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第26回:ディーゼルに快音はあるのか!?

2017.01.24 カーマニア人間国宝への道 清水 草一

ディーゼルユニットの個性とは?

ニッポンが誇る革新的クリーンディーゼル、マツダ・スカイアクティブD。しかし私は薄情にもその搭載モデルの購入を見送り、「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」(7年落ち中古で208万円)なるレア車を買ってしまった。

ところで、ガソリンエンジンの場合は、言うまでもなくユニットによってさまざまな個性があるわけだが、ディーゼルエンジンはどうなのだろうか?

正直なところ、ディーゼルユニットの個性はかなり弱い。一般的には「ディーゼル」でひとくくりにしてしまっていいくらいに!

例えばサウンド。ディーゼルエンジンのサウンドといえば、真っ先に思い浮かぶのは特有のカラカラ音だ。それをどれくらい抑えているかがサウンド面での最大の特徴といえる。つまりネガつぶしで、ポジティブな面は乏しい。

マツダのスカイアクティブDは、登場当時、世界一の静粛性を誇っていた。正確にいえば4気筒ディーゼルとしては断然世界一だった、という感じか? これに匹敵していたのは、私の知る限りメルセデスのV6ディーゼルだけ。しかもメルセデスの場合、どちらかというとふんだんな遮音材で抑え込んでいる感じで、素の騒音レベルは、圧縮比わずか14.0のスカイアクティブDが世界をリードしていた(たぶん)。逆に一番うるさいのは「パジェロ」搭載の三菱製3.2リッターターボディーゼルでしたかね? あれは昔ながらのカリカリ音がかなり味わえました。

ただ、静粛性に関しては各社マツダを猛追しており、もはやあまり大きな差はない。各社徐々に圧縮比を落としているし、各社かなり静かになっている。つまり、この点に関しても個性は薄まっている。

筆者の愛車「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」。(写真=池之平昌信)
筆者の愛車「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」。(写真=池之平昌信)拡大
「マツダCX-5」のスカイアクティブD 2.2エンジンと筆者。(写真=池之平昌信)
「マツダCX-5」のスカイアクティブD 2.2エンジンと筆者。(写真=池之平昌信)拡大
3.5リッターV6ディーゼルエンジンを搭載した、先代「メルセデス・ベンツE350ブルーテック」。
3.5リッターV6ディーゼルエンジンを搭載した、先代「メルセデス・ベンツE350ブルーテック」。拡大
「三菱パジェロ」
「三菱パジェロ」拡大
マセラティ ギブリ の中古車

ディーゼルでもいい音は出せる!

しかし、ただ静かなだけではカーマニアとして物足りない面があるのも事実。フェラーリみたいな快音はムリでも、なにかこう、とっても気持ちいいディーゼルサウンドというのはないのか?

実は、ある。

今を去ること18年前。私はスペインでの「アルファ166」の国際試乗会に参加した。国際試乗会なんて生涯3回くらいっきゃ行ったことないんですが、なぜかその時は呼んでもらった。

その場に、「166ディーゼル」(日本未導入)の試乗車があった。なんと直列5気筒ターボディーゼル。アルファ・ロメオの「2.4JTD」というユニットだ。

最高出力136馬力。現在のディーゼルに比べるとかなり見劣りするが、なにせ当時ディーゼル経験値ほとんどゼロだった私は、5段MTを駆使して味わうその太いトルクに大いに魅了された。

さらに衝撃的だったのはそのサウンドだ。

それは、いわゆるアルファ・サウンドだったのだ! 「タラララララララララララ~~~~」と、歌うようにビートを奏でていたのだ! まさかディーゼルもカンツォーネを歌うとは!

あれから17年間、アレを上回る快音を発するディーゼルユニットに出会うことはなかった。ただ、ディーゼルでもいい音は出せる。その可能性があるという事実は、私の脳内に刻まれた。

弊社スタッフである安ド二等兵がつい先日まで乗っていた「アルファ166 3.2 V6」(左ハンドル6MTのレア車)。大柄な166をMTで走らせるのは実にステキであった。
弊社スタッフである安ド二等兵がつい先日まで乗っていた「アルファ166 3.2 V6」(左ハンドル6MTのレア車)。大柄な166をMTで走らせるのは実にステキであった。拡大
上の写真では暗くてその良さがわかりづらいので、再び安ド二等兵の「アルファ166」。
上の写真では暗くてその良さがわかりづらいので、再び安ド二等兵の「アルファ166」。拡大
「アルファ166」のインテリア。
「アルファ166」のインテリア。拡大

イタリアンな快音

あれから17年後の昨年。私はついに、あのアルファ166 2.4JTDに匹敵する快音を発するディーゼルエンジンに出会うことができた。「マセラティ・ギブリ ディーゼル」である。

3リッターV6直噴ターボで、パワー&トルクは、275ps/4000rpm、600Nm/2000rpmと圧倒的。しかもそのサウンドは、「ドリャリャリャリャリャリャリャ~~~~」と、どっから聴いてもイタリアンな快音だったのだ! さすがに音程は低いが、躍るようなビートはまさにフェラーリ/アルファ・ロメオ系のソレ! マセラティですけどね。

現行マセラティのガソリンユニットのサウンドは、ターボ化によって大いに損なわれており、もはや昔日の面影はないが、このディーゼルは超気持ちイイ音を発する。雰囲気としては、フェラーリ製V8搭載の先代「クアトロポルテ」の超絶サウンドを2オクターブくらい低くしただけ。正真正銘掛け値なしに、現行マセラティの中で一番イイ音である。

マセラティのサウンド調律師たちは、「どんなユニットであっても快音を作り出せる」と豪語しているらしい。おみそれしました……と平伏すると同時に、もうちょっとガソリンターボの音もなんとかしてもらいたい。

しかしマセラティ・ギブリ ディーゼルのお値段は933万円(車両本体)。んなもん買えるワケない! 同じイタリア製でもフィアット系の4気筒1.6リッターターボディーゼルを積む我がデルタは、騒音レベルはかなり低いですが、特に快音はいたしません。極めてフツーです。

少なくとも4気筒ディーゼルに関しては、突出してイイ音がするユニットを私は知らない。

(文=清水草一/写真=清水草一/編集=大沢 遼)
 

「マセラティ・ギブリ ディーゼル」には、同業者の塩見 智氏とともに、近所のディーラーにて試乗。その快音に、17年ぶりの感動を覚えた。
「マセラティ・ギブリ ディーゼル」には、同業者の塩見 智氏とともに、近所のディーラーにて試乗。その快音に、17年ぶりの感動を覚えた。拡大
「マセラティ・ギブリ ディーゼル」
「マセラティ・ギブリ ディーゼル」拡大
「マセラティ・ギブリ ディーゼル」のエンジンルーム。
「マセラティ・ギブリ ディーゼル」のエンジンルーム。拡大
「マセラティ・ギブリ ディーゼル」のインテリア。
「マセラティ・ギブリ ディーゼル」のインテリア。拡大
快音を奏でる「マセラティ・ギブリ ディーゼル」のマフラー。
快音を奏でる「マセラティ・ギブリ ディーゼル」のマフラー。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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