クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

三菱アウトランダーPエグゼクティブパッケージ(4WD)

出し惜しみはしない 2025.03.26 試乗記 佐野 弘宗 「三菱アウトランダー」のマイナーチェンジモデルが登場。その改良内容はとにかく多彩かつ大規模で、前期型のオーナーはさぞかし歯がゆい思いをされていることだろう。それはともかくとして、最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」の仕上がりを報告する。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

中身がごっそりと入れ替わった

昨2024年10月発売のアウトランダーはデビューから3年が経過した定期的なマイナーチェンジにあたるモデルのようだが、三菱は「大幅改良」と銘打つ。その最大のココロは、プラグインハイブリッドのカナメともいえる駆動用バッテリーが刷新されたことにある。

新バッテリーは総電力量が約1割増しの22.7kWhとなっただけでなく、バッテリー出力そのものも約6割アップ。さらに内部抵抗が約3割低下≒冷却性能は約5割向上しているという。その結果、電気のみで走るEV走行換算距離(WLTCモード)が大台の100kmを超えたり、2.4リッターエンジンや前後に搭載されるモーター自体の性能値に変わりはないが、パワートレインのシステム出力が約2割アップしたりしているという。また、充電性能も上がっているので、たとえば残量0%から80%までの急速充電時間が従来の38分から32分に短縮している。

シャシーについても、標準装着タイヤをまったく新しいサマータイヤ(従来はマッド&スノー)に変更。それに合わせてバネとショック、パワステのチューニングも見直された。内装では9インチから12.3インチに大画面化されたセンターディスプレイと、レザーシート表皮のステッチパターンが変わったことがハイライトだが、純正オーディオは、国内向け初となるヤマハ製(従来は上級システムがBOSE製)のシステムに全車交換されている。

というわけで、こうして中身の改良項目を大ざっぱにならべるだけでも、下手なフルモデルチェンジより手の込んだ内容ゆえに「大幅改良」と称したくなるのも納得である。いっぽうで、内外装の見た目は、オーナーでもなければ気がつかないほどの小さな変化しかないところが、またなんともシブくマニアックだ。

デビュー3年目で「大幅改良」が施された「三菱アウトランダー」。現行モデルを最初期に買ったオーナーにとってはちょうど最初の車検を迎えるタイミングだ。
デビュー3年目で「大幅改良」が施された「三菱アウトランダー」。現行モデルを最初期に買ったオーナーにとってはちょうど最初の車検を迎えるタイミングだ。拡大
今回の試乗車は新たに設定された最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」の7人乗り仕様(5人乗りもある)。車両本体価格は668万5800円と国産SUVとしてはかなり高価だ。
今回の試乗車は新たに設定された最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」の7人乗り仕様(5人乗りもある)。車両本体価格は668万5800円と国産SUVとしてはかなり高価だ。拡大
はっきりとしたエクステリアの変更点はごくわずか。フロントグリルの三菱エンブレムのあたりがメッシュから通気口のない横ストライプのパネルに変わっている。
はっきりとしたエクステリアの変更点はごくわずか。フロントグリルの三菱エンブレムのあたりがメッシュから通気口のない横ストライプのパネルに変わっている。拡大
リアコンビランプはレンズがスモークタイプに変わっている。
リアコンビランプはレンズがスモークタイプに変わっている。拡大
三菱 の中古車webCG中古車検索

“たたずまい”が変わった理由

アウトランダーには2年半以上ぶりの試乗となる筆者だが、外観の変更ポイントが資料を見ないとわからない程度におさめてあるということは、それだけデザインは好評だったということだろう。具体的に変わったのは、フロントアッパーグリル(の上半身部分)が通気口のないブラックパネルに変わったほか、ホイールとテールランプのデザインを刷新。さらには、前後バンパーのアンダーガード風ガーニッシュもよりシンプルなものとなった。実際にはバンパー全体の形状も変わっているようで、全長が10mm長くなっている(全高も5mm高くなった)。

