えています。音楽ビデオを公開したところ、一瞬にして非常に多くのリーチがありました。今後は、こうしたフィルムをもっと作っていきたいと思っています。
(インタビューとまとめ=金子浩久/写真=ジャガー・ランドローバー)