日産スカイライン200GT-t Type SP(FR/7AT)
ハイテクで演出された古典 2014.09.19 試乗記 ダイムラー製の2リッター直噴ターボエンジンを搭載した「日産スカイライン200GT-t」。古典的とも言えるスポーツセダンならではの走りを支えるものとは?きめ細やかな「おもてなし」
先日、国内外の最新セダンにイッキ乗りする機会があった。中でも一番楽しみだったのが、ダイムラー製エンジンを積む日産スカイライン200GT-tだ。だってスカイラインがメルセデス・ベンツのエンジンを積むなんて、サザンオールスターズのドラムをリンゴ・スターがたたくようなものではないか(ちょっと違いますね)。
ところが実際に乗った日産スカイライン200GT-tはスカGらしいスカGで、きりっと辛口の、やや古典的な味わいのスポーツセダンだった。そのソリッドな操縦感覚は、ライバルたちの中に入っても十分個性的だった。
同時に、時間のないイッキ乗りでは試すことができない奥深さがあることも確認した。そこで、日産スカイライン200GT-tにじっくり乗ってみた。
スカイラインに感じた奥深さとは、「おもてなし」機能である。欧米の列強セダンとイッキ乗りをすると、スポーティーさや動力性能、安全性能といった項目で比較することになる。ただし、レーダーチャートに「おもてなし」という項目を設けると、ここはスカイラインのぶっちぎり、独壇場ではないかと思えた。
では、スカイラインの「おもてなし」機能とはいかなるものか?
スカイラインに乗り込むと、まず「パーソナルアシスタント機能」がもてなしてくれる。何人分かのシート位置を記憶してくれる装置は他社にもあるけれど、スカイラインはドライビングポジションだけでなく、エアコンやオーディオの設定から走りの味付け、安全機能のセッティングまで、最大で3名分を記憶してくれるのだ。料理屋のカウンターに座った瞬間に、「いつもの」が出てくる感じだ。
タッチパネル式の操作画面のアプリも、スマートフォンと同じように好きな順番に並べ替えることができる。
ただし、このまま走りだしてしまうと、スカイラインの面白さの一部を味わわないで終わってしまう。走りの味付けを好みのセッティングにカスタマイズしてから出発したい。スカイラインというクルマは、パソコンのデスクトップを自分の好みに設定するように、セミオーダーできるクルマなのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
自分で探す理想のチューニング
スカイラインに備わるドライブモードは、「STANDARDモード」「SPORTモード」「SNOWモード」で、ハイブリッドには「ECOモード」も用意される。ただしこのクラスだったら、同じ機能が他車にも付いている。
面白いのは、スカイラインの「PERSONALモード」だ。ガソリンエンジン仕様がパーソナライズできる項目は「エンジン・トランスミッション」「ステアリング操舵(そうだ)力」「コーナリングスタビリティーアシスト」の3つ。
コーナリングスタビリティーアシストとは、コーナリング時に4輪それぞれにブレーキをかけることで、理想の走行ラインを描くためのデバイス。例えば外側にふくらみそうになると内輪にブレーキ制御が入り、走行ラインを内側に引き戻す。
「エンジン・トランスミッション」は、「STANDARD」「SPORT」「SNOW」の3択、「ステアリング操舵力」は「しっかり」と「標準」の2択、「コーナリングスタビリティーアシスト」も「非作動」と「作動」の2択で、計12の特性から自分に合ったものを選ぶ。
ちなみにハンドル操作を電気信号に変換して伝える「DAS(ダイレクトアダプティブステアリング)」を採用したハイブリッド仕様はもっと選択肢が増えて、計96(!)の特性から選ぶことになる。
今回試乗した2リッター直噴ターボ仕様はコンベンショナルな車速感応式の電動油圧パワーステアリングであるけれど、秋にはこちらでもDASが選べるようになるという。
理想の組み合わせを求めて、あれこれ試してみる。
まず「エンジン・トランスミッション」は「STANDARD」だ。最初は「SPORT」のアクセルペダルを踏んだ瞬間に「フォン!」と吹けるレスポンスに引かれるけれど、30分も乗っていると飽きるというか、ちょっとあざとい感じが鼻につくようになる。
「STANDARD」のほうが、メルセデス・ベンツ製の直噴2リッターターボの低回転域から厚みのあるトルクをじわーっと引き出して気持ちよく走ることができる。アクセル操作に対するレスポンスが自然なのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
いたるところにハイテクの恩恵が
「ステアリング操舵力」は「しっかり」を選んだ。「標準」で走ると、高速道路でもワインディングロードでもどうも頼りない。「標準」は、自分にはちょっと軽すぎるのだ。路面からの情報も曖昧にしか伝えない。ところが「しっかり」を選ぶと、いまクルマがどんな状況で走っているのかが、文字通り手に取るようにわかるようになる。
ここで、ふと頭をよぎったのが、ハイブリッド仕様のDASだ。あれは少し不自然に感じたけれど、もっと細かく設定を試したら印象が変わったのかもしれない。いずれ、もう一度じっくり時間をかけて試してみたい。
「コーナリングスタビリティーアシスト」を「非作動」にするか「作動」にするか試すところで時間切れ。スカイラインと真剣に向き合うには、相応の時間が必要となる。取りあえず「作動」を選んでの試乗となった。
この設定で走ると、日産スカイライン200GT-tは、加速でもコーナリングでも大人っぽい動きをする、スポーティーセダンとなる。
さまざまなドライブモードを試して面白かったのは、モードによって室内で感じる音がかなり変化することだ。モードに応じて、車内で聞こえるエンジン音の音質を変える「アクティブ・サウンド・コントロール」が切り替わっているのだ。
音によっても「スポーティーだな」とか「落ち着いているな」といった印象が大きく変化するのは発見だった。
アクティブ・サウンド・コントロールについては日産だけでなく、他社も似たような機能を採用している。例えば「スポーティーさ」や「スカイラインらしさ」を前面に打ち出そうとすると、それはエンジンやサスペンションの味付けだけでなく、アクティブ・サウンド・コントロールの設定を変えることでもある。
クルマの開発も大変な時代になったとつくづく思う。スカイライン200GT-tに感じた「古典的な味わい」は、こうしたハイテク技術のたまものだったわけだから。
(文=サトータケシ/写真=向後一宏)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
日産スカイライン200GT-t Type SP
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4800×1820×1450mm
ホイールベース:2850mm
車重:1680kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7AT
最高出力:211ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1250-3500rpm
タイヤ:(前)245/40RF19 94W/(後)245/40RF19 94W(ダンロップSP SPORT MAXX 050 DSST CTT)
燃費:13.0km/リッター(JC08モード)
価格:456万8400円/テスト車=476万7336円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルホワイトパール>(4万3200円)※以下、販売店装着オプション プレミアムフロアカーペット<消臭機能付き>(5万6160円)/アンビエントLEDライトシステム<おもてなし間接照明>(9万9576円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3534km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:187.2km
使用燃料:16.9リッター
参考燃費:11.1 km/リッター(満タン法)/10.7km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
NEW
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。