ケンウッドMDV-Z904
ハイレゾ再生はDSD にも対応、速くて鮮やかな彩速ナビが進化
2016.12.01
カーナビの達人2017 WINTER
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鮮明な映像と素早い操作レスポンスで人気のケンウッド彩速ナビがフルモデルチェンジ。新しい彩速ナビはDSD のハイレゾ音源に対応し、サウンド面も大幅に強化された。
徹底した高音質設計思想、ハイレゾは極限まで追求
オーディオファンの間で人気が高まっているハイレゾ。CDの音源は人間の可聴帯域である20Hz~20kHzの周波数をカバーするべく44.1kHz/16bitというサンプリング周波数/量子化ビット数で処理しているが、それを上回る数値で処理したデジタル音源がハイレゾ音源である。今はまだ音源がそれほど多くはなく、一部オーディオファンの間に広まっているだけではあるが、今後はCDに代わる主力の音源になる可能性もある。
そんなハイレゾにいち早く対応したカーナビがケンウッドの彩速ナビ。前モデルから対応していたのだが、フルモデルチェンジした彩速ナビ2016-2017年モデルでは、数あるハイレゾのフォーマットの中でも最高音質とされるDSD(ダイレクト・ストリーム・デジタル)ファイルの再生まで可能になった。しかも配信される音源では最高音質となる11.2MHzまで再生できるのだからすごい。
ナビ機能に関しても、フルフラットな静電タッチパネルにフリック&ドラッグなどのスマートフォンライクなユーザーインターフェイスで操作でき、その操作レスポンスも快速そのもの。スマホやタブレット同様の操作感で、ストレスなく操作できる。アピール度はそれほど強くないが、実は自車位置精度もかなり高いほうで、ドライブしていて安心感がある。
Apple CarPlayとAndroid Autoの両方に対応するほか、さまざまなスマホアプリと連携するなど、スマホ連携も最先端。使いこなすほど使えるナビだ。
基本性能その1<検索の特徴>
検索機能はナビに収録したローカルのものからスマホアプリを利用したもの、音声検索などさまざまあって、好きなスタイルで検索できる。ローカルの検索は名称、ジャンル、住所、電話番号などのほかに、マップコードやまっぷるコードでの検索も可能。従来タイプのナビを使い慣れた人は、これが使いやすいだろう。
逆にスマホに慣れた人ならスマートフォンアプリの「KENWOOD Drive Info.」を使って「VOIPUT」の音声入力で検索したり、さまざまな検索方法が使える。ガソリンスタンド価格表示やフリーワード検索も、「KENWOOD Drive Info.」を通じた機能だ。ただし、これらは通信を使って検索していることを意識させないで使える。このあたりも彩速ナビのよさといえる。
iPhoneユーザーならCarPlay、AndroidユーザーならAndroid Autoと手持ちのスマートフォンに応じたスマホ連携ができ、CarPlayならマップとSiriを使った音声検索、Android AutoならGoogle音声検索とGoogleマップが使える。ただし、これらを使っている時は彩速ナビは単なるディスプレイと化し、カーナビのローカルの地図とは連動しない。CarPlayを使っている時はアップルのマップ、Android Auto使用中はGoogleマップを使うことになるので、検索は優秀だがルート案内や自車位置の精度が落ちることはあらかじめ頭に入れておきたい。
ほかにもスマホアプリの「NaviCon」とNaviCon連動アプリを使えば、マニアックな地点を検索できたりもする。スマホやタブレット同様、アプリを見つけてきて試す楽しみがあるカーナビである。
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基本性能その2<ルート探索の特徴>
ルートは推奨、距離優先、高速優先、一般道優先、高速/距離の5つのアルゴリズムで探索可能。ルート探索した結果を示す画面では、所要時間と距離、料金がわかり、高速の出入り口もわかる。画面左上にある全行程にタッチすれば、5つのルートを一覧表示。所要時間や料金などを見比べながら、好みのルートを選ぶことが可能だ。
高速出入り口表示の下にあるマイルートアジャスターは、ルート探索のアルゴリズムを微調整できる機能。有料道路の優先度合いは低いから高いまで5段階に、道幅の優先度合いは狭いから広いまで5段階に、渋滞回避度合いは0から3まで4段階に、踏切考慮度合いは低/中/高の3段階に切り替えできる。このアルゴリズムを変えたあとに、マイルートアジャスターのアジャスト画面からルートを再探索することができて便利だ。
