MINIクーパーS コンバーチブル(FF/6AT)
MINIはためらわない 2016.05.18 試乗記 風薫る季節に誘われて、新型「MINIコンバーチブル」でワンデー・ツーリングに出掛けた。3代目となって、“BMW MINI”はそのつくりも世界観も完成の域に達した感がある。今後、時代はMINIに何を求めていくのだろうか? 上級グレードの「クーパーS」に試乗した。あらゆる部分がよくできている
そろそろ頭に「BMWの」と付ける必要もなくなってきたMINI。ほぼ同じカタチで3世代続いているが、飽きられることなく人気を保っている。出た当初はここまでの存在になるとは思わなかったが、このカタチは偉大だったんだな。もちろん、飽きられないのは「カッコいいから」「かわいいから」だけでなく、常に一級の性能が盛り込まれているからでもあるのだろうが。それはそれとして、ハッチバックから少し遅れてコンバーチブルが追加されるのが歴代MINIシリーズのパターン。現行の3代目にもコンバーチブルが追加され、このほど日本導入を果たした。
初代コンバーチブルは2004年の登場。以来、3世代続けてほぼ同じカタチなので、BMWももう手慣れちゃって、どこを見ても上手につくりこまれている。特にソフトトップに関しては、デザイン、動作の精度、クローズドでの耐候性、静粛性、それに見て触れて感じる質の高さなど、あらゆる部分がよくできていて、感心するばかりだ。
MINIコンバーチブルのソフトトップは、まず前席頭上部分のみをスライドさせるスライディングルーフ機能が備わるのが先代、先々代からの特徴。新型にも受け継がれた。頭上のファブリックはなくなるものの梁(はり)に相当する骨格部分は残るという状態なのだが、これが非常に有用だ。さっと開けることも閉じることもできるから。開放感を得たいがフルオープンにするまでもないという時に役立つ。ソフトトップ全体は走行中は30km/h未満じゃないと開閉できないが、この部分のみの開閉なら100km/hでも可能なため、思い立った時にいつでも開閉できるのがいい。
トップの開閉はスイッチひとつ。ロック作業もなく、全自動で開閉が完了する。作動音はまったく気にならないレベル。何秒か計測し忘れたが、不満のないスピードで開閉できる。テスト車のソフトトップにはユニオンジャックの柄が織り込まれていた。僕なら選ばないが、好きな人はどうぞ。
「オープンカー開放感選手権」のチャンピオン
主要な現行のオープンカーが参加する「開放感選手権」があったなら、MINIコンバーチブルこそがチャンピオンだろう。なんといってもウインドシールドが立っていて、前席乗員よりもかなり前方にあるため、嫌でも空が視界に入ってくる。真上まで見上げないと空が見えないオープンカーが少なくないが、MINIコンバーチブルのは、これ以上ない開放感を得られる。準優勝は「フォルクスワーゲン・ザ・ビートル カブリオレ」あたりか。
だからといって、走行中の風の巻き込みが他のクルマよりも特別激しいわけではないのがMINIの上手なところ。後席部分に巻き込みを低減するボードを装着することもできるが、カッコ悪いので装着をおすすめしない。オープンカーのオーナーは開放感を味わって楽しむとともに、街の風景の一部として、周囲に華やかな姿を見せ、幸せをおすそ分けすべき。そのため、見られ方を気にしてほしい。後席に乗ったら相当な風の巻き込みを覚悟すべき。4シーターオープンのリアシートはどうしても巻き込みを防ぐことができない。
ところで、フルオープンでトップを折りたたんだ状態だと、ルームミラー越しの後方視界はかなり遮られる。後続車のルーフがわずかに見えるだけだ。また、これはソフトトップのオープンカーの宿命だが、クローズド時の斜め後方の視界がすごく悪い。ドアミラーを使っても、振り向いて直接目視しても確認できない死角が発生する。ただ、どちらに対してもとっておきのよい対策がある。より気をつけて運転すればよいのだ。「フィアット500C」もフルオープン状態だと後方視界に相当難点があるが、その代わりに得られたものがあるわけで、そういうクルマに乗る場合にはよけいに気をつければすむことだと思う。
時代の流れを受け入れよう
機関部分はハッチバックの「MINIクーパーS」そのもの。2リッター直4ターボエンジンはトルキーで働き者。低い回転域からグイグイクルマを進めてくれる。ソフトトップのために開けてても閉めててもよく聞こえるエキゾーストノートは、官能的とはいわないが、すごく味気ない音だった先代よりは“聴ける”。モノコックの上3分の1がないわけだから、ボディー剛性の面では不利なはずだが、しっかり補強されているのだろう、ハッチバックと比べてもヤワな印象はない。車両重量は1360kg。1240kgのハッチバックのクーパーSに比べ120kgも重いのだが、ギアリングの妙により、パワー不足を感じることはない。
