第1回:流行のメーカーカスタムや巨大な3輪バイクにも試乗!
輸入バイク チョイ乗りリポート(前編)
2017.05.02
JAIA輸入二輪車試乗会2017
年に一度のお約束。2015年から始まったJAIA輸入二輪車試乗会は、第2回の昨年から2ブランド増えた10ブランドの最新モデルがそろいました。われわれwebCGチームは皆勤賞です。思い起こせば初年度は「春なのに」と叫ぶように歌わざるを得なかった冷たい雨が降り、2年目もまた午前中は小雨の中。やっぱり3年ですね。桃栗も石の上にもですよ。ようやくの快晴。こうでなくちゃオートバイは楽しめません。
そんなわけで今年も、webCG編集部員の自称“縄文体形”ホッタ青年と、“偏愛トラキチ”の関 顕也氏、そして“グッチマニア”の三浦孝明カメラマンとともに、極私的にお届けします。
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普遍的カフェレーサーのブーム再燃に必要なのは……
BMW R nineTレーサー×ハーレーダビッドソン・ロードスター カフェカスタム・コアパッケージ(その1)
「この2台は外してもいいですよ」。速やかな現場判断を旨とするホッタ青年がそう言ったのは、乗れるだけ乗った揚げ句、試乗会が終わったらスタッフ全員くたくたになった昨年までの轍(てつ)を踏みたくなかったからだ。学習は成長の種である。けれど、おなか回りを含め伸び盛りのホッタ青年の意向を遮るだけの理由があった。この2台が醸し出すのは、オートバイの普遍的魅力の体現。っていうか、単純にカッコよかったから。
ざっくり言えばカフェレーサー。60年代のロンドンの片隅に集まった若者たちが、「お前のヤツより速い」とか「オレのほうがカッコいい」と公道レーサー気取りでカスタマイズを競ったところから始まったやんちゃな流行は、やがて明確なスタイルを定め、世界中に広がり、繰り返しを常とするブームとなった。ビートルズみたいね。で、今回のJAIAではBMWとハーレーによって、過去何度目かわからないカフェレーサーの波が起きる事象を目の当たりにしたわけです。これは見逃せないでしょ。
まずはBMWの「R nineTレーサー」。伝統的なグラフィックをまとった白いボディーは王子専用の白馬のよう。同時期に発売された「R nineTピュア」の“カスタム版”で、低いハンドル&後退したステップ等々、カフェレーサーの文法を忠実に守りながら、BMWらしい生真面目なフィーリングは失っていない点に感銘を受けます。現実的に扱いやすいし、率直にキレイだなあと思うのです。
普遍的カフェレーサーのブーム再燃に必要なのは……
BMW R nineTレーサー×ハーレーダビッドソン・ロードスター カフェカスタム・コアパッケージ(その2)
方やハーレーダビッドソンの「ロードスター カフェカスタム」も、軽快さが人気の「スポーツスター」をカフェレーサー風に仕上げた「XL1200CXロードスター」をベースに、よりカフェ純度の高いパーツを組み込んだ200台限定モデルなのです。要するにカスタムのメガ盛り。
こっちの印象は、誤解を承知で言えば荒いんですね。バックステップなどはあまりに下げ過ぎちゃって、慣れるまでは足の置き場を探すほどにパーツの後付け感がひしひし伝わってくるのだけど、何か懐かしいっす。自分でもこういうことやったよなあという郷愁が漂ってきて、全然悪くない感じ。
かようにカフェレーサーとひとくくりにしても、メーカーが異なれば仕上げ方が違ってくるのがこのジャンルのおもしろいところ。そして共通しているのは、革ジャン&ジーパン&エンジニアブーツという、60年代ロッカーズのファッションそのままで乗りたくなるところ。普遍的ですね、ブームってのは。
長くなるのを覚悟で追記すると、BMWのR nineTレーサーは、アメリカ西海岸に拠点を置く二輪のカスタム&ビルドメーカーのローランドサンズデザインが、2013年にBMWとのコラボで発表した「Concept 90」が元ネタで、このローランドサンズはハーレーのカスタマイズパーツでも有名なのです。なかなか興味深い関係ですよね。
今気付いたんだけど、ホッタ青年がこの2台を外そうとしたのは、もしや体形のせい? であれば、カフェレーサーに乗るためのボディーラインも普遍性が必要ってことかもしれない。それはそれで厳しいカスタマイズかもしれないな。頑張れ、青年。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明)
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変わらぬ美貌を保ち続ける怪物
ドゥカティ・モンスター1200S……201万5000円
「モンスター」が登場したのって、今から20年以上も前の1993年なんですよね。多少記憶があやふやだけど、あの頃はネイキッドと呼ばれるジャンルがもてはやされていたんじゃないでしょうか。「裸の」という意味をもつネイキッドは、もともとエンジンがむき出しだったオートバイのジャンル設定としては奇妙なネーミングですよね。それを定着させたのがモンスターだったという考察は、たぶん間違っていないと思う。何しろそれまでのドゥカティは、レースに参加可能な市販車製造を使命にしていたようなところがあり、そのレーサー然としたカウリングを剝がした形、つまりエンジン丸見えの素っ裸にしたのがモンスターだったわけだから。
ただ、その名称のわりに怪物感は薄かったというのが当時の思い出です。日本の免許制度に合わせた400cc版も用意されたりして、どことなく手なずけやすい印象を受けた。もちろんドゥカティ特有のフレームワークやL型ツインエンジンは、美の国イタリアらしい構造美に満ちていたわけだけど。
さて今回試乗した「モンスター1200S」は、フレームやエンジンなど大部分でリファインが実施されたそうな。それでもなおかつ変わっていないというか、このモデルらしさを強く感じたのは、新機軸投入に際し原点回帰を意識したからだという。ラインナップの拡充やスペックの拡張などによって肥大したモンスターシリーズを、コンパクトでスリムで素直だったオリジナルに戻そうとしたらしい。