ただ、今回のアウトランダーは、そんな細かい内容を知らずとも、どことなく“たたずまい”が変わっていることに気づく向きもあると思う。筆者もそうだった。

実車を見ると、ブラックパネル化されたアッパーグリルが質感アップに効果的なのだが、じつはそれだけではない。新しいアウトランダーは、まずボンネットの開きかたが変わっている。従来はフロントセンターアッパーグリルがボンネットと一体となって開閉していたのが、上面のボンネットフードのみが開閉する構造に変わっている。しかも、そのフードそのものもアルミからスチールに、フロントサイドフェンダーも樹脂からスチールに素材が変えられている。

こうした変更の結果、フロントバンパーとグリルとの一体感が上がった。さらに、ボンネットやフェンダーがアルミや樹脂からスチールになったことで、プレスラインがより精緻になった。聞けば各パネルのチリ合わせも見直されているとかで、基本デザインにはほぼ変更がないのに、クルマ全体から醸し出される質感が確実に向上しているのだ。フロント周辺にこうしたフルモデルチェンジ級の改良が施されるキッカケとなったのは、欧州市場で超高速走行時のボンネット振動が指摘されたからだという。

新開発の駆動用リチウムイオンバッテリーは容量が22.7kWhに拡大したほか、出力と冷却効率がアップ。EV走行換算距離は102km(「M」グレードは106km)に拡大した。従来は83~87kmだった。
新開発の駆動用リチウムイオンバッテリーは容量が22.7kWhに拡大したほか、出力と冷却効率がアップ。EV走行換算距離は102km(「M」グレードは106km)に拡大した。従来は83~87kmだった。拡大
これまではグリルの上部と一体になっていたボンネットは水平線よりも上しか開かなくなった。フェンダーともども素材がスチールに変わっている。
これまではグリルの上部と一体になっていたボンネットは水平線よりも上しか開かなくなった。フェンダーともども素材がスチールに変わっている。拡大
新たに設定されたブリックブラウンのインテリアカラーは「Pエグゼクティブパッケージ」専用。センターディスプレイのサイズは9インチから12.3インチに拡大している。
新たに設定されたブリックブラウンのインテリアカラーは「Pエグゼクティブパッケージ」専用。センターディスプレイのサイズは9インチから12.3インチに拡大している。拡大
センターディスプレイはサイズが大きくなっただけでなく、ソフトウエアも進化。マップはGoogleの目的地検索に対応したほか、ストリートビューなども表示できるようになった。
センターディスプレイはサイズが大きくなっただけでなく、ソフトウエアも進化。マップはGoogleの目的地検索に対応したほか、ストリートビューなども表示できるようになった。拡大

より速くより静かに

動力性能と静粛性は、2年半ぶりの試乗でもすぐに気づくくらいにレベルアップしている。すべての源流となっているエンジン性能にちがいはないので、電池残量が尽きてからの高速での伸びは従来と大差ない。しかし、0-100km/h加速は約2秒短縮(タイムは非公表)しているといい、だれもが体感できるくらいにはちがう。とにかく、アクセルを踏み込んだ瞬間のピックアップは明らかに力強くなった。

また、バッテリー出力向上のおかげで通常走行時のエンジン停止の頻度が高まっているそうで、静粛性アップにはその効果もある。ただ、今回はインバーターなどの高周波音を低減するカバーを追加したり、ヤマハとのオーディオ開発過程でドア構造にも手が入ったりしているそうで、見ちがえる(聞きちがえる?)ほどの静粛性向上は、こうした改良の積み重ねによるものらしい。改良前のアウトランダーオーナーでもある編集担当の藤沢君によると「開閉時に感じるドアの重さも、はっきりと増えている」そうである。

今回の試乗車は最上級のPエグゼクティブパッケージだったので、オーディオは上級の「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」が装着されていたが、個人的にはサウンドタイプで「Signature(シグネチャー)」を選んだときの生っぽい響きが好ましかった。聞けば、このモードだけは、基本的に三菱側から口出しせず、サプライヤーのヤマハが自由に調律したそうである。