オープンカーのインテリアは半分エクステリアみたいなもので、非常に大事。テストした車両には、デビューパッケージという42万円のオプションパックに含まれる「レザー チェスター モルト・ブラウン」のスポーツシートが装着されていた。らくだみたいな色のキルティングレザーは見た目もさわり心地もよく、白いパイピングもおしゃれ。レザーの張り具合も適切で、座り心地も良好。シート形状は見た目よりも平板で、特にサポート性が高いタイプではないが、しゃかりきになってコーナーを攻めるクルマじゃないし、これでよいと思う。
“センターメーター”は、オリジナルMINIから受け継いだ大切なデザイン上のモチーフだったが、現行MINIでは、スピードメーターが他の多くのクルマと同じステアリング奥の位置に移動し、センターパネルには丸いデザインこそ残るものの、各種情報や地図のディスプレイとして使われるようになった。巨大なセンターメーターはMINIならではの特徴ではあったが、あたらしいやつでも不都合はないので、時代の流れとして受け入れよう。
MINIブランドの強さ
コンバーチブル化のため、ラゲッジスペースは下ヒンジのリッドの奥にある。容量は215リッターと先代よりも40リッター増えた。通常時の容量はそれなりだが、リアシートバックを倒せるので、その気になればゴルフバッグなどのかさばる荷物も飲み込む。一見、開口部は小さいのだが、スルーローディング・システムというからくりがあって、出し入れの時だけ開口部を拡大することができる。作業は多少面倒くさいが、出し入れのしやすさは格段に向上する。
時代が変われば求められる要件も変わるため、変わらぬデザインを貫くのも簡単ではないのだろうが、とはいえモデルチェンジを企画するうえで「とりあえず次はどんなカタチにしようかな?」と一番悩む最初の工程を省くことができるのだからMINIブランドは強い。親に苦労をかけずによくもうける孝行息子だ。BMWがローバーを買ったのは1994年だが、他社だって商談、少なくとも検討はしたはずだ。今ごろ、ほぞをかんでいるメーカーもあるのだろう。ま、他社が買ったとして、同じようにうまく成長させられたとは限らないわけだが。
名前が名前だけにサイズが大きくなったことを嘆く人もいるが、喜ぶ人がその何倍もいることをわかっているため、BMWは一切ためらうことなく、大きく、さまざまなカタチのMINIをどんどんつくってはヒットさせる。このカタチでこの先どこまでいくのか、興味をもってそのゆく末を見届けたい。
(文=塩見 智/写真=小河原認)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
MINIクーパーS コンバーチブル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3860×1725×1415mm
ホイールベース:2495mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:192ps(141kW)/5000rpm
最大トルク:28.6kgm(280Nm)/1250-4600rpm
タイヤ:(前)205/40R18 86W/(後)205/40R18 86W(ダンロップSPORT MAXX RT DSST*) *=ランフラットタイヤ
燃費:16.3km/リッター(JC08モード)
価格:397万円//テスト車=485万4000円
オプション装備:ボディーカラー<メルティング・シルバー・メタリック>(5万9000円)/デビューパッケージ<ストレージ・コンパートメント・パッケージ+MINIエキサイトメント・パッケージ+レインセンサー 自動ドライビングライト付き+ライト・パッケージ+MINIドライビング・モード+18インチ MINI Yoursバニティ・スポーク 2トーン 7J×18 205/40R18 ランフラット+MINI Yoursスポーツ・レザー・ステアリング サテライト・グレー+マルチファンクション・ステアリング・ホイール+クルーズ・コントロール+MINI Yoursインテリア・スタイル ファイバー・アロイ+スポーツ・オートマチック・トランスミッション+レザー チェスター モルト・ブラウン スポーツ・シート+MINI Yoursソフトトップ>(42万円)/ダイナミック・ダンパー・コントロール(7万7000円)/リア・ビュー・カメラ(4万6000円)/パーキング・アシスト・パッケージ(6万円)/ヘッド・アップ・ディスプレイ(5万8000円)/ドライビング・アシスト アクティブ・クルーズ・コントロール(11万4000円)/ウインド・ディフレクター(5万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:575km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:216.5km
使用燃料:18.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.0km/リッター(満タン法)/12.6km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
-
