パナソニックCN-F1D
9型大画面でブルーレイが見られる! ストラーダのフラッグシップ
2016.12.01
カーナビの達人2017 WINTER
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パナソニックから登場したまったく新しい大画面ナビがCN-F1D。大画面ナビはそのサイズから装着の問題がつきまとうが、CN-F1Dはこれまでにない発想でこの問題を解決した。
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2DINから飛び出た9型大画面
市販カーナビの中で唯一、ブルーレイディスクの再生が可能な、パナソニックのカーナビ。これまでは7インチワイド画面のモデルだけだったが、せっかく高画質のブルーレイだから大画面で見たい! そんなニーズに対応したのが2016年モデルのF1Dだ。
大画面ナビというと、一般的には周囲のパネルを車種ごとに作り、車種専用モデルとして販売するが、パナソニックでは汎用(はんよう)性を高めるために、あくまでもクルマへの装着部分は2DINサイズにこだわった。そして完成したのが、9インチの大画面が手前に飛び出した、フローティング構造のユニークなスタイル。この形のおかげで、通常は必要となる専用パネルは不要。2DINサイズの取り付けスペースさえあれば装着できるから、数多くの車種に取り付け可能ということになる。発売当初、取り付け可能車種は140車種だったが、発売から半年の間に取り付け確認はどんどん進み、11月半ばの時点で225車種にまで対応数は拡大している。その数は取り付け確認が進むにつれ、さらに増えるだろう。
このフローティング構造は、操作性向上にも貢献している。画面が手前にせり出すことで、画面がドライバーに近くなるから、従来型のカーナビのようにインパネ面にあるタッチパネルよりも手が届きやすい。スムーズにタッチできるのだ。また体に近くなるということは、画面も大きく見えやすい。画面サイズは9型ワイドだが、視覚的にはインパネ面にある10型や11型並みのサイズに見える。
スマートフォン連携もF1Dの特徴のひとつで、Android Autoに市販カーナビとして初めて対応。従来モデルから連携が可能だった独自のスマートフォンアプリ「Drive P@ss」も使えるし「おでかけナビサポート ここいこ♪」とも連携している。音声認識もスマートフォンと連携しクラウドを利用して行うから、情報量は膨大だし認識率も高い。
この形と取り付け後のスタイルに抵抗がなければ、大画面ナビを低コストで導入できる魅力的なモデルである。
基本性能その1<検索の特徴>
F1Dの検索方法はいくつかある。ひとつはカーナビ内に収められたローカルの検索データを使う方法。もうひとつは音声検索でクラウドのデータを使う方法だ。また、スマホアプリの「おでかけナビサポート ここいこ♪」で探した地点のデータをカーナビに転送する方法もあるし、Android AutoでGoogle(音声)検索を使うこともできる。
ローカルのデータを使った検索は、長年カーナビを使ってきた人にとっては最もなじみのある方法だろう。検索ジャンルはオーソドックスなもので、名称、電話番号、住所、周辺施設などで検索できる。音声検索は手持ちのスマートフォンに「Drive P@ss」というアプリをダウンロードした状態で使う対話型の音声認識で、“雨でも遊べるところ” のような、探したいところが曖昧な探し方でも目的地を探せる。従来よりも起動時間が短縮され、発話が可能になるまでの時間も短くなったようで、使い勝手はさらに高まっている。
スマホアプリの「おでかけナビサポートここいこ♪」は、スマホを使って検索した地点をカーナビに転送できるから、たとえば昼食時に次に行く場所を相手と相談しながら決めるといったケースに便利。Android Auto使用時のGoogle検索は音声でも検索できるし、認識率やヒット率も高い。ここで検索した地点をローカルのナビに転送できれば、より使い勝手がよくなると思うのだが。
基本性能その2<ルート探索の特徴>
ルート探索ではおまかせ、有料優先、一般優先、eco、距離優先という5つのアルゴリズムで同時探索が可能。ひとつの画面でどの辺りを通るのかを確認でき、詳細情報では距離や所要時間、料金などを比較できる。ecoとは、燃料消費量と有料道路の料金を総合的に節約できるルートで、道路種別や信号の数、右左折の数、渋滞、距離、車種を考慮して、環境や燃費に優しいルートを提示する。