システム出力については従来比で2割アップがうたわれる。モーターとエンジンのスペックは変わっていないが、電池の進化によってより長く全開で走れるようになっている。
システム出力については従来比で2割アップがうたわれる。モーターとエンジンのスペックは変わっていないが、電池の進化によってより長く全開で走れるようになっている。拡大
最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」のシート表皮はセミアニリンレザー。ベンチレーション機能は新規採用の装備だ。
最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」のシート表皮はセミアニリンレザー。ベンチレーション機能は新規採用の装備だ。拡大
2列目シートは前後スライドとリクライニングが可能。ベンチシートのみの設定となっている。
2列目シートは前後スライドとリクライニングが可能。ベンチシートのみの設定となっている。拡大
5人乗りと7人乗りが選べ、この試乗車は後者だった(エントリーグレード「M」は5人乗りのみ)。2列目がベンチシートのみのため乗り込みづらく、シート自体も大人がきちんと座るのは難しい。
5人乗りと7人乗りが選べ、この試乗車は後者だった(エントリーグレード「M」は5人乗りのみ)。2列目がベンチシートのみのため乗り込みづらく、シート自体も大人がきちんと座るのは難しい。拡大

すべてのシーンで万能ではないが……

近年の三菱は「ひと筆書きでつながるハンドリング」を身上とする。ターンインでの前荷重から横方向のロールに移行して、最後の脱出加速では後ろ荷重に……という一連の動きが、なんのとどこおりもなく、水が流れるように遂行されるというものだ。アウトランダーの旋回性は、改良前からそうしたイメージだったが、この大幅改良モデルではアシが少し突っ張るような従来の感触がほぼ解消された。

パワートレインの静粛性アップで、アクセル操作によるエンジンの出入りもほとんど気づかないくらいになっているので、それがシャシーの滑らかさに拍車をかけている。今回新開発されたという「ブリヂストン・アレンザ001」のロードノイズも印象的なほどに低い。

いちばん曲がる「ターマック」モードにすると、自由自在の前後トルク配分で、いったんヨーが発生すると、アクセルを踏めば踏むほど曲がる。ターンインで無理をしなければ、その後の曲がりはまさに手に取るようだ。

それでも、約2.2tという車重を固定減衰ダンパーで支えるアウトランダーは、すべての場面で万能とまではいわない。最近のSUVとしてはロールも大きめなのだが、滑らかなサスペンションストロークを規制しないのが、このシャシーのキモだ。フルバンプするような高速ワインディングロードでは、リアの上下動が収束しづらいケースもままみられる。そこは開発陣も認識しているそうだが、これをせき止めてしまうと、例の「ひと筆書き~」の絶妙感もスポイルされてしまうので、ギリギリのせめぎあいで、現在の調律となっているとか。

バッテリーの刷新で車重も増えているが、同時に燃費もわずかに向上したことは今回の結果にも出ている。いずれにしても、アウトランダーは「トライトン」とならぶ三菱フラッグシップの双璧だ。トライトンが旧「パジェロ」の血統を磨いたクルマとすれば、乗用車のアウトランダーは「ランエボ」の精神を受け継ぐ技術者たちが寄ってたかって開発しているわけで、マイナーチェンジだろうがなんだろうが、おのずと出し惜しみ皆無の大幅改良になってしまうわけだ。

(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=三菱自動車)

