MINIクーパー コンバーチブルS(FF/7AT)
家族のように付き合える 2025.03.19 試乗記 新世代MINIにも「MINIクーパー コンバーチブル」が仲間入り。コンパクトなボディーにオープンエアドライブの魅力を上乗せした、今では非常にぜいたくな存在だ。中間グレード「クーパー コンバーチブルS」の仕上がりをリポートする。今や希少な4座オープントップ
ふと市場を見渡せば、3人以上が乗れる実用的なオープンモデルが枯渇しつつある今日このごろ。2000年代はメタルルーフのリトラクタブルトップが廉価となったことで、欧州ブランドに目を向ければBセグメント級から何かしらのモデルが存在したものだが、2010年代を境にその数を減らし始め、今やラインナップにその姿を見つけるのは難しい。
なぜこのような状況に至ったのか。見晴らしのいいSUVの台頭に伴うユーザーマインドの変化もあるかもしれないし、電気自動車へのシフトに伴う開発リソースの選択と集中といったつくり手側の都合も考えられるだろう。かつての「レンジローバー イヴォーク コンバーチブル」や、現在の「フォルクスワーゲンT-ROCカブリオレ」(本邦未導入)など、SUV車型のオープンもあるが、かの地でもセールスは芳しくないと聞く。
もはやそれは富裕層御用達のプレミアムセグメントでしか望めないぜいたくなのか……と気持ちも沈むなか、奮闘しているのがMINIコンバーチブルだ。BMW MINIの生まれた21世紀以降、ファミリーのバリエーションとして幾度かのモデルチェンジを生き抜いてきた。そして新型でも型式名称をF57からF67へと違えた、フルモデルチェンジの扱いとして発売される。
ガラリと変わったインテリア
その外形はベースとなる3ドアのMINIに準じたアップデートを受けた……と、ここでお気づきのとおり、新型MINIコンバーチブルのアーキテクチャーは3ドア同様、前型をキャリーオーバーしている。そのぶん、中身のリファインに重きを置いた今日的なアップデートを受けつつ、電子アーキテクチャーを一気に全刷新するという、これまたいかにも今日的な手法を採っている。
それもあって、雰囲気がガラリと変わったのはインテリアだ。第4世代MINIに共通するセンターメーター型の9.4インチOLEDディスプレイや、その台座からダッシュボードを照らす間接照明、ループをモチーフとしたダッシュパネルやステアリングのアクセントなどを余さず踏襲し、MINIのイメージをそのままに一気にモダンな印象となった。搭載される「MINI OS9」もBMWと共通するAndroidベースのもので、サードパーティーとの親和性が高い。屋根を開けているときは内装もたたずまいのアクセントとなるコンバーチブルだけに、それ前提の外に見せるグラフィックやアプリなどが開発されれば面白そうだ。
車寸は3880mm×1745mm×1435mm。全幅と全高が各20mm大きくなっているが、これは意匠的な差異の範囲だという。装着タイヤサイズも変わらず、ホイールベースも同じ2495mmだ。A~Bセグメント級の車格にしておごられる風合いも本格的な電動オープントップは、30km/h以下なら走行時でも開閉が可能となっている。また、速度域にかかわらず前席トップ部のみをスライドさせてサンルーフ的に使うことも可能だ。このあたりの機能は前型と変わりはない。
トランク型の荷室の容量は幌(ほろ)を閉じた状態で215リッター、50:50分割の後席をすべて倒した状態で665リッターを確保する。新型では幌を閉じている際に、トランク内の左右レバーを操作することで幌後端部をはね上げて大きな荷物をスムーズに積載できるイージーロードシステムが新たに設けられた。
エンジンを2リッターターボに統一
日本での展開は「クーパー コンバーチブルC」「クーパー コンバーチブルS」「クーパー コンバーチブルJCW」と、グレード的には全網羅されている。パワートレイン的なトピックは、ベースグレードのCに搭載されるエンジンが1.5リッター3気筒から2リッター4気筒に改められたことだろう。これに伴い、パワーは136PSから163PSへ、トルクは220N・mから250N・mへとそれぞれ増強された。同時にSやJCW(ジョンクーパーワークス)もおのおの出力向上を果たしている。そのぶん0-100km/h加速は6.4~8.2秒とそれぞれ確実に速くなっているが、伸びしろが最も大きいのはCだ。日常使いで物足りなさを感じることはまずないだろう。
試乗は中間グレードのSとなったが、0-100km/h加速6.9秒の瞬発力にまず不満があろうはずがない。特有のボディー形状は見切りのよさにもつながっていて、手のひらに収まりそうなと形容したくなる小さな車体がサクサクとラグなく応答するサマは理屈抜きに気持ちがいい。乗ると小難しいことを置いといてひたすら走る喜びに浸れるというのが、MINIの出自でありBMWの血筋でもあるのだなあとあらためて実感する。
洗練された乗り心地
いわゆるMINIのゴーカートフィール的な、操舵の初手からビシビシとゲインが立ち上がる感触は、コンバーチブルに関してはわずかに薄味だ。これは多分に物理的な問題で、屋根が抜けているためにねじれやたわみなどの曖昧要素が、操舵入力を微妙に逃がしてしまうからだろう。が、新型MINIコンバーチブルの場合、フットワークが乗り心地方向に洗練されたこともあり、普通に乗っているぶんにはクルマの動きとしてはむしろつじつまが合っているようにも感じられる。
これは3ドアに乗ったときにも感じたことだが、MINIも第4世代となり、端々で大人の振る舞いを感じる場面が増えた。言い換えればもてなせる器用さも備えたゴーカートとなるだろうか。とりわけコンバーチブルはファミリーでも一番小さな体ながら、その傾向が強い。大人4人にとってはさすがに狭い室内も、時折かつ近距離というありがちな状況であれば十分カバーできる。MINIマルでありながらマチュアな生活を志向するのは何も若者だけではないだろう。あらゆるエイジの方々にとって、MINIコンバーチブルは毎日元気を与えてくれて、長く付き合える家族のような存在でいてくれるのではないかと思う。
(文=渡辺敏史/写真=BMW/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
MINIクーパー コンバーチブルS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3880×1745×1435mm
ホイールベース:2495mm
車重:1410kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:204PS(150kW)/5000rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1450-4500rpm
タイヤ:(前)215/40R18 89Y XL/(後)215/40R18 89Y XL(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:14.6km/リッター(WLTCモード)
価格:514万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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