日産リーフAUTECH B7(FWD)【試乗記】 2026.5.23 新型「日産リーフ」にもおなじみの「AUTECH」が仲間入り。デザインや質感などの上質さを目指した大人のカスタマイズモデルだが、走りの質感がアップしたと評判の新型リーフとは、さぞ相性がいいに違いない。300km余りをドライブした。
-
メルセデス・ベンツSクラス【海外試乗記】 2026.5.22 「メルセデス・ベンツSクラス」のマイナーチェンジモデルが登場。メルセデスの旗艦として、また高級セダンのお手本として世界が注目する存在だけに、進化のレベルが気になるところだ。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
マツダCX-5 L(4WD/6AT)/マツダCX-5 G(FF/6AT)【試乗記】 2026.5.21 日本でも、世界でも、今やマツダの主力車種となっている「CX-5」がフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、過去のモデルとはどう違い、ライバルに対してどのような魅力を備えているのか? 次世代のマツダの在り方を示すミドルクラスSUVに試乗した。
-
DS N°4エトワール ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.5.20 DSオートモビルから「DS N°4」が登場。そのいでたちは前衛的でありながらきらびやかであり、さすが「パリのアバンギャルド」を自任するブランドというほかない。あいにくの空模様ではあったものの、350km余りをドライブした。
-
アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF/7AT)【試乗記】 2026.5.19 2026年3月に大幅改良モデルが発表され、ほどなくメディア試乗会も開催された「アルファ・ロメオ・トナーレ」。今回はこれをあらためて借り出し、一般道から高速道路まで“普通に”走らせてみた。進化を遂げたアルファの中核SUVの仕上がりやいかに?
-
NEW
車載カメラが普及した今、“デジタルサイドミラー”が主流にならないのはなぜか?
2026.5.26あの多田哲哉のクルマQ&Aサイドミラーの役割をカメラが担う“デジタルサイドミラー”は、レクサスやアウディなどで採用例があったものの、普及するには至っていない。その決定的な理由はなにか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんが語る。 -
NEW
マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R(FR/6MT)【試乗記】
2026.5.26試乗記販売台数わずか200台の限定車「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」に試乗。スーパー耐久レース参戦をはじめとするマツダのモータースポーツ活動を担うサブブランドが生み出した初の市販コンプリートカーは、いかなる走りをみせるのか。 -
買った後にもクルマが進化! トヨタ&GAZOO Racingが提供するアップデートサービスのねらいと意義
2026.5.25デイリーコラムGAZOO Racingが「トヨタGRヤリス/GRカローラ」の新しいソフトウエアアップデートを発表! 競技にも使える高度な機能が、スマートフォンのアプリで調整できるようになった。その詳細な中身と、GRがオーナーに提供する“遊びの機会”の意義を解説する。 -
第336回:やっぱり絶交!
2026.5.25カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。夜の首都高に200台の台数限定で販売される「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」で出撃した。手作業で組まれた2リッター直4エンジンを搭載するマツダ入魂のスポーツモデルに、カーマニアは何を感じた? -
アウディQ6スポーツバックe-tronクワトロ アドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.5.25試乗記アウディの電気自動車(BEV)「Q6スポーツバックe-tron」で、東京・渋谷と静岡・裾野を往復。雨のなかでエアコンを効かせ、高速や峠道を遠慮なく走らせるハードユースに、最新のBEVはどう応えてくれたのか? そこで感じた“本音”をリポートする。 -
ホンダ・プレリュード(後編)
2026.5.24ミスター・スバル 辰己英治の目利き軟派なクーペはアリやナシや。ミスター・スバルこと辰己英治さんが新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。「シビック タイプR」とは趣を異にするシャシーに触れ、話題の「S+シフト」を試し、これからのスポーツクーペ像に思いをはせた。
































