第2回:ツールと同じようにクルマにもこだわりを
より充実した時間を過ごすために 2014.03.29 達人と楽しむ“車・食・遊”の世界 アウトドアのプロフェッショナルは「動けばいい、使えればいいという考えから、もう一歩踏み込んでほしい」と語った。その言葉の真意とは?バッテリーの電気でカヤックをふくらます
カヤックをエントリーするポイントに近い駐車スペースに「三菱アウトランダーPHEV」を止めて、荷室からインフレータブルタイプ(空気を入れてふくらませる構造)のカヤックを取り出す。田中ケンさんがこの日持参したのは、「SEVYLOR(セビラー)」というブランドの「SPORT SK200DS」という2人まで乗れるモデルだ。
ケンさんによれば、「安定性抜群で、構造がしっかりしているのでラフティング(急流下り)から海まで使える高性能モデル」とのことだ。
荷室の空気入れを探していたケンさんが、「おっ、ラッキー!」とひと言。荷室にAC100Vの電源コンセントを発見したのだ。
「これなら電動の空気入れが使えますよ」
荷室のほかに、電源コンセントは室内にもう1つ備わる。最高出力は1500Wなので、ホットプレートなど消費電力の大きな家電にも対応できる。「カヤックを楽しんだ後の冷え切った体に、入れたてのコーヒーなんてあったら最高ですね」とケンさん。
確かに、電源の存在はアウトドアアクティビティーをさらに盛り上げそうだ。ちなみにアウトランダーPHEVは、フル充電すると一般家庭が使う約1日分の電力を蓄えることができる。
電動の空気入れを使って楽ちんにふくらませることができたカヤックで海に出る。ケンさんのパドルさばきは見事で、カヤックは見る見る遠ざかっていく。本当に気持ちがよさそうだ。
ケンさんは、関東ならこの三浦半島か西伊豆でカヤックを楽しむことが多いとのことで、季節ごとの風が吹く方角や潮の流れなどは熟知しているという。
このカヤックはラフティングにも使うぐらいなので表面が岩に擦れても大丈夫で、万一穴が開いても3つの気室に空気が入っているので沈む心配はほとんどない。釣りに使っている人もいるとのことだ。
沖まで漕(こ)いで小さくなったケンさんの姿が、次第に大きくなってくる。カメラマンのKさんが、「やってみたいなぁ……」とボソッとつぶやく。
砂浜に上陸したケンさんが、岩場の潮だまりからビニール袋を取りだした。先ほど調達した、マグロが入っている袋だ。ケンさんは、海水につけて冷凍マグロを解凍していたのだ。
さあ、いよいよアウトドアクッキングが始まる。
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手軽だけど奥深いアウトドアクッキング
本日のメニューは、赤身を使った「マグロとアボカドのポキ」と、カマを使った「マグロのカマのガーリックハーブグリル」の二本立て。
まずは「ポキ」から。「ポキ」とは、ハワイの言葉で切り身を意味するそうだ。詳しいレシピは最後のページを参照していただくとして、ここでは簡単な手順を説明したい。
しょうゆ、ごま油、オイスターソース、トウバンジャン、砂糖、おろしニンニクでタレを作り、ここに2cm角に切ったアボカドとマグロの赤身を漬け込む。味がなじむまでクーラーボックスに入れておくとハイできあがり、という自分でもできそうなほどお手軽なメニューだ。
けれども出来上がったポキをパンにのせていただくと、甘さと辛さとさわやかさとこってりした味わいが複雑にからみあって、実に奥深い味わい。この作り方は覚えて帰りたい。
もうひとつの「マグロのカマのガーリックハーブグリル」には、ダッチオーブンを使う。ダッチオーブンについて、ケンさんこんなことをおっしゃる。
「ダッチオーブンを使ってすごく手が込んだ料理を作る方もいるけれど、僕が作るのは簡単でシンプルな料理なんですよ」
では、どのくらい簡単でシンプルかというと、びっくりするくらい簡単でシンプルだった!
