ボルボS60 T4 R-DESIGN(FF/6AT)/V60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/6AT)
緩急自在のスカンジナビアンスポーツ 2013.10.30 試乗記 エクステリアに大きな変更を受けたばかりのボルボの「60シリーズ」に、早速スポーティーな内外装や足まわりが与えられた「R-DESIGN」グレードが加わった。その中から、1.6リッター直4ターボを搭載する「S60 T4」と、3リッター直6ターボに4WDを組み合わせた「V60 T6 AWD」を箱根で試した。大人のための“レーシング”モデル
「R-DESIGN」とはうまくネーミングしたものだ。「S」ではなく「R」なのもいい。ボルボによると、「R」には「Refinement」(洗練)の意を込めているそうだが、「Racing」のイメージを重ねてしまうのは筆者だけではないだろう。
そんなR-DESIGNは、レーシングの響きに沿う実力を秘めているものの、スパルタンなイメージは皆無だ。また、荒々しさともまったく無縁である。それらはDESIGNという言葉によって、まろやかなオブラートで包まれている。
ちまたには、レーシングカーをイメージした改造車風味の車はたくさんある。でも、それらは概して下品だ。車高を落とし、太いタイヤを見せびらかして、オーバーフェンダー風にボディーパネルまで広げてある。
それに対してR-DESIGNは、スカンジナビアンデザインの神髄ともいえる、もっとスマートで洗練されたスタイルでまとめられており、サラーッとシンプルにして嫌みがない。内装の革の使い方にしても、高級感こそあれ、無用に華美ではない。
しかし、それら目に見える部分は、ドライバーにとってあくまで「受動的なデザイン」でしかない。デザインされたものに乗せられているにすぎないからだ。そうではなく、自分の意思でつくり出す「能動的なデザイン」にするのは、ドライビングにほかならない。
一見、ノーマルのボルボとそう変わらない風体ながら、R-DESIGNの名を持つモデルはサーキットでのスポーツ走行もこのままでこなせる。また、ヒトがこない山奥や、前後に車のいない地方国道などでは、ちょっとイケナイような速度まで、瞬時に味わってみようかという気にもさせる。
R-DESIGNは、あくまでも紳士的で礼節をわきまえる人がドライビングをデザインするとお似合いのボルボである。ごく通常の世俗的な走行では、まったく平静を装っていられる。
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カタチばかりのスポーツカーは道をあける
やはりスポーツの「S」ではなく、もう一段ハードなレーシングの「R」を思わせるところに、R-DESIGNの真の狙いがありそうだ――。実際に走らせても、そういう手応えがある。だから、エンジンを積極的に回して楽しみたい向きには、1.6リッターターボの「T4」の方がオモシロイだろう。「S60 T4 R-DESIGN」は頭が軽く、挙動はより敏しょうにして軽快。カタチばかりのスポーツカーよりむしろ運転して楽しいし、キビキビ走って、実際に速い。
ゲトラクのツインクラッチ式ATは単なるマニュアルシフトができるATとはちょっと違い、クラッチペダルがないだけで感覚的にもマニュアル車と同じ。だから、回転をむやみに上げずとも上位ギアに送り込め、一方で普段は低回転で経済的な運転も可能である。
また、例えばブレーキに万が一のトラブルがあった時、最後の頼みとなるエンジンブレーキについても、筆者が個人的な基準としている「80km/h以上から2速にダウンできるかどうか」という条件を十分パスする。エンジンの高回転域における耐久性を含め、メーカーの自信というか良心のようなものを感じる。
極端な例かもしれないが、死ぬか生きるかという瀬戸際にあっては、ユーザーとしてはエンジンなど壊れたっていいから、減速してくれる方を選ぶと思う。
もっとも、技術者の立場としてはエンジンを守りたいだろうし、普段使いでの初心者によるちょっとしたミスも対象にしなければいけないのだから、量販車の措置には同情の余地があるのも事実だ。
しかし、ボルボの場合、R-DESIGNだけでなく標準的なT4モデルだってこれは同じく可能なのだから、ボルボはそうではないということも認めなければならない。
T4の出来がいいだけに、3リッター6気筒ターボの「T6」は、ここまでスペックを高める必要がないんじゃないかと思われるかもしれない。しかし、やはり乗り比べてみるとアイドリングは滑らかだし、トルクに余裕がある。高いギアポジションでクルーズしていて、スッと前に出る必要がある時など、同じギアのまま軽く踏み込んだだけでレスポンスする。一杯に踏み込んでやれば、それこそ絶対的には5リッタースポーツカーにも匹敵するような過激な領域を味わうこともできる。
「AWD」モデルは荒々しさとは無縁で、ただただ確実に4輪にトラクションを伝え、猛然とダッシュする。アシもイイ。ちゃんとストロークしてボディーはフラットな姿勢を崩さず、大きめな入力に対してもスッキリと間髪を入れず収める。これらの立ち居振る舞いもまた、Rの名前に値する。
「V60 T6 AWD R-DESIGN」は、ワゴンボディーでありながら余計なイナーシャ(慣性)の類いを残さず、ボディーとタイヤの関係において一体感のあるソリッドな動きを示し、大きなサイズを感じさせない。スッスッと反応するさまは、歌舞伎役者の機械人形的な演技にも似ている。日本舞踊のシナのような余韻はない。だから動きにヒステリシスのような無反応領域を感じさせず、ステアリングを反対方向へ切り返す操作にもスッと即応してくれる。これは、まさに意のままになる緩急自在な車である。
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感覚的にも自然なポールスター・チューン