車両統合運動システム「S-AWC」を搭載。2モーター式4WDによる前後トルク配分とブレーキベクタリングによる左右の駆動/制動力制御等を組み合わせ、この手のSUVとしては異例のよく曲がるクルマに仕上がっている。
車両統合運動システム「S-AWC」を搭載。2モーター式4WDによる前後トルク配分とブレーキベクタリングによる左右の駆動/制動力制御等を組み合わせ、この手のSUVとしては異例のよく曲がるクルマに仕上がっている。拡大
国内向けとしては初となるヤマハのオーディオシステムを採用。「Pエグゼクティブパッケージ」は12個のスピーカーと2つのアンプからなる高級版「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」を搭載している。
国内向けとしては初となるヤマハのオーディオシステムを採用。「Pエグゼクティブパッケージ」は12個のスピーカーと2つのアンプからなる高級版「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」を搭載している。拡大
「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」はサウンドタイプだけでなく、オーディオセンター(どの席を中心に鳴らすか)の設定もできる。全体としてはクリアで厚みのあるサウンドだ。
「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」はサウンドタイプだけでなく、オーディオセンター(どの席を中心に鳴らすか)の設定もできる。全体としてはクリアで厚みのあるサウンドだ。拡大
3列目シートは床と一体にして格納できるので、使わないときでも持て余すことはない。
3列目シートは床と一体にして格納できるので、使わないときでも持て余すことはない。拡大
2列目シートを前に倒したところ。右の壁面にAC100V・1500Wのコンセントが備わっている。
2列目シートを前に倒したところ。右の壁面にAC100V・1500Wのコンセントが備わっている。拡大

テスト車のデータ

三菱アウトランダーPエグゼクティブパッケージ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1860×1750mm
ホイールベース:2705mm
車重:2160kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:133PS(98kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/4300rpm
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)
フロントモーター最大トルク:255N・m(26.0kgf・m)
リアモーター最高出力:136PS(100kW)
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)
タイヤ:(前)255/45R20 101W/(後)255/45R20 101W(ブリヂストン・アレンザ001)
ハイブリッド燃料消費率:17.2km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:102km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:102km(WLTCモード)
交流電力量消費率:227Wh/km(WLTCモード)
価格:668万5800円/テスト車=719万9390円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトダイヤモンド×ブラックマイカ>(13万2000円)/電動パノラマサンルーフ(14万3000円) ※以下、販売店オプション 前後ドライブレコーダー+ETC2.0車載器<スマートフォン連携ナビゲーション接続用>(15万1030円)/フロアマット<7人乗り用>(6万2260円)/トノカバー(2万2000円)/三角表示板(3300円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:4074km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:429.3km
使用燃料:32.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.2km/リッター(満タン法)/13.5km/リッター(車載燃費計計測値)

三菱アウトランダーPエグゼクティブパッケージ
三菱アウトランダーPエグゼクティブパッケージ拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

試乗記の新着記事
  • BMW 220dグランクーペMスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.29 「BMW 2シリーズ グランクーペ」がフルモデルチェンジ。新型を端的に表現するならば「正常進化」がふさわしい。絶妙なボディーサイズはそのままに、最新の装備類によって機能面では大幅なステップアップを果たしている。2リッターディーゼルモデルを試す。
  • ビモータKB4RC(6MT)【レビュー】 2025.9.27 イタリアに居を構えるハンドメイドのバイクメーカー、ビモータ。彼らの手になるネイキッドスポーツが「KB4RC」だ。ミドル級の軽量コンパクトな車体に、リッタークラスのエンジンを積んだ一台は、刺激的な走りと独創の美を併せ持つマシンに仕上がっていた。
  • アウディRS e-tron GTパフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.9.26 大幅な改良を受けた「アウディe-tron GT」のなかでも、とくに高い性能を誇る「RS e-tron GTパフォーマンス」に試乗。アウディとポルシェの合作であるハイパフォーマンスな電気自動車は、さらにアグレッシブに、かつ洗練されたモデルに進化していた。
  • ボルボEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.9.24 ボルボのフル電動SUV「EX30」のラインナップに、高性能4WDモデル「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」が追加設定された。「ポルシェ911」に迫るという加速力や、ブラッシュアップされたパワートレインの仕上がりをワインディングロードで確かめた。
  • マクラーレン750Sスパイダー(MR/7AT)/アルトゥーラ(MR/8AT)/GTS(MR/7AT)【試乗記】 2025.9.23 晩夏の軽井沢でマクラーレンの高性能スポーツモデル「750S」「アルトゥーラ」「GTS」に一挙試乗。乗ればキャラクターの違いがわかる、ていねいなつくり分けに感嘆するとともに、変革の時を迎えたブランドの未来に思いをはせた。
試乗記の記事をもっとみる
クルマに関わる仕事がしたい
三菱 の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。