デフォルトでルート探索を行うと幹線道路を多く通るルートを引きがちだが、ストラーダチューンの中のルートチューンでルート探索のアルゴリズムを微調整すれば、希望に近いルートを引くことも可能。調整できるのは有料道路優先、道幅優先、渋滞回避、ルート学習、VICS考慮の5項目。有料道路優先と道幅優先、渋滞回避に関しては、それぞれの度合いを5段階に調整でき、道幅優先を「狭」に設定しておくと、幹線道路中心ではなく狭い道でも入りこんでいくようになる。ルート学習はしない/する/アクティブの3つから選択可能。VICS考慮もしない/する/ ETC2.0広域の3つから選べる。ほかにスマートIC考慮、季節規制考慮、渋滞DB考慮のオンオフが可能だ。VICSワイドに対応しているため、ビーコンを接続しなくても渋滞回避ルートを探索可能。渋滞を回避して自動的にリルートした時は新旧のルートを比較表示し、それを見比べながらどちらを通るかを選択できるのもありがたい。
基本性能その3<案内の特徴>
画面が大きいと見やすいし、コントラストがはっきりした配色のおかげもあって、交差点拡大図等、画面での案内はとてもわかりやすい。ルートの色は、一般道が黄色、高速道路が水色なのだが、交差点拡大図のルート色にもそれが反映されている。交差点拡大図は画面の半分を使って表示するのだが、もともとが大画面だから目立つ上に道路の黒と進行方向を示す黄色の矢印のコントラストがはっきりしていて、とてもわかりやすい。
高速出口やジャンクション等では、拡大図が占める面積はさらに広がり、画面の3分の2ほどを使う。看板表示も実際のものと同じように表示されるので間違えることはない。一般道での方面看板表示も画面に現れるが、看板の中の矢印も進む方向だけ黄色く表示される。その上にはレーン案内もある。9型ワイド画面ともなると、これがはっきりわかる。大画面ナビは一度見てしまうと手放せなくなるという気持ちがよくわかる。
試乗車は運転席の前にオプションのFID(フロント・インフォ・ディスプレイ)を装着。ここにも道案内の情報がきめ細かく出る。これだけでも十分で、画面に目を向けなくていいほどわかりやすい。とくに制限速度は実際の運転中に看板を見落としがちだが、FIDにも表示するため、制限速度を知らない状態で走るということはほぼないだろう。案内のわかりやすさではトップクラスのナビだ。
ブルーレイが見られるカーナビはパナソニックだけ
パナソニックのカーナビの魅力といえば、ブルーレイディスク(BD)の再生ができることだ。市販カーナビでは、このCN-F1Dと7型ワイドモニターを採用したCN-RX03とRX02の計3モデルだけがBD対応。車内でBDを楽しみたいと思ったらこの3機種から選ぶしかない。せっかくなら大画面で楽しみたい、というならこのCN-F1Dに行き着く。
本体は2DINサイズで、9型ワイド画面だけが手前に飛び出したフローティング構造のディスプレイだから、走行中の振動で画面が揺れるのでは? と心配する人もいるだろう。その心配は不要。もちろん大きな段差を乗り越える時などは多少画面が揺れるが、走行中の揺れはまったく気にならない。かつての7型ワイドインダッシュモニターは、前後に小刻みに揺れる感じが気になることもあったが、このCN-F1Dはがっしり固定されていて、ぶれることはほとんどない。そのため、モニターを倒したり起こしたりするのは手動になり、多少力を要するのだが、走行中に画面がぶれるよりはいいと思う。
なぜディスプレイの動作を電動にしなかったんだろうと思う人もいるだろう。それはコストの問題。パナソニックとしては手ごろな価格でBDを見られる大画面ナビを提供したかったそうで、電動にするとどうがんばっても20万円を超えてしまうとのこと。それよりは手動でも手ごろな価格で提供することを選択したわけだ。
もうひとつ、今のモニターは無段階で動くため、画面を上げ下げした時に、同じ位置に戻すのが難しい。だからノッチをつけて同じ位置に止められるようにしてほしかったという人もいるだろう。僕も初めてCN-F1Dを見た時はそう感じた。その疑問を機構開発担当者にぶつけてみると、耐久性の問題との回答。ノッチをつけると、何度もモニターを上げ下げしているうちに破損したりと、耐久性に難があり、今の方式に落ち着いたのだという。