VICSワイドに対応しているので、ビーコンがなくても渋滞を回避するルートの探索が可能。また、スマートループ渋滞情報にも対応しており、VICSの約10倍に及ぶ、全国約70万kmの道路の渋滞情報を把握できる。これらの情報をもとにルート探索を行うから、渋滞を回避できる確率は高い。
スマートループ渋滞情報の取得は、駐車場満空情報やテレビdeみ~たの検索と同様、有料のコンテンツだが、彩速ナビを最大限に使いこなすなら、ぜひ活用したいものだ。
基本性能その3<案内の特徴>
通常の交差点拡大図もできるケンウッド彩速ナビだが、特徴的なのはシンプルな「ここです案内」表示。大きな矢印の周りをリングが囲むシンプルな案内だが、この画面で曲がるポイントのほか、交差点や高速入り口などの名称、そこまでの距離、曲がる方向がひと目でわかる。矢印を囲むリングは曲がるポイントまでの距離を視覚的にカウントダウンしていくもの。右下から徐々にリングが消えていき、曲がるポイントの直前には矢印表示が消えて交差点拡大図に切り替わる。また曲がる直前にポーンという音で知らせてくれるので、曲がるタイミングをつかみやすい。
案内先読みガイドも便利。これは、目的地までのルート上の交差点や高速入り口など、分岐するポイントを先々まで確認できる機能。ドライブ前でもドライブ中でも、これから先のルートを高速でトレースしてくれるので、先々通る道を事前に把握しやすい。ただし、オンルートスクロールが速すぎて、覚えきれない場合もあるのだが。
地図画面上には、盗難多発地点や冠水地点のアイコンも表示されるので事前に注意できる。ワンタッチルーペも便利な機能。走行中、自車位置の近くの地図をもっと詳細に見たいケースは多々あり、これまでは地図スケールを詳細側に変更するしか方法がなかったが、彩速ナビなら自車マークを軽くタップするだけで地図が詳細に切り替わるのだ。
ハイレゾ音源をよりよい音で聴くサウンド調整機能も充実
純正(オプション)ナビの需要が高まってきている上に、ナビ機能での差別化が難しくなってきていることから、市場がシュリンクしつつある市販カーナビだが、差別化を図るために各社力を入れているのがエンターテインメント性の部分である。ケンウッドが力を入れているのは、JVC(ビクター)がグループにいる強みを生かしたハイレゾ対応。最新の彩速ナビは、ついにDSDの11.2MHzにまで対応してきた。
なぜハイレゾ音源の音がよいかというと、レコーディングスタジオで録音した音源のクオリティーをそのまま再生できるからだ。実はCDのレコーディング時も96kHz/24bitなどのハイレゾで録音しているものが多い。それをCDにする時に44.1kHz/16bitにダウンコンバートしているわけだ。つまりMP3などの圧縮音源が、CDの音源から情報を間引いているように、CDに収録されている音源はレコーディング時のマスター音源から音を間引いて収録されているわけだ。
ところがハイレゾはレコーディングスタジオで制作した音源をそのまま再生できる。それはCDクオリティーの音源とはパッと聴いてわかるほど、音の滑らかさに違いが出る。そんなハイレゾ音源を再生できるのが、ケンウッドの彩速ナビというわけだ。
クルマで楽しむメディアや音源は年代ごとに変わっている。古くは8トラックの時代があり、それがやがてカセットテープに変わった。そしてCDからMDという流れである。しかし今やディスクメディアはクルマに持ち込まないという人がほとんど。スマートフォンの音楽をクルマで聴いたりしている。そして今後はハイレゾ音源をUSBなどのメモリーに記録してクルマに持ち込む人が多くなるだろう。そんな時「ごめん、このカーナビじゃ再生できない」と言われるとがっかりする。CDとMDが混在していた時代もそうで、一緒にドライブに出掛ける友人がドライブ中に聴きたい音楽をMDに録音して持ってきた時に「このクルマはCDしか聴けない」と言ってがっかりされた経験のある人は多いのではないだろうか。そう、どんな音源でも再生できることは、とても重要なのだ。
そんなハイレゾ音源をよりよい音で聴くための調整機能も充実。例えばプロモードEQ。これはグラフィックEQとは別に動作するパラメトリックイコライザーで、車内の音響特性に応じてピークやディップを補正できる。これで車内の音響特性をフラットに整えた上で、グラフィックEQで好みの音にアレンジするということができるのだ。