とはいえ、電子デバイス投入に手を抜かないのもドゥカティの伝統。このモンスター1200SにはDQS(ドゥカティ・クイック・シフト)が標準装備となった。クラッチレバーの操作なしでシフトアップ&ダウンが可能になるというスグレモノ。ですが、正直なところ困惑しました。シフトアップにしろダウンにしろ、その瞬間にくいっとスロットルを戻すのが一般的な癖だと思いますが、それをするとギアチェンジ自体がぎくしゃくしてしまうのです。1200Sオーナーになる方なら慣れが解消する問題なのでしょう。でも、ずっとキレイで、その美しさに磨きをかけたモンスターに「下手ね」と言われたような気になって、少し落ち込んだ。
そこでついに理解しました。変わらぬ美貌を保ち続けていることがこのモンスターの怪物たるゆえんなのだと。怖いオンナ、いやオートバイですな。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明)
地上最大級のサプライズを与えるために
ハーレーダビッドソン・トライク フリーウィーラー……357万2000円
とにかくデカい。それが第一印象。ハーレー最大級の1745cc、ミルウォーキー・エイト107空冷45度Vツインを搭載するトライク。その名も「FREEWHEELER(フリーウィーラー)」。これで自由の車輪と呼ぶのだから、やっぱり彼我的差異はいまだに大きいままなのだろうと思わざるを得ません。
日本では普通自動車マニュアル免許があれば乗れちゃうトライク。ハーレーは2014年モデルから国内導入を開始。このフリーウィーラーは2017年モデルのニューカマーで、先に発売されていた「トライグライド ウルトラ」の巨大なカウリングや豪華装備をすべて外したスタイルとなっております。
でもトライク。豪勢な三輪車。いろいろ戸惑います。二輪感覚は捨てなければなりません。まず乗り降りする際、普通はシート上方に足を投げ出してまたがるけれど、それだとリアフェンダーの端にかかと辺りが当たってしまいます。さらに、停車時にはどちらか一方の足を地面に着けるのが二輪の常ですが、それ不要。倒れない三輪だから。ふむ。そればかりか、足を残しておくと地面に引っかけたまま後方に引きずられるので危険。フットボードに足を載せまたままがトライクの正しい乗車姿勢なり。ふむふむ。
その一方で、踏み込み式のサイドブレーキやモーター駆動のリバースシステムといったトライクならではの装備もあり、感心の度合いは高まっていきます。
二輪との最大の違いは操作性ですね。車体が倒れないということはハンドル(前輪)だけで曲がるわけで、タイトなアールではそのステアリングの重さに慣れが必要です。左右のハンドルを押し引きする感じ。試乗コースでパイロンをすり抜ける場面では、巨大アナコンダと格闘しているような気分になりました。
フリーウィーラーにまたがりながら、ふと自分がオートバイに乗り始めたきっかけを思い出しました。うんと若かったあの頃、大好きだった女の子がバイトしていた喫茶店(カフェにあらず)にオートバイで乗りつけたら、きっとカッコいいと思われるだろう。いや、元来の乗り物好きなんですよ。痛いほどの勘違いだけが二輪人生の始まりではないのだけど、オートバイにはそういうサプライズ性があるんじゃないかと。であれば今となってトライクほど驚きを与えられるものは他にないかなと……。どうですか? ってたずねられても困るでしょうが。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明)
さすがのファクトリーカスタム
トライアンフ・ボンネビル ボバー……151万5000円
まずは写真を見てほしい。今春販売がスタートした、「ボンネビル ボバー」という名のこのバイク。形がヘンじゃないですか? 前半分に比べて、リアセクションはスッカスカ。なんだか「整備の最中」みたい……。
それが、れっきとしたカスタムの流儀というからまたビックリ。戦前のドラッグレースやダートトラックレースのマシンを模したもので、主に軽量化を意図してパーツを省いたり切り詰めたりしているところが粋なのだそうだ。
つまりは“なんちゃって商品”なのかしら……なんてイジワル目線でチェックしてみると、これがなかなか侮れない。昨年発売された、トラディショナルなデザインの「ボンネビルT120」をちょっといじっただけかと思いきや、モノサスを使ったフレームは完全新設計だし、フェンダーやハンドルバー、マフラーなどの外装パーツが違うのはもちろん、スタイリングを優先してバッテリーやブレーキフルードのリザーバータンクも搭載位置を変えている。サドル型のシングルシートは、高さを調節できる優れものだ。
走りも全然違った。1200ccの並列ツインエンジンは、ボンネビルのものをベースに吸排気系やロムをチューン。排気量の割にマイルドなボンネビルT120とは別物の、ドラッグレーサーらしい性格が与えられている。そのパンチ力たるや、全開加速では恐怖心がわいてくるほど。ドスの利いた排気音も、非日常感を一段と盛り上げる。
これって意外にアリじゃない? と思い直したらとんでもない。いま市場では、トライアンフ ボバーは大人気らしい。当初は年間30~40台程度の国内販売を見込んでいたところが、ファッション性を重視するライダーを中心に引く手あまたで、2017年は10倍の300台を販売する予定という。
確かに、よくできてるしなぁ……。でも、メーカーがここまで作りこむと、早く飽きられやしないだろうか? などと最後に突っ込んでみたら、トライアンフはボバー用に100種を超えるカスタムパーツを用意しているとのこと。さすがはファクトリーカスタム、抜かりなしである。
(文=webCG 関/写真=三浦孝明)

田村 十七男

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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