日本人選手が世界王者に!
魅惑のスカイスポーツ・ワールド
2017.10.23
デイリーコラム
室屋選手、レッドブル・エアレースを制覇!
2017年10月15日、アメリカのインディアナポリスで開催されたレッドブル・エアレース最終戦で、日本人パイロットである室屋義秀選手が優勝。同時に2017年シリーズ戦のチャンピオンとなった。インディ500を制した佐藤琢磨選手が応援する目の前での優勝。なんと感動的で歴史的な日であっただろうか。ひとりのファンとして、最大限の祝いの言葉を贈りたいと思う。
思えば、室屋選手を初めて知ったのは、昨年(2016年)のレッドブル・エアレースの日本大会であった。エアレースはまったくの素人だった筆者は、「こんな大きなイベントに参加する、日本人パイロットが存在するのか」と驚いた。しかも、そんなエアレース初心者の目の前で、室屋選手は初優勝を果たす。いい年をしたオジサンとして、めったにないほど興奮させていただいた。その感動の主が、なんと今年はシリーズ4勝でチャンピオン! 昨年の初優勝の場に居合わせることができたのが光栄なことであったと、あらためて感じ入るばかりだ。
ところで、昨年驚いたのは室屋選手についてだけでない。エアレースの存在そのものにも驚いた。パイロンで作られたコースを1人でいかに速く飛ぶかというレッドブル・エアレースは、クルマの世界で言えばジムカーナだ。そして、調べてみると飛行機を使った競技(スカイスポーツ)は、それ以外にもいろいろあった。
例えば、室屋選手がもともとやっていたエアロバティック。日本語で言えば曲芸飛行だ。こう聞くと、航空関連のイベントで披露されるショーばかりを思い浮かべてしまうが、実のところ競技もある。エアロバティックという競技は、定められた飛び方(技)をいかに完璧にこなすかというもの。アイススケートのフィギュアや体操競技に近い。日本にも日本曲芸飛行協会があって、競技会が開催されている。もちろん、日本だけでなく世界各地で開催されており、欧州戦や世界戦も行われている。
やる気があれば、アナタもパイロットになれる
また、レッドブル・エアレースのようにタイムを競うスカイスポーツもある。こちらで有名なのは、アメリカで催されるリノ・エアレース(正式名称:National Championship Air Races)だ。1960年代から開催される歴史あるスカイスポーツで、パイロンで作られたオーバルコースを、複数機が一緒に飛んで速さを競う。オーバルレースという部分が、いかにもアメリカらしい。
それにしても、スカイスポーツは普通の日本人にとってはあまりに遠い存在だ。「パイロットになるには航空会社か自衛隊に入るしかない。プライベートで飛行機を飛ばすのは、よっぽどの大金持ち!」というイメージが常識的だろう。
では、室屋選手はどうか? 実は、彼はごく普通のサラリーマン家庭に育った。しかし、パイロットになりたいという夢をかなえるため、コツコツとアルバイトをしながら少しずつステップアップしてきた。そんな室屋選手が初めてスカイスポーツにトライしたのは大学での部活動。グライダーである。グライダーは、他の飛行機よりもうんと安く飛ぶことができるという。ある意味、日本で最もメジャーなスカイスポーツはグライダーなのではないだろうか。こちらもエアロバティックと同様に日本滑空協会が存在している。グライダーの仕組みからクラブのことまで紹介しているので、気になる方はぜひともチェックを。
調べてみれば、スカイスポーツはいろいろとあって、やる気さえあれば誰でも挑戦は可能なのだ。もちろん簡単とはいえないけれど……。しかし、「室屋選手の飛行を見て、僕も飛びました!」という後輩が生まれれば、きっと室屋選手も喜ぶことだろう。
(文=鈴木ケンイチ/編集=堀田剛資)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
-
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性NEW 2025.9.5 あのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。
-
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代 2025.9.4 24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。
-
マツダの将来を担う次世代バイオディーゼル燃料 需給拡大に向けた最新の取り組みを知る 2025.9.3 ディーゼルエンジンを主力とするマツダにとって、カーボンニュートラルを実現した次世代バイオディーゼル燃料は生命線ともいえる存在だ。関係各社を巻き込んで需給拡大を図るマツダの取り組みと、次世代燃料の最新事情を紹介する。
-
意外とクルマは苦手かも!? 自動車メディアの領域で、今のAIにできること、できないこと 2025.9.1 AIは今や、文章のみならず画像や動画もすぐに生成できるレベルへと発展している。では、それらを扱うメディア、なかでもわれわれ自動車メディアはどう活用できるのか? このテクノロジーの現在地について考える。
-
世界の議論を日本が主導! 進むハンズオフ運転支援機能の普及と国際基準制定の裏側 2025.8.29 世界的に開発と普及が進むハンズオフ(手放し運転)運転支援機能の、国際基準が改定された。先進運転支援や自動運転の技術の基準は、どのように決められ、またそこで日本はどんな役割を果たしているのか? 新技術の普及に必須の“ルールづくり”を解説する。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。