画面は前方に数cmの微調整が可能。これは取り付け時に位置を決めて固定する。また上下にも数cmの微調整が可能。こちらはモニターの裏にあるレバーでロックを解除して、上げ下げできるので、インストール後でも手軽に調整が可能だ。
オーディオ能力も従来のBD対応カーナビより向上している。その肝になるのは、192kHz/24bit処理のDSPの搭載だ。従来はコアクロック48kHzだったが、それを192kHzまで上げたことで、これまではダウンコンバートしていたBD音楽ディスクもダウンコンバートせずに再生できるようになったのだ。またサンプリングレートコンバーターにより、CDやDVD、地デジのデジタル音源も192kHz/24bitにアップコンバートして処理する。そのおかげでCDの音も、より滑らかに高音質再生できるのだ。
音の匠(たくみ)モードも健在。これはレコーディングエンジニアのプロ集団、ミキサーズラボが音の監修を手がけたモードで、スタジオマスターのサウンドに近い音にチューニングしたモード。ほかにメリハリを強調した極モードや、音楽を聴きながら会話を楽しめる和モードも搭載している。
音質調整機能も、簡易型ではあるがタイムアライメントやイコライザーなどひと通り搭載。BDを大画面で楽しめるだけではなく、心地よい音で楽しむことができる。
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Android Auto対応でローカル地図との使い分けも
Android Autoに市販カーナビで初めて対応したというのも、CN-F1Dのトピックである。Android Autoはスマホのアプリによって検索、ナビ、音楽再生、電話、天気予報などの情報表示といった機能をまとめて表示&コントロールできるというもの。簡単に言うとAndroid Auto利用時は、CN-F1Dがスマートフォンの表示&操作部になると思えばいい。もちろん、クルマで使いやすいようにユーザーインターフェイスは工夫されているが。
このメリットのひとつは地図更新が早いこと。実は、初めてCN-F1Dのデモカーに試乗したときこんなことがあった。デモカーを返却するため第三京浜の港北ICで降りたら、出口が変わっていたのだ。運悪くナビは試作段階のものでまだ最新の地図を搭載しておらず、新しく変わったICの地図は載っていなかったのだが、すかさずAndroid Autoに切り替えてみたところ、新しいICの地図がしっかり載っていた。地図更新の素早さは、クラウド利用のナビに軍配が上がる。
ただし、自車位置精度に関しては、カーナビ内蔵のローカルなナビにかなわない。今回の試乗では横浜みなとみらいから乗って首都高~第三京浜に入り、保土ヶ谷から横浜新道に入って湘南へ向かうというルートを走ってみたが、Android AutoのGoogleマップで走っていたら保土ヶ谷あたりでどの道を走っているのか一瞬見失うことがあった。やはり、道案内の確かさではローカルナビが有利である。このあたりはうまく使い分けたい。
ドラレコやFIDとの連動で安心機能充実
ドライブレコーダーやFID(フロント・インフォ・ディスプレイ)、リアモニターなど、さまざまなオプションを用意し、連動しているのもCN-F1Dの楽しさだ。ドラレコを加えておけば、アクシデントを記録できる以外にドライブの楽しい思い出も記録できるし、その映像をF1Dの画面で確認することも可能。安心をサポートする上に楽しみもある。
FIDは少ない視線移動で道案内のさまざまな情報を提供してくれる。F1Dの9型ワイド大画面は一般的なカーナビより画面が手前にあるため、どうしても視線の移動が大きくなる。F1DにこそFIDは必要なアイテムかもしれない。今回の試乗でも、FIDがあったからこそ、ほとんど画面を見ずにルートどおりにドライブできたし、ルート以外にもさまざまな情報が表示され、とても役に立った。
それ以外にも安心をサポートする機能が充実。ありがたいのは制限速度を表示する機能。制限速度が切り替わるとすかさず、画面に大きく制限速度が表示され注意を促す。その後は画面の左上に小さく制限速度が表示されたままなので、道路の看板をうっかり見落としても大丈夫という安心感がある。
(解説=石田 功/写真=小河原 認)
