ジャガーXE 2.0(FR/8AT)/XE 3.0(FR/8AT)/XE 2.0ディーゼル(FR/6MT)
本命登場 2015.05.28 試乗記 ジャガーの新型ミドルサイズセダン「XE」に試乗。ジャガーが再び世に問う“プレミアムコンパクト”は、ジャーマンスリーの牙城に迫ることができるのか。スペインからの第一報。捲土重来を期す
21世紀に入って生まれた最初のジャガー、「Xタイプ」。思えばこのクルマは、新しいミレニアムに向けて大きな合従連衡を伴う急速な拡大路線を採った自動車産業の悲哀に満ちていた。
自社の傘下にある高級車部門をプレミアム・オートモーティブ・グループとして一つに束ねたフォードが、その一員であった当時のジャガーに課したのは、従来比でざっと5倍もの販売拡大だ。しかも結果を出すのに与えられた時間は10年にも満たなかった。そのためには小さく求めやすいクルマを投入することが不可避……ということで、彼らはフォードのアーキテクチャーを用いてDおよびEセグメントのモデルを開発することとなったわけだ。
Eセグメントに相当する「Sタイプ」には「リンカーンLS」と共通のプラットフォームが用いられた。そしてXタイプにあてがわれたのは欧州仕様の「フォード・モンデオ」、つまり横置きFFのプラットフォームである。
さすがに前輪駆動はいかがなものかということになったのだろう、四輪駆動として言い訳めいたかたちで登場したXタイプは、誰がみてもジャガーという意匠をもっていながらも、市場では決して好意的に受け止めてはもらえなかった。
そうこうしているうちにこのプロジェクトを企てた当時のフォードの最高経営責任者、ジャック・ナッサーは本体の財務状況の悪化や欠陥問題などの責任をとってフォードを退社。Xタイプは途中で開き直りのFFモデルも投入するが販売は上向かず……と、もうジャガーにとってはこのクルマ、“黒歴史”の1ページと化していると言っても過言ではない。
が、そんなXタイプが僕は嫌いではない。何より驚かされたのはその乗り味が、“年改”ごとに見る見るジャガーネスをたたえていったことだ。それはSタイプもしかりだったが、こちらは元ネタがモンデオである。それをこうも見事に化けさせるのかと、とてもFF系とは思えないステアリングフィールを手のひらでなめずりながら、僕はジャガーの中にいる、恐らくは実験部門の手だれぶりに思いをはせた。
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