まず、ケンさんはおもむろに調理用のビニール手袋をはめる。そしてマグロのカマの表面に岩塩とオリーブオイル、そしておろしニンニクをたっぷりと擦り込んだ。30分ほど味を染みこませて、ダッチオーブンに入れてローズマリーをのせる。ダッチオーブンのふたをして40分待つと、ハイできあがり。レモンを搾って口に入れると、これまたうまい!
ふっくらやわらかくて、適度な塩味といい香りがついたカマの肉は、ご飯のおかずにしてもいいし、キャンプで宿泊するのならお酒の肴(さかな)にもいい。なるほど、と思ったのが、ケンさんは炭ではなくコールマンのツーバーナーを使っていたことだ。「ガスのほうが火力が安定する」というのがその理由だ。これもメモ、メモ。
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「こだわり」が豊かな時間を与えてくれる
絶品料理をいただきながら、ケンさんがアウトドアの趣味にまつわるいろいろなお話をしてくださる。
「僕は年間250日ぐらい、海だったり山だったりのフィールドに出ているんです。大事なのは“食・住・遊”だと思っていて、遊ぶのはもちろん、おいしい物を食べて快適に過ごすことを心がけています。ただ遊ぶだけじゃなくて、食を重視することでその土地の旬の食べ物を堪能できます」
ただし、食べるだけでも面白くないというのがケンさんの意見だ。
「アウトドアを趣味にする方の中には、キャンプだけを楽しむキャンパーと呼ばれる方もいます。否定するわけではないのですが、僕はやはり体を動かした後のほうがおいしく飲み食いができると思うんですよね」
スキーでもスノーボードでもカヤックでもフィッシングでも山歩きでも、なんでもいいから「遊」を充実させて体を動かすのがケンさん流だ。
この“食・住・遊”を一度に充実させるのは、なかなかハードルが高い。そこで、ひとつずつトライしてみてはどうか、というのがビギナーの方へのケンさんからのアドバイスだ。
「例えばキャンプではなくてロッジやコテージを利用してもいいし、まずは日帰りキャンプから始めてもいい。そんなに難しく考えずに、週末に外に出て気分をリフレッシュするぐらいのところから始めてはどうでしょうか」
そしてケンさんは、やはり道具にもこだわりたいとまとめた。
「使い捨ての紙のお皿でいいとか、レンタカーでもキャンプに来られるという意見もあると思います。でも、充実した時間を過ごそうと思ったら、やはり自分の気に入った道具を使いたい。動けばいい、使えればいいという考えからもう一歩踏み込んで、自分が何を大事にしているかを考えてもいいと思います」
食事を終えると、ケンさんはあっという間にカヤックや調理器具を撤収した。その手際のよさはお見事。まさに達人だ。そしてアウトランダーPHEVの荷室に道具一式を積み込み、運転席に座った。「気に入ったクルマだったら、行き帰りも楽しめますからね」と言いながら。
(文=サトータケシ/写真=河野敦樹)
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今回のメニュー
マグロとアボカドのポキ
【材料】
マグロ 1さく(130gくらい)
アボカド 1個
しょうゆ 大さじ1 ※
ごま油 大さじ1 ※
オイスターソース 小さじ1 ※
トウバンジャン 小さじ1/2 ※
砂糖 小さじ1/2 ※
おろしにんにく 小さじ1/2 ※
万能ねぎ お好みで
【調理方法】
1.ボウルに※の調味料をあわせておく。
2.アボカドは皮をむいて種を取り、2cm角くらいの大きさに切る。マグロも2cm角くらいに切る。
3.調味料にアボカド、マグロを入れて混ぜ、味がなじむまでクーラーに。
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マグロのカマのガーリックハーブグリル
【食材】
マグロのカマ
タイム 2~3本
ローズマリー 2~3本
塩 適宜
エキストラバージンオリーブオイル 適宜
おろしにんにく 大さじ1
レモン(くし切り) 1個分
【調理方法】
1.マグロのカマを塩とオリーブオイルとニンニクでマリネし30分くらい置いておく。
2.ダッチオーブンに1を入れタイム、ローズマリーをのせる。
3.40分ほどダッチオーブンで焼き上げる。
4.焼き上がったらレモンを搾り出来上がり。

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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