「マツダCX-80」だけじゃない! いま新車でどんな“3列シートSUV”が買えるのか?
2024.09.16 デイリーコラム“安いほう”でもけっこう高い
軽自動車のスーパーハイトワゴンやコンパクト&ミドルミニバンのように“めちゃめちゃ売れている”というわけではないけれど、堅実な人気があるのが3列シートSUVだ。
例えば2023年末に生産終了した「マツダCX-8」は、約6年間のモデルライフ全体を見ると国内における年間販売台数平均が3万台を超えたのは既報のとおり(関連記事)。ニッチ市場であることを考えればそれなりの数だし、注目すべきは、この数字がなんと当初マツダが考えていた目標販売台数の“2倍以上”だということだ。考えていた以上に売れたのだから、きっと企画を立ち上げたマーケティング担当者はビックリだろうし、日本でも多くの人が考えている以上に3列シートSUVのマーケットが広がっているがゆえの結果にほかならない。
というわけで、そんなCX-8が実質的後継車である「CX-80」にバトンタッチしたいま、日本で購入できる3列シートモデルをチェックしてみよう。今回は、価格(2列仕様も3列仕様もある車種は2列仕様を除外した3列仕様だけの価格)別に並べてみようと思う。
現時点で価格が公表されていないCX-80を除くと、日本で最もリーズナブルに購入できる3列シートSUVは「日産エクストレイル」で、3列仕様の価格は427万1300円から497万2000円まで(価格は2024年9月中旬時点。以下同じ)。かつては「ホンダ・クロスロード」みたいなコンパクトな3列SUVもあったけれど、いまの国産車はすべてDセグメント以上となっている。そしてかつて初代デビュー時は「若者も気軽に買えるように」と200万円強から用意されていたエクストレイルなのに、気がつけばその倍以上のプライスとなっているのには、現行モデルになって日本仕様が全車ハイブリッド化された影響もある。
「それにしてもクルマは高くなったものだ」とつい嘆きたくなってしまう気持ちは……本コラムの趣旨とは全く関係ないから取りあえず飲み込もう。
「3列目」もさまざま
エクストレイルの次のポジションは、意外にもトヨタの「ランドルクルーザー」シリーズで、2台続けてのノミネート。「ランドクルーザー“250”」は545万円から735万円まで。「ランドクルーザー“300”」は550万円から770万円までとなっている。“250”と“300”でそれだけしか価格差がないのならば、“300”を買ったほうがいいのではないかと筆者は思うのも、ここではスルーだ。
そしてボトム価格ではランクルブラザーズよりも上を行くのが、車体骨格をエクストレイルと共用する「三菱アウトランダーPHEV」。価格は559万0200円から630万4100円までだ。どうして高いかといえば、全車がPHEV(プラグインハイブリッド)だから。国の補助金が55万円出るので実質価格はもう少し低いけれど、それにしてもけっこうな高級車である。
そして、国産の頂点に立つ3列SUVといえば「レクサスLX」。価格は1250万円からだ。
上記5台に加えて、価格未定のCX-80(うわさによると400万円弱から700万円強らしい)と「レクサスGX」(同じく800万円前後から1000万円強)を加えたのが、国産3列SUVのラインナップである。
このなかで車体が最も小さいのはエクストレイルで、全長4660mm×全幅1840mm。ちなみにアウトランダーPHEVは同4710mm×1860mmでひとまわり大きい。
いっぽうで、3列目シートの居住性でいえばナンバーワンはCX-80だ。というと「車体が大きいのだから当然だろう!」という声もあるかもしれないが、それはある程度間違いない。全長は4990mmもあって、あらためて見るとランクル“300”よりも長い。ただ、根底にあるのは「どこまで3列目を考えたパッケージングか」ということであり、CX-80は“最大限の居住性”を狙っているのに対し、ランクル系の3列目は「快適性よりも取りあえず座れることを重視」とキャラクターの違いが出ているのは実際に座ってみればなんとなく感じる。2列目の居住性も、ランクル兄弟よりCX-80のほうがいい。
意外だったのは、先日あらためて座ったアウトランダーPHEVの3列目の着座姿勢がけっこう良かったこと。ヒール段差(床と着座位置の高低差)が一般的なSUVの3列目よりも高いのだ。ハイブリッドシステムを構成するユニットを3列目下に搭載したこととの兼ね合いもあるのだろうけれど、ちょっと驚いた。ただ、そのぶん頭上がタイトだったのは事実で、パッケージングは難しいものだなとあらためて感じたりして。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
国産車以外も要チェック
では、輸入車はどうだろうか? 実はこれが、国産車以上にたくさんあるのだ。いま新車で買えるモデルを、スタート価格の低いほうから列記してみよう(3列目シートがオプション扱いのモデル含む)。
- プジョー5008(580万6000円~611万6500円)
- ジープ・コマンダー(609万円)
- メルセデス・ベンツGLB(627万円~915万円)
- メルセデス・ベンツEQB(811万円~899万円)
- ジープ・グランドチェロキーL(855万円~1060万円)
- ディフェンダー110/130(855万円~1695万8000円)
- ボルボXC90(954万円~1264万円)
- ディスカバリー(998万円~1276万円)
- キャデラックXT6(1030万円)
- アウディQ7(1042万円~1118万円)
- メルセデス・ベンツGLE(1268万円~2381万円)
- BMW X5(1198万円~1588万6000円)
- BMW X7(1390万円~1764万円)
- メルセデス・ベンツGLS(1530万円~2780万円)
- キャデラック・エスカレード(1640万円~1800万円)
- レンジローバー(2099万円~2564万円)