ハイレゾ音源がDSD11.2MHzまで再生可能な新しい彩速ナビは、音楽好きにもオーディオ好きにも薦められるカーナビである。
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操作レスポンスのよさも彩速ナビの美点
彩速ナビというネーミングは、彩鮮やかな映像と、快速レスポンスの操作性を両立したことを表す、秀逸なネーミングだと思う。そして彩速ナビ2016-2017年モデルも、その名に恥じない快速レスポンスを実現していることは言うまでもない。
新機能として新たに加わったのはINFOウィンドウ。これは時計や天気、目的地までの距離や時間、カレンダーなどの情報を表示できるもので、画面左上から右へ指をスライドさせると、簡単に情報を引き出すことができる。そしてそのウィンドウにタッチしながらもう一度指を右にスライドさせるとウィンドウはもう1段階大きくなり、情報量はさらに増える。また画面の左の上下中央あたりにタッチしたまま指を左にスライドさせると、今度は地図が引き出されて地図の2画面表示ができる。この引き出した地図も2段階に切り替え可能。そして画面左下から右へ指をスライドさせるとAV表示の子画面が現れ、再生中のアーティスト名や曲名等の情報が表示される。これもサイズを2段階に切り替え可能だ。
この操作はスムーズで、情報を自在に引き出すことができる。iPhoneなら今、ロック中の画面でも画面右下から上へ指でなぞるとカメラやWi-Fiオン/オフなどのメニューに移行することができるが、そんな感じのスムーズさだ。フリックで動く地図スクロールもスムーズかつ素早いもの。地図スケールの拡大/縮小もピンチアウト/ピンチインでできるし、グラフィックイコライザーの調整もドラッグでできる。スマホユーザーならば特に使いやすいだろうし、操作性のよさとレスポンスの速さも、彩速ナビの持ち味である。
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ドラレコ連動機能がドライブの安心感を増す
ドライブレコーダーはいまやクルマの必須アイテムになりつつあるが、カーナビと連動させることで、スタンドアローンのドライブレコーダーとは一味違う使い勝手がある。
彩速ナビと連動するのはDRV-N520というモデル。このモデルは単にドライブ中の映像を記録するだけではなく、駐車中の監視も行う。そして、駐車中に何かのセンサーが働いて録画された場合は、クルマに戻った時にナビの画面にポップアップで知らせてくれる機能もある。
また、前方のクルマに近づきすぎた場合に警告を発したり、発進遅れの時に知らせてくれる機能もある。セキュリティーや運転支援の機能も持つドライブレコーダーなのだ。
彩速ナビと連動することで、撮った映像を彩速ナビの画面で見るのも簡単。ナビ画面からワンタッチで静止画を撮ることもできるから、ドライブ中の風景を撮るのにも役立つ。事故等のアクシデントの際の記録だけではなく、セキュリティー機能もあり運転支援もしてくれる。はたまた旅を記録するカメラ代わりにも。多様性のあるドライブレコーダーである。
カーナビ連動を前提としているから地デジノイズ対策も万全。録画は、フルHDを超える3M(2304×1296)に対応しているし、HDR合成技術を搭載しているので映像も美しい。彩速ナビを手に入れたなら、ぜひ同時の購入を検討したいアイテムである。
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◆デモカー試聴インプレッション◆
ハイレゾ音源の再生がひとつのウリの彩速ナビだから、デモカーはスピーカーをハイレゾ対応モデルXSシリーズに入れ替え、高音質でハイレゾ音源が楽しめるようにチューニングされていた。以下はそのインプレッションだ。デモ音源にはCDクオリティーの音源から96kHz/24bit、192kHz/24bit、DSD11.2MHzまでさまざまなハイレゾ音源まで収録していたのだが、CDクオリティーの音源は正直「こんなもんかな」程度で印象は薄かった。ところが同じ曲を96kHz/24bitで聴くと印象がまったく変わった。声が滑らかで表現力が豊かになった感じ。もう一度CDクオリティーの音を聴き直すと、声がのっぺりとした感じで表情が伝わってこない。一度ハイレゾを聴くともうCDには戻れないなというのが実感である。
(解説=石田 功/写真=小河原 認)
