第3回:圏央道開通!! ただし7割(その2)
鶴ヶ島JCTから圏央道を走る
2014.09.12
矢貫 隆の現場が俺を呼んでいる!?
本当に高規格道路?
鶴ヶ島JCTから圏央道に入ってすぐに、あれッ!? と思った。
イメージしていた道とまるで違う。もっときれいで立派な道路だと想像していたのに、期待外れ、なのである。
新しい自動車専用道路といえば「新東名」を連想してしまうものだから、こっちは、それはもう見事な道路だと勝手に思い込んでいる。ところが目の前に現れた、「第1種3級」、つまり「高速道路・設計速度80km/h」の圏央道は、どうしたわけだか高規格道路と呼べる代物ではないようにドライバー(=矢貫 隆)の目には映っていたし、なにより古くさい感じさえしたのだ。
どうして!?
鶴ヶ島JCTから青梅IC間が開通したのは18年も前の1996年(平成8年)のこと。古くさくて当然?
いや、そういう問題じゃない。自動車専用道路の18年物ならまだ新品の部類に入るし、そもそも、ここで言う「古くささ」とは、建設時期が新しいとか古いとかではなく、具体的に表現できないのだけれど“道路造りの思想”みたいなものが今ふうじゃないとでも言えばいいのだろうか。
なにより、路肩が狭い。トンネル内でもそれは同様だから、走っていて圧迫感さえ覚えてしまうのである。いまどきガードレールがさびている光景なんて、まずお目にかかれないけれど、圏央道にはそれがあった。ほんとに第1種、3級?
そして、交通安全施設である。
小高い丘陵地形の区間は切り通しになっていて、その斜面はコンクリートで固めた石垣になっている。ま、それはいいとしても、路肩と石垣の間にガードレールが設置してないというのは、これはもう、びっくり仰天ものでしょう。ここを走行中、何かの拍子に本線車道を逸脱してしまったら、そのまま石垣に激突なのだから。これで、ほんとに高規格道路なの?
と、もろもろの状況が、あれッ!? と思わせるものだから、その結果、ハンドルを握る当の本人は、まるで、大昔からある「小田原厚木道路」でも走っているかのような印象を受けてしまったのかもしれない。
それにしても、圏央道、この区間が開通したのが18年前で、高尾山IC~相模原愛川IC間の開通が今年6月、それまでまだ残り3分の1が開通していないって、ずいぶんのんびりした建設計画ではないか。
なぜ!?
そもそも、と言いだすと長くなってしまうけれど、かいつまんで圏央道の計画段階から語ると、話は50年以上も前、池田内閣の、いわゆる高度経済成長時代のただ中、1962年(昭和37年)にまでさかのぼる。
「内堀通り」とか「晴海通り」とか、都内の主要道路に名前が付いた年、茨城県東海村の日本原子力研究所で大型の研究原子炉が臨界に達し、いわゆる「原子の火」とかいうのがついた年、日産自動車が、国産初の大型乗用車「日産セドリック スペシャル」を発表した年、その年の10月に「全国総合開発計画(=旧全総)が閣議決定され、そのなかで開発拠点間を交通、通信網で結ぶ構想が発表されている。圏央道計画は、ここからでてくるのだ。
当時の建設省は「全総」を踏まえ、1967年に「東京第三外郭環状道路」を提案し(その先の経緯は省略)、さらに10年後の76年、同道路の名は「首都圏中央連絡道路」(現在の正式名称は「首都圏中央連絡自動車道」)と改めることになるのである。
つまり?
つまり、物流量時代、物流のための道がどんどん作られていった時代に圏央道は計画された、という意味だ。
だから何?
(つづく)
(文=矢貫 隆)

矢貫 隆
1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。
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