Xデーは2019年にやってくる!
次世代SKYACTIVがかなえるマツダの近未来の姿とは?
2017.10.16
デイリーコラム
新世代モデルの導入は2019年に始まる
2017年10月上旬、山口県の美祢試験場において、マツダの次世代ガソリンエンジンである「SKYACTIV-X」のメディア向け試乗会が開催された。そこに用意されていた開発車両は、SKYACTIV-Xを載せていただけでなく、プラットフォームもシャシーも次世代の「スカイアクティブ・ビークルアーキテクチャー」だった。
世界初のガソリンエンジンでの圧縮着火を実用化したSKYACTIV-Xは、中低速ではディーゼルのような力強いトルクを感じさせ、高回転ではガソリンらしい伸びを味わえた。これで下のクラスと同等の優れた燃費性能を備えていれば、相当に商品力は高いといえる。しかも、オルタネーターをモーターアシストに使うマイルドハイブリッドの用意もあるようだ。そうなれば、さらなる高い燃費性能が期待できるだろう。
そのパワートレインを支えるプラットフォーム&シャシーは、これまでの人馬一体のコンセプトをさらに進化させたものだった。しなやかな動きが身上で、ドライバーとの一体感はこれまでになく高い。このパワートレインとシャシーの出来の良さであれば、マツダの次世代商品群が高い評価を受けることは間違いないだろう。
ちなみに、すでにマツダは次世代技術コミュニケーション&導入プランを発表している。それを見ると、次世代ガソリンエンジンであるSKYACTIV-Xも、次世代プラットフォームのスカイアクティブ・ビークルアーキテクチャーも、そして次世代の「魂動デザイン2」も、2019年に導入されることになっている。さらに、2019年にはマイルドハイブリッドも新しいマツダコネクトも導入されるという。ちなみに、バッテリーEV(レンジエクステンダー付きと無し)の導入も2019年だ。つまりは2019年に、すべてが次世代技術に移行した完全な新世代モデルが登場する。2011年にスカイアクティブ・テクノロジーを満載した「CX-5」が登場した時と同じインパクトがこの年に再現されるのだ。
さらに、この10月下旬に開催される東京モーターショーには、次世代のデザインを示唆するコンセプトモデルと次世代商品コンセプトが出品されるという。ここにきて、矢継ぎ早に発表されはじめたマツダの未来を示唆するテクノロジーとデザイン、そしてそれらの導入計画。現時点で得られた事実から、次世代のモデルの姿を考えてみたいと思う。
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あのコンセプトカーは次期型アクセラ?
そもそも、次世代モデルとして最初に登場するのは何か?
まずは過去を振り返ってみたい。現在のマツダ車は、スカイアクティブ・テクノロジーを搭載した第6世代と呼ばれるもの。これは、2011年にローンチされたCX-5をはじめ、2012年の「アテンザ」、2013年の「アクセラ」、2014年の「デミオ」、2015年の「CX-3」が該当する。ただし、CX-5は2016年に2代目にフルモデルチェンジ(発売は2017年2月)。またラージSUV「CX-8」の市場投入も間近に控えている。
これまでマツダは、CX-5→アテンザ→アクセラ→デミオ→CX-3の順番で新型車を投入してきた。「第7世代の商品群」とわかりやすくアピールするなら、2016年デビューの2代目CX-5のときに次世代技術を完成させたかっただろう。しかし、残念ながらそれはかなわなかった。第7世代のトップバッターはCX-5/CX-8以降のモデルとなる。
順番を考えるとアテンザとなろうが、既述の通りフルに次世代技術を搭載した車両が登場するのは2019年だ。これまでのマツダの新型投入スケジュールを鑑みると、2018年に何も新型車が登場しないとは考えにくい。となると、次期型アテンザの登場は2018年。これもまた完全な新世代モデルではないだろう。この点については、美祢試験場での試乗会の開発車がアクセラベースのハッチバックだったこと、東京モーターショーに出品される次世代モデルのコンセプトもコンパクトハッチバックだという点からもうかがえる。
やはり、フルに次世代技術を得て2019年に登場するのは次期型アクセラで、ここから第7世代の商品群がスタートするのではないだろうか。ただし、東京モーターショーに出品される次世代商品コンセプトが「コンパクトハッチバック」というのがひっかかる。「順番を変えてデミオから」というパターンも無きにしもあらずだが、製品スケジュール的にも、可能性が最も高いのはやはりアクセラだろう。
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エンジンはもちろんシャシーにも注目してほしい
では、具体的な次世代モデルの内容を考えてみたい。まず、マツダはSKYACTIV-Xを導入しても、従来のSKYACTIV-GもSKYACTIV-Dも継続して進化させていくという。パワートレインが3種になるわけだ。SKYACTIV-Xは確かに高性能だが、補機類がたっぷりあるため、どうしても高額になる。マイルドハイブリッドを追加すれば価格はさらに高くなるだろう。これではエントリーモデルにはなり得ない。むしろ、そのキャラクターは「価格は高いけれど性能もすごい」というトップグレードに向いている。燃費性能だけでなく、運動性能にも優れるというなら多少の価格高は許されるはずだ。
例えば、アクセラではなくさらにコンパクトなデミオにSKYACTIV-Xを搭載するとなれば、その付加価値はさらに高まる。エコというより「2クラス上のエンジンを搭載したホットハッチ」になるはずだ。試乗した2リッター版SKYACTIV-Xの最高出力/最大トルクの目標値は190ps/230Nm。デミオクラスならば「フォルクスワーゲン・ポロGTI」に匹敵する走りを見せることだろう。
ただし、出力はドイツブランドのプレミアムと同じようでも、マツダの次世代モデルの走り味は相当に異なるはずだ。剛性感のドイツ勢に対して、マツダの走りはもっとしなやかなものになるだろう。パワートレインのスペックよりも、むしろ、新しいプラットフォーム&シャシーによるしなやかな走り味の方が、マツダの名を高めるのではないだろうか。試乗会での走り味は、それほどに良かったのだ。この魅力は、アクセラであろうとデミオであろうとも同じはず。まったく新しい燃焼方式をモノにしたSKYACTIV-Xは確かに素晴らしいが、ドライバーによってはエンジンよりも新シャシーの方が魅力的に見えるのではないか。いずれにせよ「マツダ=走りが良い」というイメージは、第7世代になれば、さらに強まることは間違いない。
(文=鈴木ケンイチ/編集=堀田剛資)
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鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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