フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/6AT)
名人の境地に 2013.09.25 試乗記 運動性能と環境性能を大幅に向上させたとうたわれる新型「ゴルフGTI」。7代目となるホットモデルの走りは、どのように進化を遂げたのか。燃費もパワーも向上
7代目「ゴルフ」に続いて、7代目の「GTI」がやってきた。当然の成り行きのようだが、鬼のようなCO2規制を進めているヨーロッパで、GTIに代表される実用車シリーズの高性能モデルが、無事ニュージェネレーションに移行できたことは、大拍手モノであると思う。
欧州の最新排ガス規制、ユーロ6に適合した新型は、燃費を旧型より18%改善し、同時に0-100km/hも6.9秒から6.5秒に向上させた。燃費と速さという二律背反の性能を、これだけの伸びシロで改善したのはすごい。
エンジンは3世代目にあたる2リッター4気筒ターボのEA888ユニット。今回は直噴+マルチポート噴射のデュアルインジェクション化など、シリンダーヘッドまわりを刷新し、最大トルクは28.6kgmから35.7kgm(=350Nm。「メルセデス・ベンツA250」とピッタリ同じ)にアップし、パワーは9psプラスの220psになった。76年に登場した初代GTIのちょうど2倍というからビックリだ。変速機はこれまでどおり6段DSGである。
高強度鋼板の採用により、サスペンションはフロントで旧型比1.6kg、リアで4.0kg軽量化された。コーナリング時の安定性とファン・トゥ・ドライブに効く電子制御デフロック“XDS”は“XDS+”に進化した。
ふだんの操縦フィールにも効きそうなところでは、プログレッシブステアリングの採用だ。これにより、フツーのゴルフで2.75回転のロック・トゥ・ロックが2.1回転に減った。
全長が65mm延びた5ドアボディーは、ひとことで言うと、すんなりした。顔の表情も含めて、 旧型のほうがインパクトがあって、イバリもきいたような気がする。
たじろぐほど速い、けれども……
「エッ……、これGTIだよな!?」。思わずそう自問したのが、新型の第一印象である。
ファーストタッチは都内の普通の道。いきなりフルスロットルでいけるサーキットやテストコースならまた違っただろうが、駐車場から出て、そこそこ混んだ大通りを走り始めるなり、そう思ったのだった。
エンジンはかけたときから静かである。暖まれば、アイドリングストップする。乗り心地は硬いどころか、むしろ軽やかだ。タイヤのゴツゴツも気にならない。ステアリングもペダル類もさわやかに軽い。ここまでのインプレッションは1.2/1.4リッターの新型ゴルフと一緒で、ふつうに走っている限り、高性能をひけらかすそぶりはまったくみせない。「誘ってくる感じ」がないのである。
0-100km/h=6.5秒だから、もちろん全開にすればスゴイ。4000rpm以上回すと、ゴルフがこんなに速くていいの!? と、たじろぐほど速い。けれども、ガソリンをガブっと飲んで、トルクで猛進する速さではなく、むしろボディーの軽さで速く走る感じだ。こういう“質”の速さなら、もっともっとというスピード中毒にならないのではないか。
100km/h時のエンジン回転数は6速トップで1800rpm。シフトパドルを引いて3速4500rpmまで落としても、エンジンはウナらない。それくらいマナーがいいので、高速道路ではアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)のお世話になった。GTIにもドライビングプロファイリング機能が付き、スイッチで運転モードが変えられる。ACC使用中に“スポーツ”を選ぶと、先行車との車間距離やそこまで詰めてゆく加速もスポーティーになる。「GTIで人についてくか!」というご批判もあろうが、こうしたドライバー支援機構の充実に踏み出したのも7代目ゴルフならではのGTIである。
ジンワリとした感動
約400kmを走って、燃費は約10km/リッター(満タン法)だった。おろして間もない試乗車の積算計はそのとき1788km。そこまでのトータル燃費は10.5km/リッターだった。
GTI初出の装備ではないが、車載燃費計のデータは、ダッシュボードの大型ディスプレイで簡単に呼び出せる。それも「スタート後」「給油後」「長期間」という3通りのスパンで知ることができる。高性能モデルにして、燃費データがこれだけ見やすいクルマもない。こんなことされた日にゃ、燃費を気にしないではおられない。
最初に内堀通りを走り始めたとき、正直言って、これじゃあんまり“GTI甲斐(がい)”がないなあと思ったのだが、数日間付き合ってみると、ジンワリとした感動を覚えた。平熱の低いこういう印象は、低CO2時代の高性能車の基本キャラクターである。パワーもあるし、速さもスゴイが、あくまでそれは“オンデマンド”。しかも、新型GTIはふだんのなめらかさや軽さが実に気持ちよく、心地いい。試乗距離を重ねるにつれて、名人の境地さえ感じた。ついに「GTI名人」か。
過去、日本でGTIが最も売れたのは、“GTI is back”と、シュワちゃんみたいなことを言って出てきたゴルフVである。4代目で単なる内外装トリムのグレード名のようになっていたGTIを再興させた世代だ。あれから8年。今度のGTIはあの5代目に乗っているオーナーなどにまずはぜひ試してもらいたい。ゴルフの進化のありようがストレートに理解できると思う。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1800×1450mm
ホイールベース:2635mm
車重:1390kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:220ps(162kW)/4500-6200rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1500-4400rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト2)
燃費:15.9km/リッター(JC08モード)
価格:369万円/テスト車=390万円
オプション装備:DCCパッケージ(21万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1788km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(4)/山岳路(3)
テスト距離:395.2km
使用燃料:39.9リッター
参考燃費:9.9km/リッター(満タン法)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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