ノーマルのS60やV60もイイ車である。しかし、R-DESIGNにはその価格に応じてチューニングされた「詰め」の部分が確実に存在する。今回の試乗車には、いずれにもボルボのモータースポーツのパートナーであるポールスター・レーシングによる「パフォーマンス・パッケージ」が組み込まれていた。
最近のターボチューンエンジンの中には、定規で引いたように真っすぐ平らな線でトルクカーブをカットしているものが多い。一般的な使用下では、ATが自動でシフトアップし、滑らかなつながりが実現されてはいるが、より微妙で繊細かつ高度な感触を求めるユーザーにとっては、多少なりとも盛り上がりというかヤマが欲しいところだろう。
エンジンを回していった時に、いきなり「台地」に突き当たるのではなく、微妙なカーブの丘が「そろそろ足を緩める時期だよ」と教えてくれる。また微小ながら、トルクの絶対値も増強されている。そんな感覚的により自然な味わいもまたポールスター・チューンの美点である。
また、特別な改良点としては挙げられていないが、サスペンション系も順当に進化している。大きなホイールやタイヤを採用し始めた初期の仕様では、バネ下の重さを十分に支えきれないような感触もあったが、いまではシッカリとした受け応えをしてくれる。低い重心高に近づけた、高めのロールセンターと広いトレッドがあいまって、ロール角を最小にとどめ、タイヤの踏面を確実に路面に押しつける接地感の良さが伝わってくる。また、ブッシュ類を固めただけでなく、アームそのものの剛性も上がったような感じだ。
それでいて単突起などによって生じるハーシュネスの処理も万全で、ゴムを変形させて“いなす”だけでなく、その後のダンピングまで収め方がうまい。この辺は、細かな詰めの部分まで開発費をかけられない量産車とは違う。ましてや、雑で大味なつくりで間に合わせた廉価車ともまったく異なる。R-DESIGNは、もともと丁寧につくられたボルボ車の中でも、さらに煮詰められたレベルにある。
車両価格は、S60 T4 R-DESIGNが464万円で、V60 T6 AWD R-DESIGNは639万円とそれなりに高価ではある。しかし、その内容を理解できる人にとってはお買い得といえる。
(文=笹目二朗/写真=小林俊樹)
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テスト車のデータ
ボルボS60 T4 R-DESIGN
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1540kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:200ps(147kW)/5750rpm
最大トルク:29.1kgm(285Nm)/2000-4250rpm
※「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」装着車
タイヤ:(前)235/40R18 95W/(後)235/40R18 95W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト3)
燃費:13.6km/リッター
価格:464万円/テスト車=554万9000円
オプション装備:電動ガラスサンルーフ(17万2000円)/自動防眩機能付きドアミラー(3万円)/ステアリングホイール・ヒーター(2万5000円)/パークアシストカメラ<リア>(6万円)/プレミアムサウンド・オーディオシステム(9万7000円)/クリスタルホワイトパール・ペイント(10万円)/ETC車載機<音声ガイダンス機能付き>(2万5000円)/セーフティー・パッケージ(20万円)/ポールスター・パフォーマンス・パッケージ(20万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1775km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(0)/高速道路(0)/山岳路(10)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
ボルボV60 T6 AWD R-DESIGN
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車重:1800kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:329ps(242kW)/5400-6500rpm
最大トルク:48.9kgm(480Nm)/3000-3600rpm
※「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」装着車
タイヤ:(前)235/40R19 96Y/(後)235/40R19 96Y(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:8.5km/リッター
価格:639万円/テスト車=707万2000円
オプション装備:電動ガラスサンルーフ(17万2000円)/ステアリングホイール・ヒーター(2万5000円)/パークアシストカメラ<リア>(6万円)/ETC車載機<音声ガイダンス機能付き>(2万5000円)/セーフティー・パッケージ(20万円)/ポールスター・パフォーマンス・パッケージ(20万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1565km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(0)/高速道路(0)/山岳路(10)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

笹目 二朗
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