思い浮かぶだけでもこれくらい。ドイツにイギリスにアメリカといろんな国のSUVが入っているから日本車より多いのは当たり前といえば当たり前だけれど、こうやって調べてみると、“ベンリ”とか“コウコウリツ”なんて言葉に縁がなさそうな「レンジローバー」まで3列モデルが出ていることには驚いたりして(いつの間に?)。
そんなレンジローバーの3列目には残念ながら座ったことがないので保留として、それ以外の3列目にはすべて座ったことがある筆者が最も広いと判断するのは「キャデラック・エスカレード」の3列目。はっきりいえばこれも巨体ゆえで、5.4mの全長はやっぱりスゴいなと思う。「グランドチェロキーL」や「XT6」もまずまずだ。逆に“存在することに意味がある”的なミニマムスペースとしているのが「メルセデス・ベンツGLB」あたりで、3列目の推奨身長を「168cmまで」と割り切っているのが興味深い(EQBはさらに低く「165cmまで」)。
ところで、3列SUVの背景にあるのは、アメリカのマーケットだ。かの地ではかつてブレイクしたミニバンがすっかり下火になり、それに代わる多人数乗用車として定番となっているのが3列SUV。子供が3人以上いるファミリーでも大丈夫というわけだ。
ドイツ御三家だけでなく、あのレンジローバーまでもが3列モデルを用意するのは「プレミアムな3列SUVが欲しいお金持ちのファミリー」というマーケットがしっかり存在するからなのだろう。
よくよく見てみると、日本車もCX-80を除けばすべて北米で展開しているモデル。CX-80だって、その北米向けモデルとしてひとまわり大きな「CX-90」を用意している。つまり、全体を俯瞰(ふかん)して考えるとこのジャンルはアメリカを中心に回っていると考えていいだろう。でも、体の大きなアメリカ人はSUVの3列目に満足できるのだろうか? 多くの場合は、子供用のスペースだから問題ないってことなのか……?
(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車、三菱自動車、ゼネラルモーターズ・ジャパン、向後一宏、田村 弥、webCG/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
人気なのになぜ? アルピーヌA110」が生産終了になる不思議NEW 2025.12.17 現行型「アルピーヌA110」のモデルライフが間もなく終わる。(比較的)手ごろな価格やあつかいやすいサイズ&パワーなどで愛され、このカテゴリーとして人気の部類に入るはずだが、生産が終わってしまうのはなぜだろうか。
-
GRとレクサスから同時発表! なぜトヨタは今、スーパースポーツモデルをつくるのか? 2025.12.15 2027年の発売に先駆けて、スーパースポーツ「GR GT」「GR GT3」「レクサスLFAコンセプト」を同時発表したトヨタ。なぜこのタイミングでこれらの高性能車を開発するのか? その事情や背景を考察する。
-
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ 2025.12.12 日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。
-
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る 2025.12.11 マツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。
-
業界を揺るがした2025年のホットワード 「トランプ関税」で国産自動車メーカーはどうなった? 2025.12.10 2025年の自動車業界を震え上がらせたのは、アメリカのドナルド・トランプ大統領肝いりのいわゆる「トランプ関税」だ。年の瀬ということで、業界に与えた影響を清水草一が振り返ります。
-
NEW
車両開発者は日本カー・オブ・ザ・イヤーをどう意識している?
2025.12.16あの多田哲哉のクルマQ&Aその年の最優秀車を決める日本カー・オブ・ザ・イヤー。同賞を、メーカーの車両開発者はどのように意識しているのだろうか? トヨタでさまざまなクルマの開発をとりまとめてきた多田哲哉さんに、話を聞いた。 -
NEW
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】
2025.12.16試乗記これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。 -
GRとレクサスから同時発表! なぜトヨタは今、スーパースポーツモデルをつくるのか?
2025.12.15デイリーコラム2027年の発売に先駆けて、スーパースポーツ「GR GT」「GR GT3」「レクサスLFAコンセプト」を同時発表したトヨタ。なぜこのタイミングでこれらの高性能車を開発するのか? その事情や背景を考察する。 -
第325回:カーマニアの闇鍋
2025.12.15カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ベースとなった「トヨタ・ランドクルーザー“250”」の倍の価格となる「レクサスGX550“オーバートレイル+”」に試乗。なぜそんなにも高いのか。どうしてそれがバカ売れするのか。夜の首都高をドライブしながら考えてみた。 -
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】
2025.12.15試乗記フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。 -
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!?













































